分類

 作成中です。とりあえず,ヌマエビ属(ヌマエビ南部群)とヒメヌマエビ属(ミゾレ,トゲナシ)の比較など。

ヌマエビ属とヒメヌマエビ属の区別点

 ヌマエビ属(ヌマエビ・ヌカエビ)とヒメヌマエビ属(ヤマト・ミゾレ・トゲナシ・ヒメなどを含む)は,次の2点を見ることにより区別することができます。ヌマエビ属では歩脚に目立った外肢があり,また目のすぐ上(角額の付け根の両側)に棘があります。それに対し,ヒメヌマエビ属にはどちらも存在しません。

歩脚の外肢

 下の標本写真はどちらもヌマエビ小卵型(南部群)のものです。左は都内の熱帯魚店で購入した採集地不明の個体,右は高知県物部川で採集した個体です。どちらも歩脚の付け根から細い外肢が出ているのがわかります*3。ミゾレヌマエビを含むヒメヌマエビ属では,歩脚にこのような外肢はありません。

*3) 歩いたり物をつかんだりする時に使うのが歩脚です(左右5本ずつある)。はさみになっているのが第一歩脚と第二歩脚で,さらにその前にあるのは顎足というそうです。ヒメヌマエビ属でも顎足には外肢があるそうですが,短いのか見た感じではよくわかりませんでした。

 ミゾレヌマエビの標本はありませんが,ご容赦下さい(もし今飼っている個体が死んでしまったら標本になってしまうわけですが...)。

 もしかしたら脱皮した抜け殻を見ればわかるかとも思ったのですが,ヌマエビの脱け殻からは外肢を見つけることができませんでした(殻が薄いせいか,ミゾレヌマエビの殻に比べて壊れやすい)。

眼上棘

 エビの分類においては,体の各部分に生えている角(棘)の数や形というのが重要な区別点になります。ですが,生きて動いているエビでそれを見るのはとても大変です。アルコール等で標本にして見ればよいのでしょうが,それにはエビを殺すか死ぬのを待つしかありません。それをせずに何とか生きたままエビの同定ができないか,長く考えたあげく,脱皮した後の殻の存在に気が付きました。

 写真はヌマエビ南部群(左)とミゾレヌマエビ(右)の角額の付け根部分を拡大したものです。大きく空いた空間が目があった場所です。左のヌマエビでは,鋭くとがった眼上棘があるのがわかります。右のミゾレヌマエビでは棘がありません。このように,脱皮殻でもちゃんと区別が可能です。

 上の写真は小型の顕微鏡(約30倍)を用いていますが,3cmほどの大きめのヌマエビの眼上棘は,肉眼でも見ることができます。真上(または真横)から見るのではなく,ちょっと斜め横から見るとわかりやすいと思います。脱皮殻は乾燥させてから手に持って少しずつ角度を変えながら見ると,特徴を観察しやすいです。下の写真(デジカメでマクロ撮影)も左がヌマエビ南部群で右がミゾレです。こうして比べると,脱皮殻の厚みなども違うようです。

ヒメヌマエビ属内

ミゾレヌマエビに似ている種

 琉球列島以南にはツノナガヌマエビというヌマエビが生息しています。ミゾレヌマエビと比べ,額角が長いのが特徴だそうです。林健一『日本産エビ類の分類と生態』(1989年,海洋と生物63)の検索表によると,ミゾレの額角が「第1触角柄部先端をかろうじて越える。上縁に15〜20歯,下縁には8〜12歯を備える」のに対し,ツノナガの額角は「第1触角柄部先端1/3〜1/2の長さで越える。上縁に14〜23歯がまとまってあり,下縁には10〜20本の基部の大きい歯がる」とのことです。他の区別点としては,「雄の第一腹肢内肢には内突起が」あるかないかですって! どうやって調べろと言うのでしょうか。とてもじゃないけど素人じゃ無理ですよね。

トゲナシヌマエビに似ている種

 琉球列島以南にはサキシマヌマエビ,リュグウヒメエビといった,トゲナシ同様ずんぐりした体型で額角が短い種が生息しています。林健一『日本産エビ類の分類と生態』(1989年,海洋と生物63)によると,角額については,上縁に普通歯はないのがトゲナシ,先端部にのみ少数の歯があるのがサキシマ,上縁の先端には他と離れた歯があるのがリュウグウヒメエビ(ヤマトヌマエビと同じ)となるようです。

 とりあえず,トゲナシヌマエビの角額の写真だけでも。