第四話
――先日襲い掛かってきた2体目の連邦軍ガンダム。新型ガンダム『G―フラット』との連携攻撃で撃退できたものの、ピウ・フォルテ4機を撃破。5機を大破という結果に終わった。敵軍名称はファントム。そしてクライン。この結果からして先日我々エリュシオンを襲撃したガンダム。RX―342D。ディスミエンドはエリアル軍のMSと確定しました。この結果から本来我々エターナルが攻撃を受けていたファントム軍だけでなく、クライン軍やエリアル軍からも襲撃を受ける可能性あり。と記された報告書がコロニー国家会議の場で公開された。この報告書は大きな衝撃を生んだ。しかし、逆手に取れば連邦に対する反感心を高める絶好の機会である。本部の人間は自分たちのコロニーにその報告書の一部を記入した雑誌や新聞を出版した。

 巨大奇襲戦艦『シンフォニア』艦内――レインフォースブロック通路。
「中尉。次の作戦目的地を聞きましたか?」
「ディンでいいよ。フォレスト准尉。」
「では私もルナでお願いします。」ディンはルナから作戦目的地の情報をもらった。そこにレイとウェイクがやってきた。
「ん?中尉!エリスさんが呼んでましたよ。」ディンは血の気が引きそうになった。
「いっけねぇ!報告書まとめるの手伝うって約束してたんだ!」ディンは泡を食って、エリュシオンブロックにあるエリスの部屋へと向かった。

 エリュシオンブロック――エリスの部屋。そこでエリスはディンを待っていた。待ちくたびれてあくびが出そうだった。
「・・・遅いなぁ・・・・・」トンとまとめた書類を机に叩きつけて方向を整えていた。エリスはエリュシオンのメインシステムのデータを映し出しているディスプレイに目をやった。表示されている膨大な情報も書類にしてまとめなくてはならないと思うと、ため息をつきたくなった。それよりも何よりも眠い!!目覚めてから24時間以上起きているのは珍しい事ではないが、何よりもデジタルで表示される文字や、ディスプレイの放つわずかな光が彼女の目を疲れさせていたのだ。彼女が大きなあくびをした直後。「悪ィ!!遅くなった!」と言ってディンが部屋に入ってきた。
「遅いよぉ・・・・・あとよろしく・・・・・・」ディンがやって来て機が緩んだのか、疲れていたのか、彼女はそのまま机に伏せて眠ってしまった。
「お、おい!・・・・・・参ったなぁ・・・・・・」ディンはため息混じりにそう言った。しかし、遅れた自分が悪いのだ。残っているデータの残量を確認すると、この程度なら1人でもできると思い、作業に取り掛かろうとした。だが、エリスに毛布をかけてからでも遅くは無いと思い、毛布をかけてやった。
「さぁて。やりますか!」音声入力では彼女を起こしてしまう可能性があるのでキー入力でデータをまとめる事にした。しばらくの間。キーボードを叩く音と、エリスの静かな寝息のみが室内に響いていた。

 『シンフォニア』第一ブリッジ――エリュシオンブリッジ。
「エリスの報告書は常に完璧だな。ん?枚数が足りないようだが・・・・・まだ出来ていないのか。」
「艦長。引き続き索敵を行います。」ヴェルレンスはうなずいた。そして、その場から席を外した。ブリッジ要員には「少し休んでくる。君達も交代で休むように。」と言ってブリッジを出て行った。しかし、彼は自室には向かわず、エリスの部屋へ向かった。

