祖国でも管理される五人 2002年11月8日
副題「賭けに出た政府と拉致被害者達」

 昨日と本日で政府と拉致被害者達の方針化決定した様だ。@被害者五人が北
鮮へ帰国する事は絶対に認めない。A北鮮残留家族との面会は日本国内に限り、
第三国での面会は絶対にしない。B要求貫徹の為には長期化も辞さず、その為
に残留家族の来日(再会)が遅れるのも覚悟の上。との事。

 この決定は拉致被害者五人の総意であり、本人の達の口から直接出たものと
云う。勿論、政府の決断でもある。数日前から安倍・官房副長官と中山・内閣
官房参与が致被害の許を訪れて、本人や家族や「関係者」等と合議して決まっ
た。背景には「家族会」や「救う会」の意向もあろうから、その意味でも「総
意」と云う事なのだろう。これ等が全て実現すれば日本外交の大成果で、歪な
体質から脱する好機と成る。従来の弱腰外交からすれば大きな転換と言える。

 但しこれが賭けでもある事は確かだ。小頁で繰り返す様に五人が皆、同じ条
件下に在る訳ではない事。@横田夫妻がヘギョンさんの訪日のみで無く、引き
取りを希望している場合は厄介だ。A曽我ひとみさんの夫であるジェンキンス
さんが移住はおろか、「全く本人の意思で」一時的な訪日にも応じない可能性
が高い。B残留する子供達の自由意思が不明。Cこれは殆ど考え難いが、若し
も北鮮が日本を納得させる為に、本人達(残留家族)の意思に逆らって日本へ
送り込んだ場合は新たな人権問題に成る。

 @の問題は実現の可能性は殆ど考えられない。政略結婚と観られる夫と後妻、
3歳の弟の訪日は有り得ない。ではヘギョンさん単独での訪日はと云うと、日
本に定住して仕舞う恐れが大だから、北鮮が認めるものではない。訪日すれば
横田夫妻は、如何にかしても手元に置く積もりだろう。万一そうなった場合、
北鮮の家族を引き裂いた「これも拉致の類い」とされて仕舞う。日本国内でも
世論が厳しく批判する筈だ。第三国での面会ならば、僅少な可能性ではないか。

 真面目に考えているのか疑って仕舞うのがAの事例だ。8日の日米協議でも
ジェンキンスさんの扱いが不明な侭だ。報道では米国の感触が二転三転してい
るが、憶測で報道をしている訳でも無かろうに。仮に本人が訪日を希望したと
しても北鮮が許さないし、日本での報道を其の侭見せるだけでも訪日する気が
失せて終う。第三国での面会も考慮しないと政府が決断したが、如何して其
処まで言い切れるのか。選択の余地無しとするならば、曽我ひとみさん家族が
分断される可能性は少なからずだ。政府、救う会、家族会は責任を取れるのか。

 これまで政府や関係者は「相手は犯罪者、正義は我にあり」で遣って来た。
監視員の隔離と接触の排除、声高に非を責める外交、死亡とされた人達の更な
る詳細と、生兵法であっても此所までは良く遣ったと思う。しかし、残留家族
の訪日と面会は違う。如何に被害者(国)でも、「善意の第三者」を強制出来
まい。横田夫妻の願いは兎も角、曽我ひとみさんを分断家族にする危険は許さ
れない。全て思い通りに運ぶ訳が無いのだから、曽我さんの場合は選択肢に幅
を持たせるべきだろう。それを公にせずに秘策として置くならば、この記事は
続報を書くと共に批判は取り下げるが。