宮之浦岳へ〜The road to Mt.Miyanoura 〜
とりあえず私達は車で淀川登山口まで行き、そこから日帰りで宮之浦岳まで行ってきました。屋久島の垂直分布を調べるには最適のルートではないかと思っています。宮之浦岳は九州以南では最高の標高1935mを誇る山です。
これは登り始めてしばらく立った頃の森林の様子です。標高にすると約1400mといった所でしょうか。朝日が差し込んでいてなかなかきれいな光景でした。この辺はまだこのように背の高い木(屋久杉を中心とする常緑樹帯)が生えています。
そしてこれが1600m付近で現れた、小花之江河と呼ばれる日本最南端の高層湿原です。ミズゴケや虫を捕まえて食べる食虫植物のモウセンゴケ、世界でも屋久島と種子島にしか生育していないヤクシマアザミなどがありました。ただ最近、登山道から湿原に降りる人がいるのか、イグサの数が増えてきているそうです。ちなみに高層湿原とは、川が流れ込んでいない雨水だけで涵養されている湿原のことです。水は雨水のみのため貧栄養(養分が溶け込んでいない)で、植物の遺体が腐らずに堆積する、泥炭地になっています。この高層湿原は人の踏み込みにとても弱いので、湿原では決して木道から降りないでください。
さらに進んでいくと、1700〜1750m付近からこのようなヤクザサ帯に移行します。後は頂上までずっと景観はこんな感じです。このヤクザサは見ての通りすごく密に生えるので、ほかの植物はほとんどヤクザサがある所には侵入できません。北海道では笹が多いかと思いますが、北海道の笹でいうとクマイザサ程度の背丈ですが、葉っぱは北海道の笹より明らかに細いです。このヤクザサ(ヤクシマダケともいう)は地味に屋久島固有種です。また、このようなヤクザサ帯でもヤクシカが生息しています。ヤクザサを主食にしているようです。
さて、これは一体なんでしょう?答えは、宇宙人です(^-^)…………と言う冗談はさておいて、本当はヤクザサ帯でよく見られる、屋久杉が強い風で樹皮などを剥ぎ取られたもので、白骨樹と呼ばれるものです。この様な姿になっても、まだ生きています。その証拠に、下のほうではわずかに葉っぱが出てきています。非常にゆっくりではありますが、成長しているのです。
今度は高山植物特集です。高山植物はみんな上で述べたヤクザサを避けるようにして生えています。これは左からヤクシマリンドウ、ヤクシマフウロです。左のヤクシマリンドウは屋久島固有種ですが、絶滅危惧1A類(絶滅にもっとも近い状態)にも指定されています。園芸目的の盗掘が跡を絶たないためです。皆さん、高山植物の盗掘は絶対に止めてください。この程度のことが守れないような人は山に登る資格はありません。ところでヤクザサを避けるためでしょうか、このヤクシマリンドウはヤクザサの生えない岩の割れ目にしか生育しません。右のヤクシマフウロはべつに岩にのみ生えると言うわけではありませんが、ヤクザサを避けるように登山道脇に生えています。
これが目指す宮之浦岳です。先ほど説明したように1700m以降はヤクザサ帯になるので緑色に見えるのは全てヤクザサです。屋久島の山頂はなぜかこのように大きな岩がたくさんあるのが特徴です。
ついに到着した宮之浦岳山頂です!屋久島の一番高いところからの眺めは最高でした。また、ここに来るまでに垂直分布の変化や高山植物が見れたことも大きな収穫でした。