ミステリー読書遍歴

第一期(〜小学生)

もちろん最初の出会いは,小学校の図書館にあったポプラ社の江戸川乱歩シリーズ。小学校においてあったのは全部読む。ルブランのアルセーヌ・ルパン・シリーズも何冊か読んだはずだが,それほど熱中しなかったので,そちらは全部読み切れずに卒業。

確か夏休みの課題か何かで,ミルン『赤い館の秘密』を読んだはずだが,面白くなかった。ただし巻末に載っていた推理小説年表はお気に入りで,別の紙に書き写したりしてた記憶あり。

両親が推理小説(西村京太郎・山村美沙・など)を読んでいたので,それも高学年ぐらいからは読んでいたはず(高校ぐらいまで続く)。

第二期(中学生)

最初に自分で買ったのは,アガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』とジョルジュ・シムノン『メグレ罠を張る』。メグレはどうでもよかったが,クリスティにははまりだし,中学時代はクリスティでほぼ9割。どちらかというとポアロよりミス・マープルのシリーズの方を好む。でもクリスティで一番のお気に入りは実は『謎のクイン氏』。

確か父が若い頃に買った海外の本格物(ドイル,クイーン,クロフツ,クリスティなど30冊ほど)が家にあったので,そちらもいくつか読みだす。『トレント最後の事件』『僧正殺人事件』などもあった。

第三期(高校生〜大学前期)

中学の終わり頃だろうか。新聞の夕刊に推理小説の名作紹介コーナーがあり,日本の物にも興味を持ち出す。

泡坂妻夫にはまる。亜愛一郎シリーズや『11枚のトランプ』を繰りかえし読む。

『湖底の祭』などのフランス風のサスペンス系もおもしろかなと思っていたところに,小泉喜美子(『弁護側の証人』/ほかエッセイ多数)に出会う。そこからジャプリゾやボアロ=ナルスジャックなどのフランスのサスペンスやアメリカのハードボイルドなど,本格推理以外のものを好んで読むように。何となく,「本格」と呼ばれる物については敬遠しだす。

第四期(大学後期〜大学院)

講談社文芸文庫の発行開始と共に,読書の中心が純文学系(石川淳,坂口安吾,など)にシフト。さらに澁澤竜彦の影響で幻想小説なども読み出したので,ミステリーを読む比率は一気に減少。

それでも第三期の続きとして,マーガレット・ミラー,クレイグ・ライス,クリスチアナ・ブランドなど,海外の女流作家を中心にミステリーも細々と読み続ける。ここら辺の選択には,まだ小泉喜美子の影響が残っている。

第五期(就職〜2000年)

就職して東京に出てきたのはいいが,最初は輸入CDの店巡りや古本屋でマンガ(花輪和一ほか)を探すのに熱中してたので,海外ミステリーまであまり読まなくなる。

たまたま本屋で立ち読みしたことから,山田風太郎にはまりまくる。忍法帖・明治物・室町物,すべてよし。ほぼ一年で80冊を突破。山田風太郎にも推理物はあるので,それを中心に大坪砂男などにも手を出す。とは言うものの,まだミステリー熱は下のほうに停滞したまま。風太郎ファンの間では京極夏彦の評価が高かったのだが,ページ数が多すぎるのでとりあえずは静観。

『黒死館殺人事件』を2/3まで読みながら挫折してたのはこの頃。夢野久作は『ドグラマグラ』以外の短編だけ読む。久生十蘭の捕物帖にはわりとはまる。

第六期(2001年〜)

第一節

山田風太郎の代表作をあらかた読んでしまったため,やっと京極夏彦を読み始める。この時点では,まだ京極夏彦=「新本格」というイメージはなし。その次にはまったのが横溝正史。角川文庫と春陽文庫の出てるやつは揃えたが,さすがに古書には今もって手を出していない。少しマンネリ気味のところもあったため,少し飽きてくる。いずれにせよ,この時期に自分の中での本格ミステリー再評価が進められる。

「新本格」については何となくいい噂を聞いていなかったので,それほど乗り気ではなかったのだが,まあ1冊ぐらいは読んでみようと思いだす。歴史的に見ても最初はこれだろうということで,綾辻行人の『八角館の殺人』を手に取る。これより怒濤の新本格マイブームが始まる。

