家族会や救う会に何等の批判も出来ず、安倍・官房副長官等を持ち上げるだ
けのテレビ報道にも、漸く正常な批判が見られる様に成った。12月25日の
テレビ朝日に横田夫妻が出演して、ゲストの山本晋也監督やテレビ朝日の川村
晃司などに心情を語った。先の訪朝希望を家族会の「説得」で翻意、来年初頭
の総会に諮るとした横田滋さんは穏やかな口調で、訪朝は決して我侭では無い
と訴えた。山本監督は踏み込んだ内容では無いものの、「家族会が個人の領域
に立ち入り過ぎる」「蓮池透発言は心を傷付ける」と批判した。
確かに24日の会見での蓮池透発言には、年長者や目上(会長)に対して無
礼なものだった。「軽軽に訪朝・・・」は無礼と言うよりは増長、「ヘギョン
さんはめぐみちゃんでは無い」がそうだ。息子の様な年齢の蓮池透から「軽軽
に」あしらわれ、憮然とした表情に成ったのは当然だろう。横田滋さんの話で
は表立ったでは無いものの、訪朝を支持する声は少なからずと言う。早紀江さ
んは訪朝には慎重な立場で多くは語らないが、苦悩の滲む表情が憐憫を誘わせ
た。
また、家族会事務局次長の増元照明さんは、「先の質問(150項目の質問
その他)にも答えが無い状況での訪朝は反対だ。」との意見だ。これも建前論
だが、鳥越俊太郎が言う様に「それでは何時に成ったら行けるのか。10年そ
れ以上の長期に渡る可能性もある。」との意見を説得出来ない。増元照明さん
は「現状での訪朝は危険」とも言うが、政府の保護の下で最終的には横田滋さ
んが納得ずくで行っても良いではないか。
横田滋さんは闇雲に訪朝を希望して居らず、立会人や条件に付いて考えた上
での希望だ。出席者達の疑問を纏めると、「拉致問題が全て解決してないと、
家族会は訪朝を許さぬのか」「個々の事情を考慮するべきで、一律な対応は間
違い」「人の心に立ち入り過ぎ」等々の正論が出た。訪朝に反対或いは慎重を
期す意見を総合してみたい。
@行けば横田滋さんが拉致される危険がある。(平沢代議士)
A一枚岩の団結を尊重し、他の家族の事も考慮しろ。軽軽に動くな。
B関係者に面会しても真実は得られず、「私達に帰国の意思無し」とされて
「これで決着」とされて仕舞う。
C交換条件としてコメ支援や経済協力、対米交渉の使い走りにされるだけだ。
Dカードは日本が持っている。焦っているのは北鮮だから、日本は待ちの作戦
で相手が折れるのを待て。
E影響は他の被害者や不明者にも及ぶ危険あり。
・・・と云うところだろうか。@の訪朝者の危険に付いては政府関係者の同
行は必須だが、警護は兎も角として一部関係者の言う捜査官などの同行は、北
鮮が受け容れないだろう。Aは滋さん自身が何度も言う様に、個々の事情に対
して考慮が無さ過ぎる。Bは当然予想される結果で何時、誰が行っても同じ事
だ。要は相手の言い分から真実を探るしか無く、「貴方が行っても丸め込まれ
るだけ」と言うのは、余りにも他人を子供扱いした思い上がりだ。それでは何
時、行けば良いのかと反論されれば、誰も責任ある答えは出せない。
CやDはどちらかと云うと対北鮮強硬派の常套句だが、拉致問題とは別に真
の支援は必要だ。問題は有効な支援策を論ずる者が少なく、問題を摩り替える
意見が多い事こそ問題だ。Dなどに付いては「拉致問題でカードを持つのは北
鮮ではないか」と言って遣りたい。今までの経過を振り返れば、日本が毅然と
して強硬に振る舞っても「女の腕まくり」と直ぐに分かる事だ。阿房の一つ覚
えは良い加減で止して欲しい。Eに付いても、これを言ったら何も出来なく成
って仕舞う。バッジを外した事や、「帰国出来た五人」の帰国後の言動が、E
を無視したものでは無いと言えるのか。
これは大原則として横田滋さんの自己責任に帰するのではないか。横田家で
は滋さんの他は全員、訪朝に反対或いは慎重な意見だ。先ずは横田さんの「家
族」内で十分な検討が成される事が肝心だ。滋さんが繰り返す「ヘギョンがめ
ぐみで無い事は分かっているが、問題を摩り替えないで欲しい」を、理解して
あげねば成らない。「騒いだ事」で生死が分かれたと云う意見にも分があるが、
騒がなかったら解決したのかと反論して置く。仮令そうだとすれば、騒いだ人
のお陰で「帰国出来た五人」が在るのかも知れない。
個々の事情の相違を検証すると、蓮池夫妻と地村夫妻は共に生還して、残留
家族は一応の安全を得ている。曽我ひとみさんは母が不明の侭での単身帰国だ
が、ジェンキンスさん達の残留家族は一応安全とされる。折角安否が確認出来
ているのに、下手に騒いで帰国が遅れたり、危害を加えられたりするのは嫌だ
と云う事かも知れない。これも個々の事情と言えるが、別視点では勝手な言い
分と評価する事も出来るのではないか。
同じく反対或いは慎重とされる増元照明さんも、本当の安否を知りたい気持
ちは強くて当然だろう。これも別の見方をすれば、一応は死んだ可能性がある
から、急いで訪朝する意思が無くても可笑しくは無い。横田滋さんに対しても
同じ気持ちを求めるのかも知れない。しかし、めぐみさんが「死亡した」とさ
れても、ヘギョンさんの居る横田さんとは事情が違う。娘の恵子さんが「死ん
だ」とされ、最も強硬と評される有本さんにしても、矢張り事情が違うのだ。
テレビ番組での常識的な発言にある様に、「慎重に時期を待てと言うが、そ
それでは何時まで待てば良いのか」には誰も責任ある答えは出来ない。北鮮の
策動を危惧する声にしても、これだけ北鮮情報が溢れている現状では、常識あ
る者は言われなくとも内実は知っている筈だ。子供扱いする前に、己の思い
込みや我侭を省みろと言いたい。
それにしても日本テレビは悪質だ。12月26日の報道では横田さんの再翻
意を揶揄するが如き報道姿勢で、訪朝の必要無しとの方向へ誘導する内容だっ
た。北鮮事情にしても徒に揶揄、冷笑する意図が強過ぎる。金正日は兎も角と
して、南北朝鮮市民や良識ある日本国民には不愉快な報道姿勢だ。他局も各新
聞も、興味本位な低俗番組枠を削るべきだ。スポーツ新聞や週刊誌等、低質な
「一部報道機関」に任せて置けば良い。売名目的の出演者も要らない。
来年初頭の家族会総会で如何云う結論が出るのか。70歳と若くは無い横田
滋さんの年齢からすれば、何時に成るかあやふやな「解決」や進展を待てと言
うのも酷な話だ。安全且つ実効ある訪朝を考えても良い。「第2家族会」は飽
くまでも最後の方策、蓮池透等が自重して家族会を壊さぬ様にせよ。分裂はそ
れからの事だ。