常識の通らぬ北鮮 2002年10月29日

 本29日はクアラルンプールで日朝国交正常化交渉の初日、開始に先立って
日本側は「拉致問題の解明と核問題が重点項目」と宣言した。対する北鮮側は
昨日の取材で漏らしていた様に、「拉致問題はほぼ片付いた。核問題は話題で
は無い。」と表明した。また、「日本は約束を破って、一時帰国中の五人が北
鮮へ戻さない」と非難している。更に、「被害者の子供達の(日本への)帰国
に関しては、本人達の希望があれば日本へ帰国させる」としている。


@拉致問題が片付いていないのは自明、当然日本はこれを否定した。会談の冒
頭で北鮮が、「これまでは相互に見解の相違があったが、話し合いで解決出来
るだろう」とはぐらかした。核問題は朝米間の問題と退けたが、日本側は「拉
致と核を片付けねば経済援助に進めぬと」抵抗するだろう。


A一時帰国者五人の再入国(北鮮へ)の約束とは本末転倒な事、日本は「本質
を考えろ」と撥ね付けた。これも自明で議論の余地無きところだ。しかし日本
国内でも認識の薄い点に、北鮮に於ける「人質」がある。今回判明の被害者及
びその家族、未確定の拉致被害者と「日本人妻」はれっきとした人質である。

 他には南鮮の拉致問題もあり、これも北鮮に取っては人質だ。この辺を忘れ
ているかの日本国内での雰囲気が気掛かりだ。そして、北鮮からすれば自国民
(北鮮人)も人質である事は、過去の米(こめ)支援でも明確なのだが、この
理解が出来ているのか?米支援が無いから、経済援助が無いから、飢える民が
いる。国民の困窮は日本の所為だとの論法は必ず出て来る。
これに負け続けて来たのが過去の日本外交だ。我が国は米支援等を避けられま
いが、どの様にするのかが問題だ。単純に必要無しとするのは、一切の外交の
要無しとする意見と同様の稚拙な意見だ。


B気持ちの揺れる帰国者の中で、特に曽我ひとみさんの扱いが微妙だ。本人も
「他の人とは違うのだから、一緒くたの対応は困る」と言う様に、別の対応が
必要だろう。曽我さんの場合は北鮮に残る家族全員が拉致の事実を知っている
事と、夫の元米兵ジェンキンスさんが逃亡兵と言われる事だ。

 来日は仮令米国が免責しても、思想的に難しいのではないか。その場合に曽
我さんの訪朝を認めないと、北鮮有利の新たな人権問題と成るばかりで無く、
日本が家族を引き裂いた形に成る。政府は高度の判断を迫られている。万一に
曽我さんが訪朝する場合は、外務省の役人が付き添う程度の支援が考えられる
が、日本政府にその様な外交手腕があるのか疑問だ。