第4話 初陣
 暗闇の中から自分の名前を呼ばれている気がする・・・。
 呼びかけに応じようとする気持ちと無視しようとする気持ちがせめぎ合っている中、なぜ自分がここにいるのか疑問が湧いてきた。
 瞬間、ミデアが撃墜され不時着したことを思い出し、暗闇から光の中へと戻っていった。
「おい、マクマード。応答しろ!生きているか?」
目を覚まし、ぼんやりした頭の中を振り払うように頭を左右に振り、答える。
「あぁ、無事だ。機体の損傷も・・・異常ないみたいだ。ロベルトは?」
「ロベルトも無事だぜ。お前の後ろにいる」
 後ろを振り返るとロベルト機が腕を挙げる。
「敵さんがやってくる前に、ここを出よう!」
 ジャンの提案で3機のジムはミデアの格納庫から出る。少し離れたところに後方を飛んでいたミデアの残骸が散乱していた。
「生存者はいないようだな?」
「あぁ、いないようだ」 空中で爆発したらしく、MSかミデアの残骸かわからないくらいになっていた。
「敵さんがやってきたらしいぜ。ミノフスキー粒子が濃くなってきやがった」
海の方に向かって索敵をしていたロベルトから通信が入ってきた。ジャンとマクマードの緊迫感が上がってきた。3人とも新兵であり、実戦経験はなく初の戦闘である。叱咤する上官もなく、3人とも高揚感よりも不安感の方が勝っていた。
「やっぱりザクかな?」
廃墟となった都市のビルの後ろに隠れながらジャンがポツリと言葉を発する。
「海から来るから、新型MSかもしれないぞ」
ビルの残骸から海の方を見ながらロベルトが答える。
「陸上戦用のMSも戦場に出てると言うし・・・」
「イヤなこと言うなよ」
ロベルトの言葉に心底怯えた口調でジャンがつぶやく。いつも陽気な男が今は陰気な男に変わっている。死に対する恐怖と孤立しているという不安感が彼らを蝕んでいた。
海に向かって右側の索敵をしていたマクマードは、4機のMSが警戒しながらこっちの方向に向かって近づいてくるのを発見した。3機はザクのようだが、フォルムが少し違い青色をしていた。もう1機は見たこともないMSで、茶系の色をしており、重量感がある形をしていた。
「敵を発見したぞ。3機はザクタイプ。もう1機は新型だ」
「新型〜!お前の言ったとおりだな。イヤなことは当たるぜ」
ぶつくさ言いながらロベルト機にジャンは近づいていった。
「あの新型、兵器は持って無いみたいだな?武装はどんなのかわからないな」
ロベルトが敵MSを見ながらつぶやく。敵はまだ、こちらを発見してないらしく、別の方向に向かって進んでいる。
「このまま見つからなければ、ここで待機できるな」
楽観的な予測をジャンは言う。
「そうなれば一番いいんだがな・・・」
ロベルトはそれに答える。
「背後から先制攻撃は出来ないだろうか?」
二人にマクマードは提案する。
「無茶な!」
ジャンが呻く。ロベルトは冷静に考えて答える。
「今のままだと難しいな。敵がこのまま進行方向に向かっていけば可能だが、そうでなければこちらが動かないといけない。しばらくこのまま様子を見てみないとわからないな。」
「そうだな。そうするか。」
マクマードは同意し、3人はしばらく今の位置を動かず、待機し様子を見ることにした。息を潜め、ビルの残骸に身を隠しながら敵の動きを探っている時間が、永遠に続くかと思っている3人に好機が訪れる。敵のMS部隊が3人の隠れているビルの残骸を通り過ぎ、こちらに背後を見せながらミデアの不時着した場所に移動していったのだ。3人は画面でうなずきあい、背後から奇襲すべくビルの残骸から飛び出し攻撃をかけた。
小説トップへ
第5話 奇襲