第20話 白い閃光
おまえには絶対に勝たせない!例え、オレが負けたとしても!」
マインが言い放つ。
それは、例え相討ちになってもゼラを殺す、という意味であった。
「ほざけ!決まっている未来だ!」
ゼラがマインを弾き、ライフルを乱射する。
マインとヴァンが回避しつつ反撃する。
「自惚れてんじゃねえっ!!」
マインが240mmキャノンを撃つ。
それがゼラの右手のビームライフルに直撃し、ゼラがそれを手放す。
左手のライフルにもヴァンの放ったビームが直撃し、同じように手放すゼラ。
破壊されたビームライフルの代わりにショットガンを両手に1つずつ装備し、ヴァンに向けて放つ。
広範囲に弾が拡散し、ヴァンの増加装甲を削っていく。
ケンプファーがバックパックのチェーンマインを取り出し、ヴァンに接近する。
ショットガンでヴァンに牽制し、一気に接近した。
チェーンマインが鞭のようにしなり、ヴァンに襲い掛かる。
「・・・・っ!!」
ヴァンが歯をくいしばる。
その目の前にMSが割り込む。
それはシエルであった。
シエルのガンダム改がヴァンを横に突き飛ばす。
そこにチェーンマインが巻き付き、爆発する。
「ヴァン・・・ごめんね・・・」
「シエルーっ!!」
ヴァンが絶叫する。
そのディスプレイにはガンダム改が爆発する姿が映っていた。
「うあああああああああっ!!」
ゼラに急接近し、サーベルで斬りつけるヴァン。
サーベルで受けるゼラにがむしゃらに斬りつけるヴァン。
マインがそこに援護射撃を加える。
マインが放ったビームがケンプファーの左足を貫く。
「っ!?ヴァンに当てずにっ!?」
ゼラが呻く。
味方が接近戦をしているところに、その味方に当てずに敵にあてるのは至難の技である。
ケンプファーが急にヴァンの頭上方向に跳び、そのままヴァンの背後に回る。
それを察知し、振り向きながら前方にステップしライフルをゼラに向ける。
ヴァンがビームライフルのトリガーを引くより早く、ゼラのショットガンが火を吹く。
それがヴァンのビームライフルに命中し、爆発する。
そこに追撃でさらにショットガンが放たれる。
左腕の240mmキャノンの付け根の部分にあるマガジンに命中し、増加装甲と240mmキャノンが吹き飛ぶ。
ゼラの後方から240mmキャノンを撃ってくるマインを尻目にヴァンに急接近し、サーベルで斬りつける。
回避運動を取るが、1歩遅く、右腕が切断された。
さらに、回避したところへショットガンを放つ。
左腿に直撃し、吹き飛ぶ。
「うぐぁっ!!」
その衝撃で、ヘルメットをどこかにぶつけ、バイザーが割れ、額から血が流れ出る。
そこへゼラが突っ込んでくる。
とっさに操縦桿を引き、後ろにステップするがボディにサーベルが少し当たり、ヴァンの機体に激しい衝撃が走る。
ボディに斜めの筋がつき、コクピット内では、ディスプレイが割れ、コクピットフレームが破損しヴァンの左肩にぶつかり、機体もパイロットもボロボロであった。
「ヴァーーーン!!」
マインが叫ぶ。
ヴァンがかろうじて生きていることを感じ、ゼラに向き直るマイン。
「戦えるのはキサマだけだ・・・どうする?」
ケンプファーが斬りかかる。
マインがサーベルで受ける。

「あれは!?」
艦長のザスィルが前方の戦闘を見て呟いた。
その戦闘は通常の戦闘に比べて、激しかった。
「モニターを拡大!」
艦長が言うと、すぐにその部分が拡大され、映し出される。
「マイン!!ヴァン!!」
ルーンが驚く。
マイン達はゼラと戦っているうちに戦艦の近くまで来ていた。
見たところマインがケンプファーに押されている。
「援護だっ!!黒いMSに残りのミサイルを撃てっ!!」
艦長が叫ぶ。
7発のミサイルが放たれ、ケンプファーに向かっていく。
「ミサイルっ!?」
ゼラがショットガンでミサイルを撃ち落していく。
ミサイルの爆発がゼラの視界を埋め尽くす。
その中からマインが飛び出し、ゼラに急接近し、叩きつけるようにサーベルで斬りつける。
それを横にスッテプして回避するゼラ。
操縦桿を引き、背後に回ろうとするゼラを振り払うようにサーベルを横に振りながら機体を回転させるマイン。
それを回避し、右手のショットガンをマインに向けるゼラ。
頭上方向へ回避するマイン。
その回避先へ左手のショットガンで攻撃するゼラ。
それを右手で防御するマイン。
右手の240mmキャノンと増加装甲が吹き飛ぶ。
そこへショットガンで追い撃ちをかけるゼラ。
ショットガンのトリガーが引かれるのと同時にマインとゼラの間にミサイルが飛び込む。
ゼラの放ったショットガンがミサイルに当たり、爆発する。
その爆発で、散った他の弾も消滅し、ゼラの視界を遮り、マインにとってバリアとなった。
「ちっ・・・」
舌打ちをし、ミサイルの飛んできた方向に目を向けるゼラ。
その視線の先にあるのはマイン達の母艦であった。
「邪魔しやがって・・・・!!」
ゼラがその方向に急接近する。
「あれは・・・!!まずいっ!!」
マインがそれに気づき、ゼラを追う。