 ディンが書類の整理を始めてからどれだけの時間がたっただろうか。未だにキーボードを叩く音が響いている。ディンは手元に置いたカップに自らのオリジナルブレンドの豆を使ったコーヒーを注ぎ、それを飲み干した。
――熱っ!!思わず声をあげそうになったが、我慢した。引き続き作業を継続させた。そんな時だった。
「ん・・・・・・・ふぁあぁぁ・・・・・」エリスが目を覚ましたのだ。エリスは寝ぼけた表情でディンを見ていた。やがて完全に目が開き、ディンに近づいた。
「お目覚めかい?お嬢さん。」エリスは「おかげさまでね。」と皮肉った。しかし、その言葉と裏腹に、「ありがとう。」という気持ちも込められていた。
「まあ、そう言うなって。はいこれ。」ディンは出来上がっている分の報告書を渡した。エリスはその報告書に目を通していた。その一方で彼女はまたあくびをしていた。それに気付き、ディンは無言でコーヒーを手渡した。初めはきょとんとしていたが、カップを受け取ると「ありがとう。」と言ってカップに口をつけた。ディンはそのブレンドに関する感想を聞きたかったが、まだ仕事が終わっていないので、キーボードを叩いた。そのキーボードを叩くスピードはすさまじく速く、エリスを驚かせた。それと同時に彼女はコーヒーがいつものより美味しいと感じた。 「・・・おいしい・・・・・」ディンはその言葉を聞いて安心した。この特性ブレンドは普通の人間からするとただ苦いだけなのだが、一部の人間には苦い中にもコクがあり、美味いらしい。
「ディン・・・まさか貴方の・・・・・・」
「そうだよ。嬉しいなぁ・・・普通の人には苦いって言われるだけだからね。」ディンはいつのまにか、全ての資料をまとめ終えていた。
「ありがとう。それと・・・今度この豆くれる?自分でやってみたいから。」ディンはうなずいた。その時。ヴェルレンスが部屋に入ってきた。
「報告書を取りに来た。ん?アルスター中尉。何故ここに居る?」
「報告書をまとめるの手伝っていたんです。」ヴェルレンスは「そうか。」といって出来上がった報告書を取り、部屋から出て行った。

 ファントム軍巡洋艦『ブレイブ』艦内。そこで最後のゼフォンシリーズ。『ユニゾンガンダム』が出撃を待ち望んでいた。
「いつになればガンダムが使えるんだ!?」ユニゾンガンダムのパイロット。レイズン=ウォレスは苛立ちを押さえきれずに居た。最後には壁を殴りつけたりしていた。
「敵艦発見!!ユニゾンガンダムは出撃してください。」レイズンは待ってまた。といわんばかりの勢いで飛び出した。しかし、無重力空間なので走ろうとしても走れない。それがもどかしく感じた。

 レインフォースブロック――第一休憩室。
「!?・・・・・来るのか?」
「中尉も感じましたか?」レイはディンに訊ねた。
「じゃあウェスカー少尉も?」なんとウェイクまでもが敵の接近を感じ取ったのだ。3人は無言でうなずくと、各自のガンダムの格納庫へと向かった。

 『シンフォニア』第二ブリッジ――レインフォースブリッジ。
「艦長!ガンダムタイプのMSと戦艦1隻が接近中です!!MSの照合結果・・・RX―342U!ユニゾンガンダムです!アサルトパーツを装備している模様!」
「こちらもガンダムを出撃させろ!!ただし!フォルテのみだ!」ブリッジは一瞬その命令が信じられなかった。しかし、エリュシオンブロックにまでその情報が行き渡ると、ガンダムフォルテが出撃した。もちろんレイやウェイクは納得がいかず、口論し始めた。しかし、理由は明確だった。フォルテ以外のガンダムは全開の戦闘で大きなダメージを受け、修理している最中だったのだ。フェルマータにいたってはあのガンダムのビームダーガーの攻撃をまともに受けて、修理には時間がかかるのだ。

