哺乳類の冬眠

 鳥や哺乳類は、寒くなったときでも、自分で体温の調節ができます。だから、たとえばペンギンの仲間やカンジキウサギなどは、極寒の地でも活動が可能です。しかし、極地ほど寒さが厳しくない温帯や寒帯、山地などには、冬眠する動物が数多くみられます。

 鳥類は、翼を使って長距離移動ができるので、寒さを避けて暖かい地方へ渡ることができます。カリフォルニアで繁殖するプアーウィルヨタカは、冬眠する鳥の数が少ない例の一つです。

 哺乳類は,冬眠する種数が多いです。日本では,エゾシマリス、ニホンヤマネ、ツキノワグマ、ヒグマ、キクガシラコウモリなどのコウモリ類などが冬眠します。

 さて皆さんは、クマの仲間を冬眠動物に入れてよいと思いますか。(ちなみに私は小学校で、クマは冬眠をせず冬ごもりをする、と聞きました)これについては、しばしば議論されてきました。クマは冬眠中でも、体温が摂氏31度くらいまでにしか下がらないこと、尿中の水分を膀胱の壁から再吸収する機能を備えていて排泄しないこと、さらに雌が冬、穴の中で子供を出産するという点で、他の冬眠する哺乳類とは異なるからです。しかし、クマが穴にこもる期間は約100日と長く、その間まったく食物をとらないので、冬眠の定義を、動物が冬の間静止して、長い期間食物をとらず、活動性が著しく低下する状態」と考えるなら、クマも冬眠動物だとすることができます

 

エネルギー

 ほとんどの冬眠動物は、冬眠前に体重の3040%にあたる脂肪を体内に蓄積します。冬眠中はこの脂肪を使って、代謝活性のためのエネルギー源とし、飲まず食わずの生活を続けるものが多いです。

 冬眠中、体温は外気温に応じて下がり、それと同時に呼吸数,心拍数も減り、エネルギーの消費量が節約されます。それでも、ほとんどの冬眠動物は、冬眠期間中、215日おきに目を覚まして体温を上げ、排泄をしてまた眠るといったことを繰り返すので、かなりのエネルギーを消費します。だから、冬眠前に十分な食物が得られず、体脂肪を蓄積できなかった個体や,冬眠から目覚めて地上に出てきた直後の個体では,死亡率が高くなるのです。

冬眠の意義

冬眠する動物は、通常年1回、春に繁殖期を迎えますが、冬眠によって、このように翌年まで生き残る率が高くなるなら、子孫を残すチャンスも大きくなるのです。ですから、冬の間中起きているよりも、有利だと考えられます。冬眠は,上手に仕組まれた生き残り戦略の一つなのです。

 

<参考文献> 川道美枝子 動物たちの地球

文 C.M

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