冬芽について・・・

 12月になり雪も本格的に降り始め,どこもかしこも白く染まりつつあります。北海道大学構内の樹々は,9月の中旬頃から紅葉し,落葉しはじめ,今ではすっかり葉落し,枯れ木のようになっています。しかし,そんな樹々の枝先には,生きている証である冬芽がちゃんとついています。

 冬芽を少し観察してみると,樹の種類によって色,かたち,大きさなどさまざまであることがわかります。そして同じ樹の枝先でも色,かたち,大きさのちがった冬芽を見ることができます。これは,それぞれの樹によって厳しい冬の環境に耐えるさまざまな工夫のあらわれでしょう。

では,冬芽とはいったいどんなものなのでしょうか?

・冬芽とは・・・
 冬芽は,冬を越す芽のことで,冬の環境の厳しい温帯地方や寒帯地方の樹々に見られます。冬の厳しい環境では冬芽の状態で過ごす方がよいのでしょう。
 樹の種類によって花のもとが入っている芽(花芽),葉や茎のもとが入っている芽(葉芽),花と葉や茎のもとが入っている芽(混芽)があり,それぞれの冬芽で様々なかたち,構造をもち,
冬の寒さや乾燥から,そして冬に餌の少ない鳥の被食から保護しています。

・冬芽の形成時期は・・・
 冬芽は,樹の種類や環境によって様々ですが,一般には,その年の成長が停止してから形成されます。早いものでは,6月から形成し始め,8月には形成し終えています。落葉してようやく目につく冬芽も実際は
夏のうちから形成され,早いうちから冬の支度をととのえているのです。

※写真の冬芽

キタコブシ
枝分かれしたそれぞれの枝先についている大きな3つの芽が混芽です。この芽から春先に白い両性花が咲き,葉も展開します。枝にそってところどころに見られる芽は葉芽です。混芽も葉芽も毛の密生した1枚の芽鱗に覆われて保護されています。

・冬芽の中身・解剖

 冬芽は,たいてい何枚かの芽鱗(鱗片状の葉)に覆われています。芽鱗は冬芽を形成するときにつくられる葉で,すぐに成熟・乾燥し冬芽の外側を覆います。芽鱗を取り除くと,小さくてみずみずしい葉が1枚1枚ぴたりと重なっているのがみられます。葉のつきかた,かたちもそっくりで,枝のミニチュアのようです。葉の枚数は,それぞれの種・環境で異なりますが,次の年に展開する葉がすべて芽の中に入っているわけではありません。樹によって冬芽の中に次の年に展開する葉をすべてもっている種類と,もっていない種類があります。もっている種類は,今年得た養分で次の年のはじめに一斉に成長するタイプです。もっていない種類は,次の年に冬芽の中の葉を展開し,その年に得た養分で新しい葉を展開しながら連続的に成長していくタイプです。

※写真の冬芽2

シラカンバ
枝先についている3つの長い芽が花芽です。この花芽からは,5月に穂状の雄花が垂れ下がって咲きます。枝にそって並んでいる丸い芽は葉芽または混芽です。混芽からは,小さな雌花が咲きます。葉芽と混芽は,5,6枚の芽鱗に覆われて保護されています。

・芽の豆知識(潜伏芽)

 芽の名称でよく使われるのが潜伏芽です。これは,芽が樹木の幹や枝の肥大成長により,発芽しないまま樹皮に覆われて,埋め込まれたものです。これらの芽はそのまま生き続け,少しずつ成長し続けて,樹皮よりも少し内側に潜伏して待機しています。この芽は,何かのきっかけで樹皮を破って枝となる能力を保持しています。大きな切り株から一斉にはえる萌芽枝は潜伏芽の発芽によるものと考えられます。

 

今回,自分も改めて冬芽を観察し,初めて解剖してみました。北海道大学構内の樹々でも本当にいろいろな特徴のある冬芽が観察されました。解剖してみると,その樹の独特の香りがし,改めて生きているということを実感しました。北海道では冬の間,6カ月も冬芽で過ごします。ちょっとでかけていろいろな冬芽を見て楽しんでみるのはどうでしょうか?

文 T.K 写真 H.I

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