綾辻行人の館シリーズを読み終わった後,いろいろな作家の作品を手当たり次第に当たる。島田荘司も短編集は面白かったけれど,何となく長編は面倒くさくて食指が動かず。山口雅也・若竹七海・加納朋子・倉知淳といった創元推理文庫の短編作家が気に入り出す。

第二節

そんな中,密室物アンソロジーで怪獣が出てくる変な短編に出会う。その作者が西澤保彦。強く印象に残る。出張先でたまたま買った『解体諸因』が面白かったので,続けて『七回死んだ男』を読み,西澤保彦のSF本格ミステリーに一気にはまる。非SF物では『彼女が死んだ夜』に感動。

文庫で出てる西澤保彦はほぼ読み尽くしたため,次はと思い森博嗣に手を出す。実は『すべてがFになる』は買ったきり何となく読む気にならず,半年ほどねかしてあった。手元に読みたい本がないからそろそろ読んでみるか,といった気持ちで読み始めたのだが,けっきょくはまってしまう。ただし,西之園萌絵というキャラにはうっとうしさを感じる。まだこの頃は基本的に文庫しか買わない主義だったので,京極夏彦以外のノベルスには手を出していない。

我慢ができずに講談社ノベルスの西澤保彦も買い始める。こうなるとどんどん加速がつき,ハードカバーを買いだすのも,もはや時間の問題。この時点ではすでに,店頭では西澤保彦の横に西尾維新とかが並んでいるが,表紙のイラストに圧倒され,しばらくは敬遠したままの時期が続く。横目で見ながら「なんか売れてるみたいだけど,まだ読む本はいっぱいあるからこういうのに手を出す必要はないな」などと考える。

高田崇史・殊能将之・黒田研二といったメフィスト賞出身の本格ミステリを読んでいく(出身者以外では柄刀一なども)。そのうちに,なんとなく同じメフィスト賞受賞作の舞城王太郎・佐藤友哉・西尾維新も読まなくてはいけないような気分になってくる。ただし清涼院流水はまだ無視したまま。

第三節

とうとう我慢ができなくなり,とりあえず舞城・佐藤・西尾を1冊ずつ買ってみる。「シリーズ物じゃない薄いのがいい」などと考えて,購入したのは『世界は密室でできている』『クリスマステロル』『きみとぼくの壊れた世界』。『世界は』は不覚にも感動してしまったが,『クリテロ』は??。『きみぼく』はさらに受けいれられず,一番薄い『クビツリハイスクール』も読んでみたが,さらにダメ。

……のはずだったが,佐藤友哉は『水没ピアノ』が衝撃的で,ショックのため2週間ほど立ち直れず。西尾維新は4番目に読んだ『クビシメロマンチスト』から評価が変わる。それにより,今までダメだと思ってた作品まで再評価したくなるのは実に不思議。今や下手な本格物を読むよりはと,佐藤・西尾の新作が出るのを待つほうが楽しみになる。

その後,遡って清涼院流水『コズミック』も読むが,舞城・佐藤・西尾を先に読んでいたので,それほど驚かず。さらに遡って麻耶雄嵩を初めて読んだのも,実はこの後だったりするからなあ。

新本格の流れとは別に,最近興味を持ちだしたのは伊坂幸太郎。まだ『オーデュボンの祈り』しか読んでないけれど,期待大。

現在

とりあえず新本格(・新新本格)系に関しては,いろいろな作家の本を読んでみる,という方針にそれほど変わりなし。詳しくは日記(最近の読書リスト)を参照のこと。

ちなみに今現在の僕の中での「好きなミステリ作家」(日本)の上位は以下のとおり。

  1. 西澤保彦,舞城王太郎
  2. 森 博嗣,佐藤友哉,西尾維新
  3. 泡坂妻夫,加納朋子,京極夏彦,柄刀 一
  4. 綾辻行人,山口雅也,麻耶雄嵩,倉知 淳,若竹七海
  5. 島田荘司,法月綸太郎,高田崇史,殊能将之,黒田研二,伊坂幸太郎,などなど

別格:山田風太郎  番外:小泉喜美子

どんなもんでしょう。なんとなーく,傾向があるようなないような...