楽観的な家族会や救う会の期待とは裏腹に、日朝交渉とジェンキンス問題が
難航している。平沢代議士の弁によれば北鮮との約束は事実らしく、北鮮は此
所を先途と、五人の帰国を交渉再開の道具としている。何とも阿房な約束とも
思われるが、それが無ければ五人の帰還が難航したのかも知れない。何かと問
題のある外務省故に、苦肉の策も疑いの目で見られる事に成る。決定的と思え
るのはジェンキンス問題だ。
27日の会見でラムズフェルド米国防長官は、日本テレビの質問に「ジェン
キンスの訴追は免れず、来日すれば身柄引き渡し等を要求する」との厳しい考
えを示した。外交通は一様に悲観的見通しで一致しており、「結果的に放免し
ても、建て前として拘留・訴追は十分にある」と見ている。ジェンキンスさん
は北鮮のプロパガンダ映画にも出ており、敵前逃亡よりも重い国家反逆罪に問
われる可能性もあると言う。ジェンキンスさんの目論む時効にしても、国外逃
亡では時効は停止されて「40年の時効」は無い。一連の報道は北鮮には格好
の説得材料でもあり、ジェンキンス一家の来日は限り無く困難だ。
福田官房長官は「公表出来ないが色々遣っている。」と語り、上京中の曽我
さんは、福田等の政府関係者等に要望した。曽我さんは米大使に直訴する積も
りだったが、米国の感情を損ねるとの忠告で断念した。たとえ来日してもお咎
め無しとされても、米国の聴取は避けられない現状での来日は有り得ないだろ
う。曽我さんは再び北鮮に帰るのではないだろうか。北鮮に住むジェンキンス
さん一家が、本心から来日を望んでいない可能性も否定出来ないだろう。仮令
それが「洗脳」であったにせよ。
ヘギョンさんの事例でも、日本側は引き取りや訪朝しての聞き取り、更には
一家のDNA検査も主張する。これ等を日本側が強く要求すれば、逆に人権問
題とされて仕舞う。日本側関係者の観測は正しいのか。拉致問題関係者やワイ
ドショーの出演者達は随分と安易に考えている様だ。
庶民感情としてはイラク問題や北鮮外交で、日本に押し付けられた負担を考
えれば、40年程前の事などはお釣りが来ると考えたいだろう。しかし米国に
言わせれば、アフガンやイラク問題での支援は日本の為すべき当然の義務とし
か考えていない。北鮮問題は日本の安全保障に関わる、自身の問題だから日本
の国益問題として恩を着せこそすれ、協力したなどとは思っていない。却って
ジェンキンスさんの処遇と引き換えに、更なる要求が用意されていても不思議
ではない。
南北問題の元凶は日本だとの見方もあるが、米・英・支・ソの関与は大き過
ぎる。朝鮮半島の問題は内政の延長でもあり、元々は内戦なのだから、韓国が
先頭に立って遣っても良い筈だ。これを拗れさせたのが、米・英・支・ソの野
望と干渉ではないか。単に仮想敵国とか地政学的な見地から、協力義務を言わ
れるのも可笑しい。ジェンキンス問題で大幅な譲歩を見せねば、日本も強かな
外交をする覚悟はないのか。