「何だ・・・不安な感じがする・・・・・・」ディンはブレイブに向かって突撃していった。シュトゥルムで構成された小隊だろうか。マシンガンを乱射して接近を防ごうとしている。だが、ビームシールドで弾丸を防御し、ハイパービームライフルを発射。隊長機らしき機体を撃破した。
「!?・・・来る!!」腕の上部ハッチが開き、メガビームガトリングガンが出現した。シュトゥルムのジャイアント・バズの弾丸を撃墜した。その瞬間。真後ろから大きなプレッシャーを感じた。そのプレッシャーに向かってハイパービームライフルを発射した。その攻撃はビームシールドで防御された。しかし、シールドの耐久力は一気に低下したはずだ。
「何ィ!たった一撃でシールドの耐久力が通常の数倍も低下した!?」アサルトビームランチャーを発射態勢に持ち込んだ。エネルギーが充填されている事に気付いたディンはハイパービームライフルのエネルギーをチャージし始めた。もし、中和に失敗すればやられることは間違いない。念のため、XEPHONシステムを発動させ、ハイパワーモードにしておいた。
「「発射!!」」2人は同時にビームを発射した。そのビームはぶつかり合い、互いに打ち消しあおうとした。しかし、圧倒的に有利なのはフォルテだ。ロックを外している上に、フルパワーのビームライフルの発射だ。この組み合わせは戦艦のビームでさえ突き破る事ができるのだ。
「出力が負けている・・・・・だったら!」レイズンはレバーを倒し、フルパワーモードにした。アーマーが少しずつだが、煙を上げ始めた。だが、ビームの出力が向上しているのは間違いない。
「!?出力が上がった!!ガトリングは使えない・・・・・・ビームシールドを!」両肩のビームシールドが機体の前方に位置し、ビームを展開した。やがてアサルトビームランチャーのビームはフォルテに命中した。
「やったか!?」だが、それほど甘くはない。ビームの熱による金属の蒸発の煙が消える寸前。2つ並んだ光と、細く伸びたサーベル状の光が見えた。それがどんどん距離を積めて来る。次の瞬間。ユニゾンガンダムの右腕が切り落とされた。だが、それはレイズンにとってはチャンスだった。腕を切られた瞬間に、フォルテを蹴り飛ばし、体制が崩れた瞬間を狙い、ロングビームサーベルを展開し、コクピットを潰そうとした。が、
『ディン=アルスター中尉の生命維持限界レベル・・・LVレッド。XEPHONシステム再起動。戦闘再開。』宇宙空間を漂っていた機体が、青白く光っている。メインカメラに光は無かった。しかし、圧倒的な技量の差は見えていた。
「なんだ・・・・・とても嫌な感じが・・・・・」ユニゾンガンダムは接近を止めた。その瞬間。頭部がフォルテに掴まれた。フォルテ全体には、まるで虫の息の人間が頭を捕まれ、宙に浮かされているように、腕や足が垂れ下がった状態だったが、確実に力があった。ユニゾンガンダムのメインモニターの画像が消えていく。頭部を握りつぶそうとしているのだろう。このままでは確実に殺られる。そう思ったレイズンは近距離からアサルトビームランチャーを発射しようとしたその時。
〔ガゴン・・・・・・ガゴン・・・・・〕アサルトビームランチャーをフォルテが殴り、破壊しようとしている。構わず発射しようとしたが、完全に破壊され、使用できない。大きく機体が揺らぎ、投げ飛ばされた。完全にシステムが機能しなくなり、動けない。そこに、新型機の援護が現れた。一年戦争時に使用されていたMS。『リック・ドムU』の後継機。『リック・ドムV(トロワ)』である。リック・ドムVのビームバズーカがフォルテを狙う。ビームを回避し、メガビームガトリングガンを発射した。装甲が厚いだけあって大したダメージは与えられていないが、ひるませる事ぐらいは出来た。
『パイロット死亡の危険性あり。帰艦します。』フォルテはシンフォニアに向かって後退した。その後。リック・ドムVにユニゾンガンダムは回収された。

 「ディン!!」意識は失っているものの、身体に異常は無かった。極端に疲労したために起きた現象だそうだ。だが、実際にはビームの熱で装甲が過熱し、死亡率が極めて高い温度まで上昇していたのだ。そんな中で2分以上も戦闘を続けていたのだ。あの時。ビームシールドを展開していなかったら間違いなく死んでいた。
 
  シンフォニア第一ブリッジ――エリュシオンブロック。 
「地球へ・・・ですか?」
『そうだ。』本部との通信で地球へと向かう事が決定した。しかし、木星からでは離れすぎている。しかし、本部の決定には従わなくてはならない。それに、途中には第二次ネオ・ジオン紛争時に破壊された小惑星アクシズを修復した新しいアクシズに滞在しているネオ・ジオン残党から補給を受けることができる。

 『ディン=アルスター中尉。ニュータイプの可能性100%。XEPHONシステム。ニュータイプサポートシステム同時進行。サポートシステム登録名称・・・・アムロ=レイ。』

                          第一部fin

ファントム軍専用MS
リック・ドムV(トロワ) 形式番号MS―09RV
             全長17,6m 重量45,7t
             ジェネレーター出力8700kw
             スラスター推力16000kg×6 5600kg×10
             武装 ヒートサーベル ビームバズーカ 腹部メガ粒子砲
 説明 一年戦争で使用されていたMS『リック・ドムU』の後継機。以前までの機体と違い、地上でも使用できるのが売りの新型機。プロペラントタンクを4基装備。長時間戦闘ができるようになっている。

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