木の実について…    

                                   

秋もそろそろ終わりに近づき、最近は冬の訪れを告げる雪虫が北大でも大量発生しています。銀杏並木のところでは銀杏を拾っているおばさんがたくさん見られるようになりました。もうだいぶ紅葉も落ちてしまっているのですが、今回の自然紹介では秋の風物詩といえる木の実について少しお話したいと思います。

皆さんがよく見る木の実というのは例えばどんぐりだったり、くるみだったり、銀杏だったりすると思いますが、木の実・種子にもいろいろな形や大きさ、特徴があります。小さなものではたんぽぽの種のように数ミリ程度のものから、やしの実のように数十センチにいたるものまであり、種子の散らばり方にも風や動物によって運ばれたり、そのまま地面に落ちるものもあり、よく見てみると非常に多様であることがわかります。実際には種子にはどのようなものがあるのでしょうか。

  1. 風によって移動するもの
    風によって散布される種子は一般に大きさが小さく、大量の種子を作ります。最も遠くへ種子が運ばれるため、火山噴火の跡地や河川の氾濫原、土砂崩れ地などに素早く侵入し、優占する森林を作り出します。種子の形によって大きく
    3つに分けられ、冠毛や羽毛を持った種子〈ヤナギ科〉、翼を持った種子(カエデ科、カバノキ科、マツ科)、微細種子(ユキノシタ科、ツツジ科の一部)に分かれますが、冠毛や羽毛を持った種子が最も遠くへ飛ばされ、優占した森林を創ります。このような植物は一般にパイオニアと呼ばれます。
  2. 水によって移動するもの 
    熱帯ではやしの実が海流に乗って子孫を残すことが知られていますが、北海道の渓畔沿いに自生するオニグルミも似たような子孫の残し方をします。この木の実は内側に空室を持つため、水に浮く構造をしています。川に落ちたオニグルミは流れに乗って下流の水辺で発芽したり、ときには遠くの海辺で発芽することもあるといわれています。
  3. 動物によって移動するもの 
    これは主に動物に食べられ、その後糞となって運ばれるものと、体に付着することによって運ばれるものがあります。種子の散布の場合は鳥の存在が重要で、身近な森林だけではなく、渡り鳥によってしばしば
    1000キロ以上もの長距離散布が行われる例もあります。その他に、身近などんぐりも冬の食料としてリスに運ばれます。植物のほうでもただ動物に食べられっぱなしというわけではなく、例えばブナやミズナラなどではネズミにすべて食べられないようにネズミの数が減った時期に合わせて種子を大量に作るなどの工夫をしています。
  4. 種を弾き飛ばすもの 
    これらの植物は、種子が完熟して果実が裂開するときの機械的衝撃をによって種子を弾き飛ばすもので、フジやホウセンカ、スミレなどがあります。
  5. 種子を作らないで子供を残すもの 
    種子を作る以外にも変わった方法で子孫を残す植物がいます。例えばシウリザクラやヤマナラシは土壌中を根茎がはしり、そこから出た芽が成長して自然更新することがあります。これらの植物は大量の種子を作ることによって栄養分を消費する変わりに、親の近くの生育環境がよい安全な場所に子孫を残そうとしているようです。

以上5つの植物の子孫の残し方についてみてきました。普段何気なく見ている植物も様々な方法を使って一生懸命子孫を残そうとしていることが分かると思います。みなさんの身近にもよくよく観察してみるとさまざまな生き物の暮らしが観察できるのではないでしょうか。

文責 K.A

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