狂気か正義か(2002年9月9日)
イラクのフセイン大統領に対して「ザリガニ野郎!」と罵ってまで敵意を露
にするブッシュ大統領だが、現時点での主な発言は以下の通りである。
@イラクは国連決議に従わない。
A大量破壊兵器の開発や生産をして居り、生物化学兵器も所持する。
B半年後には核兵器を開発するだろう。
9月8日の報道で英国のブレアー首相は、「我々(英米)の持っている情報
が公開されれば世界中が驚くだろう。早急なイラク爆撃が必要だ。」と述べた。
今のところドイツ・フランス・ロシア等は攻撃に慎重、或いは反対をして居る。
英米の持っている情報がどの様なものか、一般には何処まで公表されるのか。
一般市民は各国政府の対応から判断するしかないが、ここでは報道等で公表さ
れたものの中から検証したい。
情報公開と言っても国家機密に縛られた中で、関係国に対してどの程度まで
其れが為されるのかは疑問だ。何にせよ米英、特に米国は是までの行状が悪過
ぎて、信頼の得難い国家と成って仕舞っている。上記での@にしても、米国自
身が履行しているのか?中東問題でイスラエルの決議不履行を黙認しているの
はどの国か?AやBに関して危険な国が是を持てば「気違いに刃物」と言える。
果たしイラクが米国の主張通りの「悪の枢軸」ならば。
彼我の立場を代えて見た場合はどうか?核実験は強国の特権化したし、保有
も使用も米国を始めとした強国の思うが侭だ。核を持てない国の代替手段とし
て、禁断の生物化学兵器がある。核も生物化学兵器も米国は存分に手にして来
た後に、他国にはその所有も開発も許さないのは身勝手と云う観方も出来る。
これらの拡散や安易な使用を防ぐ為、話し合いで新たに開発・所持する国を無
くす目的で種々の条約が出来た。条約を批准しない国が在れば各種の圧力や不
利益を被り、場合によっては米国から爆撃すら受けるかも知れない。
世界平和の為に核や非人道的な兵器の開発や拡散を防ぎ、既保有国はそれら
の不使用や削減に努力する。米国は国連の下に各国の模範と成り、外交力と軍
事力を正義の為に行使して、世界平和に尽くす「世界の警察官」である。この
様な理念を表で謳いながら、今までに米英はテロをした事が無いのか。
飽くまでも米国の基準で善悪を決め付け、国連無視の爆撃も一度ならず行って
来たのが米国などではないのか。生物学兵器や核は確かに問題なのに其れでも
尚、米英に同調する声が小さいのは過去に行われ、今もあるだろう米国の陰謀
と不誠実が最大原因だ。
ドイツは軍事行動には参加しないと表明、フランスは国連決議無しのイラク
攻撃に反対で、基本的にドイツに同調すると述べた。また、イラクに対しては
国連の核査察を無条件で受け入れる事が必要だとも述べている。イラクに対し
て査察受け入れを求める声は各国にあり、米英の目論むイラク攻撃を回避する
のに最も有効な決断だ。しかし是には「査察団の中にスパイが居る」との疑惑
や、イラクのプライドにも関わる問題だけに難しい面もあるだろう。仮に米英
の言う通り、査察や攻撃を取り止めた結果で核の恐怖が現実化しても、その責
を慎重派に帰すのは無理がある。第一義的に、信頼を失う様な事を積み重ねて
来た、米国の歴代政権と容認或いは黙認して来た米国民の責任でもある。
米兵が死なない戦争
昨年からのアフガン戦争で巻き添えになって死んだ一般市民は3,800名
前後と言われる一方で、「死んだ」米兵は僅か36名だとの報道(9月8日T
BSテレビ)がある。北部同盟の「活用」に加えて、空爆や無人偵察機等の最
新鋭兵器の成果だそうだ。米兵の死者の大半はミスや事故によるもので、戦闘
の結果で死ぬ者は少なかったと言う。自軍の損害を防ぐのは当然だが、その代
わりに、アフガン市民の犠牲や誤爆は「全てゲリラとそれを庇う者の責任」と
は、何とも義の無い米国の身勝手さを如実に表すものだ。