第２０話　白い閃光

「おまえの言う未来、変えてみせる！未来なんて決まっちゃいないんだ！」
マインが言い放つ。
「ならこの状況はどうする？３人がかりでもオレに攻撃を当てられていないじゃないか。」
ゼラが言葉を返す。
「これから当てればいい！そうだろう？マイン！」
ヴァンである。
「そうさ！もう、おまえの思い通りにはさせない！ゼラっ！」
激しくサーベルをぶつけ合う。
そこにヴァンがライフルを撃つ。
「っ！？ばかな！？マインがいるんだぞ！？」
普通なら味方が接近攻撃をしているときに味方の後方から射撃で援護するというのは、味方にも当たる危険性があるため、しないものである。
ヴァンの放ったビームはマインの機体の右腕の肘の下すれすれを通過し、ゼラのケンプファーの左腕の表面の装甲を少し溶かした。
ゼラは左腕への直撃は防いだが、かすったために装甲を少し溶かされた。
もともと装甲が最低限しかないケンプファーではかすっただけでその部分の装甲がはがれた。
『ヴァンならオレに当たるようには撃たない！』
『マインならオレの援護を最大限に活かしてくれる！』
ゼラには２人の思いが読めた。
「こしゃくなっ！！」
ゼラがライフルを乱射する。
マインとヴァンが回避しながら反撃する。
マインが右腕の２４０ｍｍキャノンを発射する。
その２４０ｍｍキャノンの弾に当たるようにビームを放つヴァン。
ゼラの目の前で２人の攻撃が交差し、２４０ｍｍキャノンの弾が爆発する。
「ふっ・・・おまえらの動きぐらい読めるってことを忘れたのか？」
そう言い、マイン達の動きを読もうとするゼラ。
後ろから来る、そう読み取り、その方向を向くゼラ。
そこには突っ込んでくるマインとヴァンがいた。
マインが加速する。
ヴァンが援護のビームを放つ。
「何っ！？体当たりっ！？」
ゼラが呟く。
マインが背中のブースターをゼラにぶつける。
背中でタックルをする、といった感じであった。
激しい衝撃に耐えるマインとゼラ。
ヴァンがそこにビームを放つ。
マインがブースターを切り離し、ブーストをかけてゼラから離れる。
ただでさえ薄い装甲のケンプファーのなかにいるゼラへの衝撃はマインより大きかった。
目の前で切り離されたブースターに気づくのが遅れた。
いや、気づくのに遅れた、というより衝撃のせいで反応が遅れたと言う方が正しい。
衝撃が少なくなるとすぐにゼラが横にステップした。
ヴァンの攻撃に気づいたのである。
ヴァンの放ったビームはマインがゼラにぶつけたブースターを貫通し、爆発を起こした。
ゼラは一瞬反応が遅れたために、その爆発に巻き込まれ、ケンプファーの左腕と左足が消滅した。
「一気に行くぞ！ヴァン！」
「おう！」
マインがサーベルを持って突っ込む。
「キサマらごときにっ！！」
ゼラがライフルを乱射する。
目の前に迫ってくるマインではなく、その後方にいるヴァンに。
「なっ・・！？」
ヴァンの機体に何発か直撃し、増加装甲が破壊される。
さらに増加装甲がはがれたところにも直撃し、右腕、右脇腹、右膝から下、頭部が吹きとんだ。
「うあああああっ！！」
直撃の振動がコクピットに伝わる。
ヘルメットのバイザーをどこかにぶつけ、ひびが入った。
右脇腹にあたったため、コクピットのフレームの一部が変形して吹き飛び、ヴァンの右肩に直撃した。
「ぐっ！！」
ヴァンの右肩に激痛が走る、出血したようだ。
「ヴァンっ！！」
マインが叫ぶ。
ゼラが動くのを感じ、その方向を見る。
ゼラがマインにライフルを向けている。
マインへビームが飛んでくる。
１発１発が的確にマインの回避先へと向かってくる。
ボディと両足の増加装甲にあたり、はがれる。
そして、ゼラが急接近し、サーベルでマインの機体の左肩から左足を切断する。
「あぐっ！！」
凄まじい衝撃が走り、ヘルメットのバイザーが割れ、額から血が流れ出す。
左肩に曲がったコクピットフレームの破片がぶつかり、激痛が走る。
「安心しろ・・マイン。キサマを殺した後で、おまえの仲間も後を追わせてやる。そういう未来なんだよ。」
マインのコクピットにゼラの声が聞こえる。
「死ねぇっ！！マインっ！！」
ゼラが叫ぶ。
「・・・・・・・っ！！」
「何！？」
ゼラは速度を緩めずに、小さく言ったマインの言葉が聞き取れず言い返した。
「おまえに・・・未来を決める権利はないっ！！！」
マインの機体が急に接近し、ゼラとすれちがう。
ケンプファーの右足が切断され、爆発する。
直前に上方向に回避しようとしたため足にサーベルが当たったのであった。
「くっ・・・」
ゼラがチェーンマインを取り出し、投げつける。
横からのビームでチェーンマインが爆発する。
ヴァンのライフルだった。
左手のライフルをサーベルに持ち替え、ゼラに向かってブーストをかけた。
それと同時に、マインもゼラに向かってブーストをかけていた。
「っ！！」
ゼラがライフルをヴァンに向ける。
ヴァンが背中のブースターを切り離し、ゼラへと飛ばす。
ゼラがライフルでそれを撃破する。
爆発でゼラの目の前が白く輝く。
「これで！！」「終わりだ！！」
ヴァンとマインが交互に叫んだ。
マインとヴァンが同時にケンプファーのボディを突き刺す。
コクピットの少し上、胸の辺りをやや右からマインが、やや左からはヴァンがサーベルを突き刺していた。
「ば・・ばか・な・・・」
ゼラが呟く。
ケンプファーが爆発し、ゼラは消滅した。

