エコツーリズムについて

 

 最近のエコロジーブームの中ではよくエコツアーという言葉を耳にしますが、今回はそのエコツアーについてどのような旅行なのかを簡単に紹介したいと思います。エコツアーというとなんとなく地球に優しいというイメージがありますが、この言葉はエコロジーとツアーの合成してできたもので、“自然に配慮した旅行”という意味になります。これは今までのように観光バスなどを使い、大量の観光客を案内する観光とは違っていて、あくまでも自然や地域文化に悪影響を与えないようにとの配慮からガイドが少人数の観光客を案内するという形態になっています。

1.エコツーリズムの目的 

 このようにエコツアーとは自然と地域文化の保全に配慮した観光なのですが、この観光の考え方をエコツーリズムといいます。つまりエコツーリズムとは、自然や地域文化などの資源管理を行い、開発と利用のバランスを取って長期的に利用していこうとする理論のことを指しています。エコツーリズムの目的は次の3つになっています。


地域の自然・文化の保全と保護

 

 

地域の特色を生かした観光産業の確立      地域経済の活性化


この3つは相互に関わりあっています。つまり、観光を続けていくためには自然や地域文化を守ることが必要になり、自然や地域文化を守るためには住民の参加が必要であり、住民が参加するためには観光による経済効果が必要になる、というようにエコツーリズムは観光だけでなく、それを長期的に利用するために地域産業や自然、地域文化までを対象としています。具体的にはエコツーリズムによる波及効果によって地域の暮らしがより豊かになること、地域の資源が守られること、訪れた観光客に自然や文化とふれあう機会が提供されること、を目的としています。

.エコツーリズムのしくみ 

 前にも書いたとおり、エコツーリズムは今までのマスツーリズムとは違い、自然や住民の暮らしに影響を与えないような配慮が必要であり、そして旅行者にその土地の良さや美しさを伝えること、自然や地域文化の保全に役立てるため、収入はその地域に還元することを目的にしています。実際にエコツアーを実施するには次のような手順になります。


理想的な概念上のエコツーリズム

1.受け入れ側は旅行者に対して、環境への配慮や地域のルールに従ってもらうため、ガイドラインやルールを伝える。   2.旅行者は自分たちの楽しみが環境資源を破壊したり、悪影響を与えないよう細心の注意を払う。
3.受け入れ側は、旅行者が地域の良さや美しさを理解し、多くのメっセージを受け取れるよう、地元をよく知る人にガイドを依頼する。   4.旅行者は、その地域で体験を楽しんだことやガイドを受けたことへの代償として料金を支払う。一部は地域の環境維持に割り当てられる。
5.受け入れ側は、自らも環境保護や維持に努め、環境に配慮した施設づくり、ごみ処理や観光業の行動などに自主的にガイドラインを設ける。   6.結果として環境資源は、利用されつつ保護・維持され、新たな旅行者やリピーターを受け入れる魅力を保持しつづける。

以上が概念上のエコツーリズムの流れとなっています。また、エコツーリズムのメリット・デメリットは次のようなものが考えられます。 

 メリット

 デメリット

3.エコツーリズムの現状 

 エコツアーは1970年頃から中米を中心として行われ、1980年の世界環境保全戦略での持続的開発の提唱がきっかけで世界的にエコツーリズムが広まっていったのですが、エコツアーは自然環境のみを対象にしたものから、地域文化や地域住民との交流を目的としたものまでさまざまなタイプがあり、地域の特性によってかなり幅があるため、世界的にもエコツーリズムという新しい観光の理論は統一されていません。日本で盛んになり始めたのは1980年代末ごろでそれから10数年間で自然保護、環境教育、観光業界などの各分野でいっせいにエコツーリズムに取り組み始めたという感じになっています。最近は各地域で協会が設立するなど地域振興の視点からの推進の動きが始まっているようです。

4.まとめ 

 以上エコツーリズムについていろいろと書いてきました。エコツーリズムが観光だけではなく、自然や地域文化の保護・地域経済の発展を目的にしていることがわかっていただけたかと思います。北海道でもこのエコツーリズムを進めていこうとする動きが始まっているようで、知床や黒松内などでエコツアーが行われているほかに、北海道におけるエコツーリズムのガイドラインを作ろうとする動きも出始めているようです。

参考文献  「エコツーリズムの世紀へ」 エコツーリズム推進協議会(0352960431

文 K.A

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