地面の下にがあるとどうなるの?
永久凍土解説

 土があってその上に植物が生えてくる、こんなの当たり前の事ですよね。そしてその土にはが含まれている、こんなのも当たり前の事です。では、その凍ったら…?植物たちはどうなるのでしょうか?今日はこんな事を考えてみましょう。今回は以下のようなアプローチをしてみます。

永久凍土って何?

 北海道は日本でも最も寒い地方です。しかしその寒い地方でも地面の水が凍って氷の層ができている場所はほとんどありません。主に高山帯や大雪、日高地方に一部存在するのみです。この氷の層がある土が広く見られるのは、シベリアなど、もっと北の地域です。この、地面の中に氷ができて、しかも年中解けない場合、この地面を永久凍土といいます。また、夏の間のみ解けていますが、その他の時期は凍っている場合、季節的凍土といいます。この凍土は、氷河期にできたものがそのまま残っていたり、寒いために新たに生成される事により存在しています。

永久凍土と植物

 では、この凍土が存在すると植物にはどのような影響があるのでしょうか?

  1. 根が張れなくなる
  2. 地温が下がる
  3. 微生物の活動が鈍くなり、葉っぱなどの分解が遅くなる

1.に関してはどういうことかというと、下の図をご覧ください。

 絵の丁寧さはどうでもいいとして(笑)、つまり、地面の下に氷の層があると根がそれ以上下に進めなくなってしまうのです。このため、永久凍土のあるところでは根があまり深く張れないために、強風などが吹くと木が一斉に倒れてしまうのです。ロシアのシベリアの永久凍土地帯では、根は地表から20〜30cmぐらいしか張ることができないそうです。

 2.は氷があるから温度が下がる、ごくごく当たり前の事です。地温が下がれば生育環境としては悪くなります。ところが、これがある生物にとっては非常に重要なのです。例を挙げますと、北海道に生息するナキウサギを挙げることができます。彼らは3〜4万年前の氷河期に北海道に渡り、その後地球が温暖化して北海道に残った氷河遺存種です。そのため彼らは高温に弱く、北海道では高山や、このように地面に永久凍土があって、冷たい風が吹き出しているところ(これを 風穴=ふうけつ といいます)にのみ生息しています。このような氷河遺存種にとって、このような永久凍土の存在は非常に重要なのです。

 3.はもうそのままで、気温が下がれば微生物の活動は停滞しますから、葉っぱなどの分解が遅くなってします。そのため永久凍土のある場所の地面は、写真のようにコケや未分解の葉っぱ、及び寒い環境に強い高山植物などがびっしりと敷き詰められてじゅうたんのようになっています。


永久凍土の地表の様子。
ゴゼンタチバナやコケのマウンドが見える

このように植物の生育には不利な性質が多いため、永久凍土上には普通他のところではあまり生えないような植物がたくさん生育します。例えば北海道であれば、アカエゾマツのような樹種が永久凍土上では純林を作ったり(普通アカエゾマツが純林を作ることはほとんどないし、それどころかそれほど数の多い樹種でもない)、名前のように高山にしかいないような高山植物(コケモモガンコウランなど)が生育していたりします。

永久凍土がなくなったら?

 以上で永久凍土の基本的性質は分かってもらえたと思います。では、この永久凍土がなくなったらどうなるか考えてみましょう。

 永久凍土は気温、水の流れがうまくマッチしていなければ成立しません。そのため

という事が起こってしまうのです。ナキウサギ問題でゆれた士幌高原道路は最初の理由がまさにそれです。また、ロシアでは2番目の理由により次々森林が破壊され、湿原ができているのです。詳しくは、以下の図をご覧ください。

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このように、伐採される事により太陽がよく地面にあたるようになり、氷が溶けて水になってしまいます。すると、知っていると思いますが、水は氷より体積が小さいため水になると地面は体積差、及び地面に吸収された分陥没します。そして水を大量に含んだ湿原になるというわけです。ロシアではずさんな森林伐採や不注意による火事で次々に森林が消失しています。そしてこのような湿原(アラスと呼ばれる)が次々にできているのです。アラス化してしまった森林が元に戻るには、とてつもなく長い年月が必要だとされています。

 一般に植物の生育には不利な条件を与えている永久凍土ですが、そこにはその永久凍土に適応した独自の自然が成立しています。それだけに、今残されている永久凍土をしっかりと守っていかなくてはならないのです。

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