何故にロシア支援か?


 鈴木宗男で暗闇に陽が当てられた観のある一連の対ロ支援策だが、98年に国後
島への支援が論議を呼んだ時の事を思い出す。冷戦構造が無くなったとは雖も、友
好的と思えないロシアの然も、不法占拠地への生活基盤整備を支援とは何か?俗に
言うところの「泥棒に追い銭」と言い切れるだろう。

 言を左右して返還を延ばしに延ばして来たロシア、一時期には「日ソ両国間に領
土問題は存在しない。」とまで恍けた時期もあった。日本にも関東軍特種演習など
の背信行為はあったが、四島は終戦のドサクサに紛れてソ連が強奪したものだ。
大筋では返還に合意している筈なのに、我が国の外交姿勢のあやふやさと使い様で
打ち出の小槌になる事を、ロシアは十分に承知して居る。

 当時の河野外相が反対していた国後に対する支援。これが鈴木のゴリ押しであっ
さり引っ繰り返ったのも不思議、鈴木は如何なる手法を講じたか。そして河野外相
の心変わりの真相は何かと、幾等でも汚れたものが出て来るだろう。

 一番の不思議は「何故に不法占拠民に支援か?」ではないか。一日でも早く返還
させようと折衝中に、如何して居座りを助長する環境整備や生活支援をするのか?
不法占拠されたのだから現状復帰した上で相応の賠償があっても良いくらいだが、
外交はそうも行かない。相当額の立退き料を払って取り戻せれば上出来であり、下
手をするとロシア人島民付きでの返還すら有り得る。共同管理程度の事は言って来
るかも知れない。

 国益優先の無私無欲などとは鈴木宗男の言い訳に過ぎず、競合の少ない外交分野
に餌場をつくっただけの事だろう。鈴木と自民党、外務省が寄って集って北方領土
を可笑しくした。現地の人は感謝しているとの意見もあったが、「泥棒に追い銭」
をしたのだから当然過ぎる「感謝」と言える。北方領土に支援する正当な意義は、
きっと誰にも説明出来ない事なのだろう。

 取材などによると現地では、一連の支援は既得権益だとの意識が強く、大してあ
り難くも思われていない。ディーゼル発電所にしても必要性は疑問で、予備として
の位置付けしかされて居ない。択捉島に至っては「もう日本の援助に有り難味を感
じない。貿易にしても日本相手から脱して世界市場が視程だ。」との現状だそうだ。
遅まきながら北方領土のみに限らず、無節操な対ロ支援を猛省すべきだ。