「・・うっ・・・」
ヴァンはコクピットの中で呻き声を漏らした。
気絶していたようだ。
ディスプレイを見ると、ところどころ割れたり、ひびやノイズが入り、映りが悪いが機能はしている。
左肩の痛みを堪えつつ、操縦桿を握り締め、動かす。
だが、反応がない。
「・・動かない!?」
回線がどこかで切れているのか、さっきやられたときのショックで接続不良を起こしているらしい。
ディスプレイにはマインがゼラを追って戦艦に向かっていくのが見えた。

ゼラが戦艦の目の前まで接近し、ブリッジの正面に出て、ショットガンを構える。
「しまった!!」
艦長が呻く。
「ああ・・!!」
恐怖感がルーンを黙らせる。
「やめろぉぉぉおおおおっ!!」
マインがゼラにタックルを仕掛ける。
それを回避し、ゼラが呟く。
「これでキサマの仲間は全て消える!」
ショットガンの銃口はブリッジに向いていた。
「マイン・・・」
ルーンが呟いた。
ショットガンが火を吹き、ブリッジが爆発する。
「ルーーーーーーーーン!!」
マインが絶叫する。
その声はヴァンにも届いていた。
「戦艦が・・・」
ゼラだけは笑みを浮かべていた。
「ゼラっ・・・キサマァァァ!!!」
マインがゼラに突撃する。
ゼラがマインのサーベル攻撃を全て受けながら言う。
「キサマも死ぬがいい!!」
ゼラがマインを弾く。
「そのときはキサマも道連れだ!!ゼラ!!」
マインの声には明らかに怒りが混じっていた。
「くそっ!!動けよっ!!動けっ!!」
ヴァンが操縦桿をがむしゃらに動かす。
回線が切れていれば動く見込みはないが、接続不良を起こしているのならば、これで動くようになることもある。
と、接続不良が解消されたためか、機能が回復し、少し機体が動いた。
「動いた・・!!」
目の前に漂っていたシエル機のビームライフルを残っていた左手で掴む。
「ヴァン・・・」
マインが通信をしてきた。
「マイン・・?」
「ゼラに突っ込む・・・仕留め損なったら、頼む。」
ヴァンはマインが死ぬ気であるということが判った。
普通に戦って、ゼラには勝てない。
それは、自分がやられず、相手を倒そうとする分、回避にも気を使わなければならない。
死ぬ気なら、避けることは考えなくてもいい。
「・・・解った。」
普通ならここで止めるのだろうが、ヴァンは止めなかった。
マインの気持ちが良く解ったからである。
「ありがとう、ヴァン・・・」
「親友だろ・・・マイン。」
「ああ。」
マインの目から涙が溢れる。
ヴァンも同じだった。
マインがサーベルを2本持ち、ゼラに突っ込んでいく。
ゼラが右手にサーベルを持ち、左手のショットガンを撃つ。
「何っ!?避けないっ!?」
右頬と左肩に当たり、装甲が吹き飛ぶ。
「うああああああああああっ!!!!」
マインが叫ぶ。
そして、マインとゼラがぶつかる。
ケンプファーのサーベルはハイガンダムのコクピットを貫いていた。
ハイガンダムはケンプファーのボディに2本のサーベルを突き刺していた。
爆発する2つのMS。
ヴァンは滲む視界の中、その爆発を見つめていた。

・・・戦争は終わり、マインは閃光となって散った。
ヴァンは、漂っていたところを他の部隊の戦艦に拾われ、助かった。
機能が停止していなかったのが幸いだった。
その後、ヴァンは軍を辞め、コロニーに移り住んだ。
「生き残ったのはオレ一人。他に残ったものは何も無い。強いて言えば、思い出か・・・」
写真を見ながら1人呟き、悲しげな笑みを浮かべるヴァン。
2人が出会って、親友になったころ、撮った写真である。
そこには、肩を組み、笑っているマインとヴァンが写っていた。
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