オオカミの生態

オオカミ勉強会第四回

この文章は12/13の自然保護研究会の例会において発表された内容をまとめたものです。

 今回はオオカミの生態について見ていきます。

 英語ではオオカミの群れはpackといいます。オオカミの群れは主に家族で構成されます。群れの中では、雌雄共に厳格に順位が決まっていて、第一位の個体を“アルファ”、最下位の個体を“オメガ”といって雌雄にいます。群れの大きさは手に入る獲物の大きさや頻度によって決まります。つまり、大きな獲物が手に入ったり、獲物が豊富なところでは群れは大きく、小さな獲物しか手に入らなかったり、獲物が少ないところでは群れは小さくなります。

 繁殖期は晩秋から晩冬で、繁殖するのはメスのアルファだけです。普通の場合相手はオスのアルファですが、オスのアルファがメスのアルファに気に入られなかった場合、第二位のオスが繁殖することがあります。しかし、この場合、オスのアルファと第二位のオスが仲が悪いとできません。このように順位が高いオオカミしか繁殖できないので、繁殖期の前には激しい順位争いがおこります。普段は順位争いはあまり起こらず、自分の順位に応じた行動をとることで争いを避けます。しかし、繁殖期の前は少しでも順位を上げようとみな必死になります。

 子供が生まれると、直後は母親へエサを運んでも、子供の父親であっても巣の中に入れません。子供が巣から出られるぐらい成長すると、群れ全体で育てます。昨年生まれた子供たちは群れに残っていて、弟妹の世話をする個体もいます。生後一年は相手が誰だっても何をしても許されます。しかし、生後一年を過ぎると、群れの最下位のメンバーとして加わり、順位にふさわしい行動をとることを強いられます。

 群れは自分のテリトリーを持っていて、マーキングによって境界線を示し、他の群れが入ってくると死闘を繰り広げてよそ者を追い出します。他の群れとの接触をできるだけ避けるために<オオカミ不在地>というものが存在します。<オオカミ不在地>には両者は近寄らないため、シカが草食い場や繁殖地として利用します。ここで増えたシカがオオカミのテリトリーの中に戻っていきます。

 ところで、自分が生まれた群れを出て新しい自分の群れを作ろうとする個体もいます。この一匹オオカミは<オオカミ不在地>をさまよい、さまよううちに伴侶を見つけて、他の群れがテリトリーとしていない土地を見つけて自分の群れを作ります。一匹オオカミがテリトリーを持つのは、アルファオオカミが不在の群れを見つけて乗っ取ったるか、以前そこに住んでいた群れが何らかの理由でいなくなった場所を見つけたときに持つことができます。私たち人間は“一匹オオカミ”というと強くてかっこいいイメージを持っていますが、実際は他の群れのテリトリーの隙間をぬってほそぼそと生活している苦労の多いオオカミのことなのです。獲物の豊富なところは他のオオカミのテリトリーなので獲物は満足に捕れません。

 次はオオカミの狩りの仕方です。オオカミの狩りは“牙ではなく脚で獲物を狩る”と表現されます。つまり、オオカミは獲物を追いかけ、疲れさせてから襲いかかるのです。オオカミは走るのは速くありませんが、持久力があります。また、獲物によって狩りの仕方を変えます。オオカミ“追跡”の手法と“待ち伏せ”の手法を組み合わせた巧み狩りをしますが、脚の速いシカを相手にするときは“しのび寄る”という手法に変えます。また、狩りに行く前に群れのメンバー全員でハウリングなどコミュニケーションをとります。

 狩りの仕方の具体例としては、

  1. 一頭が獲物の前方に回り込んで待ち伏せし、群れの残りの個体がそこに向かって獲物を追い込む

  2. 子供や身体の不自由な個体を群れから切り離し仕留める

 次回は“イエローストーンへのオオカミ再導入”です。

文 C.K

自然レポートへ