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 ワイルド・レンジ 最後の銃撃 Open Range 140min.
監督 ケヴィン・コスナー
制作 ケヴィン・コスナー、ジェイク・エバーツ、デヴィッド・バルデス
脚本 クレイグ・ストーパー
出演 ケヴィン・コスナー、ロバート・デュバル、アネット・ベニング
    マイケル・ガンボン、マイケル・ジェッター、ディエゴ・ルナ、ジェームズ・ルッソ

最近のケヴィン・コスナーは忘れられたスターとして、博物館に飾られるべき存在かもしれない。
そんなコスナーの、これは崖っぷちの作品といえるかどうか。
監督としても、前作「ポストマン」で巨大な疑問符が投げかけられた。
あの「ダンス・ウィズ・ウルヴス」を作った監督とは思えない酷い出来だったので、
多くの人が「ダンス〜」は彼の業績でなく才能あるスタッフの手によるものと考えた。
「ポストマン」には、ナルチシズムと独善と幼さの気配がたちこめている。
素人っぽく、あどけない、産毛の生えた熱狂主義に支配されている。
そこが可愛いといえばいえるが、少なくとも大人の鑑賞に耐える映画ではなかった。

「ワイルド・レンジ」は、コスナーの違った側面を見せてくれる。
あれほど幼稚な熱弁を「ポストマン」でふるってみせたコスナーが、ここでは寡黙に徹しているではないか。
「ダンス〜」の路線に戻ったのだろうか?
それとも、これが本来の姿なのか・・・
筆者は、この映画は同じ道を歩んでいるクリント・イーストウッドの影響があると考える。
「僕も『許されざる者』みたいな作品を作っちゃおう」
と、コスナーは考えたには違いない。
筋立てが第一、そっくりだ。
「許されざる者2」としても、別におかしくはない。
昔のアウトローの道を捨て、地道に生きようとしているカウボーイが、
悪者に邪魔され、ついに堪忍袋を緒を切らして立ち上がるという部分。
まぁ西部劇にはありがちな話なので、決めつけるわけにもいかないが、
悪徳牧場主に、悪徳保安官と、出てくる人物像も似ていて、つい邪推してしまった。

ただ違っているのは、ロバート・デュバル演ずる筋金入りカウボーイ(コスナーの師匠)と、アネット・ベニング演ずる町の女性。
この二人の配置によって、随分と変化に富んだなりゆきになっている。
定番が定番でなくなる瞬間は、常にこの二人が絡んでいる。
状況設定などはありがちなのに、終始新鮮に観れるのは、三人が絡み合うシーンが、
素晴らしく自然に描かれているから。
エピソードのひとつひとつが、マニュアル通りでなく、ナマの声で語られる。
その点が、一番、感心しました。
特にデュバルは、助演かくあるべしの見本のような演技を披露してくれる。
ほんとに素晴らしい助演は、主演を食ってしまうのでなく、
主演を立てつつ結果として自分も立ってるスタイルだと思う。
例えば、エドワード・ノートンなんか、確かに巧いが、なまっちょろい主演男優の下で助演をやると、主演を食ってしまう。(マット・デーモンとか・・・)
ゲイリー・オールドマンなんかもそうだ。
コスナーは決して巧い男優ではない。
時々でぐの棒に見える時があり、無表情の「無」の部分に感情が宿らない。
いかにもヒーローな外観は銃撃戦なんかで弾けるが、普段なにもしてない時は精彩がない。
ロマンス演技も、にやけてるだけで、下手だと思う。
そんなぱっとしない瞬間のコスナーを、デュバルやアネット・ベニングが立てている。
ロマンス下手なコスナーが、ベニングを前にすると生き生きしてくる。
日常のなにもないシーンで、デュバルがそばにいると、それだけでドラマチックになる。
そういう意味で、助演の真の価値を改めて感じさせてくれた。

監督としてのケヴィン・コスナーも地に足がついてて、なかなか。
誇張や変な熱狂主義はまったくと言っていいほど見られず、リアルに徹している。
ヒーローは絶対弾に当たらない、緊張感なしの銃撃戦もここにはない。
なぜ当たらないかの戦術を臨場感豊かに描いていく。
この映画のラストの銃撃戦は、数ある西部劇のなかでも白眉、
至近距離で撃ち合うシーンなんか、観ていてはらはらさせられた。

カウボーイたちの現実の生活感をベースにしていて、嘘が感じられない。
いわゆるヒーローものではなく、クールなガンプレーだけが売りでもないが、
渋くて大人の鑑賞に耐える作品だ。




☆☆☆☆



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