ペットと野生動物

 近頃、ペット用に希少な野生動物を密輸する事件が多発している。今年6月に、大阪のペット業者がオランウータンなどを密輸・販売していたとして逮捕されたニュースはご存知の方も多いだろう。彼らは、インドネシアで購入したオランウータンやフクロテナガザルを木箱などに入れて日本に持ち込み、現地価格の20倍以上の値段で販売していた。中には、販売する前に死んでしまったものもいる。インドネシア・ジャカルタの動物市場では、希少動物が半ば公然と売買されており、このペット業者に限らず、日本人は上客になっているという。

このように国内で販売されているのを摘発される場合だけでなく、空港や港の税関を通る際に発見されることもある。今年10月にも、神奈川のペット業者がワシントン条約で輸入が規制されているインドホシガメなどを密輸しようとして、空港で発見された。

こうして保護された野生動物たちは動物園などに収容される。先の大阪の事件では、押収されたオランウータンは神戸市の王子動物園に収容された。また、昨年関西空港で、輸入が規制されているとして持ち主が任意放棄したホシガメは、全国19個所の動物園で飼育されることになり、道内の動物園にも引き取られた。しかしこのような動物の中には、環境適応能力が低く飼育が難しいものもいる。また、たとえ原産国へ送り返すことにしたとしても、その費用を誰が負担するのか、現地に野生復帰のための設備はあるのかなど、問題は多い。

一方、国内で販売され購入されたペットであっても、その後飼育が面倒になって捨てられたり、あるいは逃げ出したりすることがある。最近全国各地で、イタチの仲間であるフェレットやイグアナ、時にはワニガメなどが目撃され、保護されている。保護されるものはまだいいが、見つけてもらえなかった場合、ペットたちは環境の変化に適応できず死んでしまうかもしれないし、適応すれば、今度はの土地の生態系に深刻な影響を与えることも考えられる。生態系への影響だけでなく、人間自身が直接・間接的に被害を受けることもある。今道央で大きな問題になっているアライグマも、もとはペットとして飼われていたものが野性化したものである。テレビアニメ「あらいぐまラスカル」などの影響で、20年ほど前からペット用に輸入されたが、愛らしい外見とは裏腹に性質は獰猛で、大人になってから手に負えなくなり捨てられるケースが多い。さらに雑食性で繁殖力も旺盛なため、捨てられてもその土地に適応して次第に生息域を拡大させ、畑作物を荒らしたり家畜を傷つけたりといった農業被害が相次いでいる。また野幌森林公園では、アオサギの営巣地がアライグマに襲われて消失した。ほかにも、アライグマ回虫症などの人獣共通感染症を媒介する危険もある。アライグマは現在、北海道だけでなく岐阜県や愛知県でも繁殖が確認されている。

こうしたペットをめぐる様々な問題を重く見て、政府は今国会で動物保護管理法改正案を成立させようとしており、道も来年度中に独自のペット条例を制定すると発表した。しかし政府の改正案にしても、まだ不十分な点が多いと指摘する声がある。何より大切なのは、飼い主一人一人がしっかりとモラルを持つことだと思う。ペットを飼う人は、飼育方法などをきちんと調べた上で、いったん飼い始めたら、その命に最後まで責任を持つべきである。

文 K.I

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