「勝ったか・・・」
艦長が戦闘の終わりの連絡を受け、呟いた。
「味方機、帰艦してきます！」
ルーンがレーダーと、外とを交互に見て言った。
どれも、激戦をしたようで、五体満足の機体はほとんど無い。
五体満足でも、表面や内部がボロボロになっていた。
無傷の機体は見当たらない。
「・・・マイン達は？」
艦長がルーンに訊いた。
「・・・まだみたいです・・」
首を振って答えるルーン。
そして、ふと外を見る。
３機のＭＳが、こちらに向かって流れてきた。
移動と言うほどのスピードは無く、最初にバーニアで移動し、その推進力で流れてきた、という感じだった。
「あ・・・！」
ルーンがそれを見て声を漏らした。
「迎えにいったらどうだ？」
艦長がルーンに言った。
「はい！」
オペレーター用のヘッドセットを取って、ブリッジを飛び出すルーン。
ちょうど、マイン、ヴァン、シエルの３人も格納庫へと着いていた。
「生きてるよな？シエル・・・」
「死んでるようには見えないと思うけど？」
コクピットから出て、ヴァンが言い、シエルが応えた。
「これからどうする？オレは軍を辞めようと思ってるけど。その後。」
「そうね・・・とりあえず、軍を辞めて、２人で考えましょう。」
シエルが微笑んだ。
「そうだな。」
ヴァンも笑い返す。
コクピットハッチを開けて出てくるマイン。
ヘルメットを取るマイン。
「マイン！！」
「ルーン！！」
ルーンが飛びついてくる。
「よかった・・・ちゃんと帰ってきてくれた・・・」
いまにも泣き出しそうである。
「出撃前、言ったろ？＜帰ってくる＞って・・・」
マインがルーンを抱きしめる。
「終わったんだろ？戦争。」
「ええ。」
「オレ、軍を辞めようと思ってるんだ。・・ルーン・・」
「私も辞める。マイン、一緒にいてもいいよね？」
「ああ、ずっと一緒にいてくれ。」
もう一度強く抱きしめあう。
マインの左肩の痛みはその時はあまり気にならなかった。

白き閃光、マインは密かにそう呼ばれていた。
それはマインの部隊の中でではない。
黒い幻影と呼ばれたゼラと何度も戦い、追い払ってきた白いＭＳのパイロット、その噂が白き閃光などという異名を生み出した。
マイン自身は自分に異名があることを知らない。
それがマイン達に伝わる前に軍を辞め、ルーンと共にどこかのコロニーへと渡った。
その親友、白い疾風、ヴァンもシエルと共に軍を辞め、マイン達の行ったコロニーで生活することに決めた。
後に一年戦争と呼ばれる戦争が終わった。
そして、マイン達の戦争も。

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