白保のサンゴ礁

1.場所

 沖縄県 八重山諸島 石垣島の南東部に白保は位置している。その1kmほど沖にサンゴ礁が南北に1から2kmにかけて連なってる。

2.何が生きているか?

 白保では、200年、300年生き続けるサンゴが数多く存在している。ハマサンゴは推定300年になると3km以上の筒状の形となる。このようなサンゴを「マイクロアトール」とよぶ。白保では、このマイクロアトームが100個以上も確認されているという。

 また白保には直径数メートルのアオサンゴが生きている。普通は、直径1メートルにしかならないから、いかに巨大かわかる。アオサンゴは一年にわずか数cmしか成長しないので、白保のアオサンゴはかなり長い間生き続けているということになる。600年以上も生き続けているものもある。そしてこのようなアオサンゴ同士が連結して、数100m四方の範囲で分布している。その規模は、北半球で最大であるといわれてる。

 そして、サンゴの周りには、スズメダイ、チョウチョウウオ、ハゼなどの小さな魚や、サンゴカニ、エビなどがいきづいている。また、いろいろな魚たちの稚魚のゆりかごとなっている。サンゴの役割は大きい。

3.新石垣島空港について

<新石垣島空港に関する略年表>

   1979年 石垣市が、白保の海を1000ha埋め立て、「新石垣空港」を作る計画を発表

   1982年 運輸省が「新石垣空港」の建設を許可

      沖縄県は「土地収用法」を適用し、調査を強行

   1988年 国際自然保護連合(IUCN)が新石垣空港の見直しを日本政府に要請

      環境庁が調査を開始

   1989年 沖縄県は白保地区での建設を断念、新候補地にカラ岳東海岸(白保の北側)をあげる

      環境庁は代替地のカラ岳東海岸について「サンゴ礁等の自然保護上の問題はないと判断される」      とコメント

      しかし、WWFJAPANは「新予定地での空港建設は、日本で最高級のサンゴ礁環境を消滅させる      可能性が強い」とコメント

   1990年 日本自然保護協会が「カラ岳東地域の埋め立ては白保サンゴに重大な影響を及ぼす」とコメ          ント

   1991年 自保公民館は、カラ岳東、陸上案ともに反対を決議

   1992年 石垣市議会と市農業委は、宮良案と冨崎野案、カラ岳陸上案での空港建設に反対し、カラ         岳東での早期着工を求める決議

   1999年 稲嶺知事「新空港は、宮良、カラ岳東、同陸上、冨崎野の4案から検討」とコメント

   2000年 第7回選定委はカラ岳陸上案を選定

 このようにまだまだ空港が建設される可能性は高いが、「白保にあるサンゴの群落は貴重である」と国内外からの非難の声があるために建設に踏み切れないでいる。が、しかし・・・

4.赤土汚染

 白保には、通路、轟、宮良の3つの川が流れている。ちょっとした雨が降ると、それぞれの川から赤土が流れ込んでくる。すると、光が届かなくなり、サンゴの生育が大きく妨げられてしまう。なぜサンゴの生育が妨げられるのかというと、サンゴは藻類と共生している動物だからだ。(サンゴは植物ではない)赤土はどこから流れ出しているのかというと、それは畑からである。しかし、畑は、昔からあったのにもかかわらず、赤土が流れ込むことはほとんどなかった。それが流れ込むようになってしまったのは、土地改良事業が始まってからだ。昔も畑から赤土が流出していたらしいが、島のあちこちにある湿地を何度も通過していくうちに沈殿していったので、赤土が海に流れ込むことはなかった。がしかし、土地開発事業がはじまり、生産性の低い湿地はどんどん壊され農地になり、川はコンクリ−トで護岸されてしまった。その結果、雨が降ると畑の表土が一気に海に流れ込んでしまうようになってしまった。

 このままでは、白保のサンゴ礁が消えてしまうのも時間の問題かもしれない。

文 H.K

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