第1話 襲来
少年は、日本史の授業を受けていた。
真面目そうな顔つき、一般の男子と同じくらいの長さのヘアースタイルをしている背は標準よりほんの少し高めの背丈。
そしてその少年の目の前の黒板にカリカリとチョークの音を立てて文字を書き続けている教師。
少年はひたすらその黒板に書かれている文字をノートに写しながら、その文字の意味を理解しようと必死になっている。
この少年、「榊原歩」はこの学校、「私立月岡高等学校」の普通科に所属するごく一般の普通の生徒である。
「普通の人から見れば」、だが。
この少年「榊原歩」の本業は連邦軍に属するMSのパイロットである。
東京にあるこの学校からでは少し遠い場所に連邦軍の小規模の基地があるが、歩は常時身に着けている通信機の受信範囲では余裕である。
いざとなれば歩の愛機であるガンダム(陸戦型)を10分以内に歩の居場所に届ける事が出来る。

このガンダム(陸戦型)は日本に数機しか無い貴重な「ガンダム」の一つである。
現在日本には4機だけ実戦用配備にさえている、そもそも日本にガンダムが配備されている事事態が不思議なのである。
アメリカや、ジャブロー付近ではガンダムRX−78等は、一年戦争後期に大量生産された「ジム」と同等な位に量産・配備されている。
ビーム兵器を標準装備している為、連邦は今、いかなる時に襲撃されても充分に対応できる態勢を整えている。
一年戦争初期に、「ザク」による被害の大きさを考慮し、戦車などでは無くMSの量産に力を入れている、一年戦争の教訓を良く生かしていることだろう。

キ−−ンコーーンカーンコーーン

聞きなれたチャイムの音が月岡高校に鳴り響く。
ようやく日本史の授業が終わった、何故か歩は一つの過酷な任務を終えたときと同じ位に疲れていた。
日本史が苦手という事では無いが、期末テストが近いので自然と授業に集中してしまう、いい事である。
今日の授業は今の日本史で最後だったので、後はホームルームを終えるだけだ。
彼はいそいそと帰りの支度を始めていた、今日は久々のガンダムの模擬戦を基地で行う為、ホームルームが終わった後にすぐ帰れるための準備だ。
と、彼は教科書を鞄に入れているときにふと目に付いたものがあった。
黒く光、金属の無骨な形をしている物体−G18だ。
セミオート/フルオートの切り替えができるこのハンドガンを常備携帯している、いつ敵に襲われても対処できるように装備しているのだ。
しかし、他の人に見つかってもマズイのでそのG18を鞄に押し込んだ。

ホームルームが終わり、彼は自宅に向かった。
不覚にも自宅に、基地のIDカードを忘れてきてしまったのである。
秋葉原の電気街を腕時計で時間を確認しながら歩いていた。
午後4.32分、5.00時までに基地に付くようにすれば良い、まだ余裕はある。
「ハァ・・(*´Д`)」、彼は肩でため息を着いた、自宅にIDカードを忘れさえしなければ今頃は基地でガンダムを乗り回していただろうという後悔に押されてついついため息がでてしまう。


と、


「おい、なんだあれ?」
「なにあれ?、白いのが三つも、それにヘリコプターも」
「オイオイ、戦争でもおっぱじめるきか?」


道を歩いている人間が足を止めて空を見上げていた。
歩もつられて空を見る・・・・・・・・。


と、空を見た瞬間彼の身体に緊張が走った、あるはずのない出来事が起きようとしていた。
「本当に戦争を始める気か?」、思わず呟く。


「何故ザクが、3機も?!」


パラシュートで降下速度を下げながら、その特徴的な緑色のボディが降りてきた、この秋葉原に向かって。
あのヘリコプターもおそらく戦闘を考慮したのだろう、でなければミサイルなんか生んでいるはずが無い(!)。


「おい、落ちてくるぞ!逃げろ!!」


空を見上げていたうちの一人が叫ぶ、それが引き金になった。
ザクは金属音とともにパラシュートが3機同時に切り離し、一気に落下してきた。
一機はマシンガン、二機目はバズーカ、3機目はガトリングを装備していた、あんなもので暴れられたらこんな町など一溜まりも無い。



ドォォォーーーーーーーーン!!!!



激しくコンクリートが砕け散る音が鳴り響いた。


パララララララララララララララララ!!!!!!!!!!


すかさず一機目のザクがマシンガンを撃ちまくる。
鼓膜が破れるほどの騒音、巨大な薬莢が転がる乾いた音。
その音がするたびに人々の叫び声が響き渡る。
ビルがまたたくまに削り取られズタズタになり砂ぼこりとともに道路に穴が開く。
銃弾が車、家、あらゆる建物を砕く。
そんななか、歩は必死に走り回っていた、すぐ横の車に銃弾がヒットし、爆発を起こす、しかしそんな事など気にせずに歩は走る。
一刻も早くザクから距離を取らなければならない。



「ふん、連邦軍の基地が一つこの都市にあるって聞いたから潰しに来てやったのに、一体どこにあるんだ?」
マシンガンを撃ち続けていたザクのパイロットの声、渋く、低い声、3.40ぐらいの歳であろうその人物は呟いた。
「まあ暴れていてばあっちから出てくるだろ、それまでは破壊を楽しもうじゃないか」
続いてガトリングを構えているザクのパイロットがさっきのザクのパイロットに問う。
あんなガトリングで町を攻撃されたらそれこそ終わりだ、悲鳴も短い間にこの都市は火の海になるだろう。
「早く、MSと戦闘がしたいもんだぜ・・・」
マシンガンを構えているザクのパイロットが再び呟いた。


歩は走りながら連邦軍の基地の仲間に連絡を取っていた。
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