戰前戦後の各種法令など

  しんぶんし‐じょうれい【新聞紙条例 頁の先頭へ
一八七五年(明治八)に明治政府が発布した新聞取締法令。各地の新聞に反政府的論説
が多く掲載されたことから発布された。翌七六年には改正・強化され、一九○九年新聞紙
法に代った。
文献資料   しんぶんし‐ほう【新聞紙法】
日刊新聞・定期刊行雑誌の取締りを目的とする法律。一九○九年(明治四二)制定。
四九年(昭和二四)出版法とともに廃止。

第一条 凡そ新聞紙及時々に刷出する雑誌・雑報を発行せんとする者は、持主若(モシ)くは
社主より其の府県庁を経由して願書を内務省に捧げ允准を得べし。允准を得ずして発行す
る者は法司に付し罪を論じ〈凡そ条例に違ふ者は府県庁より地方の法司に付し罪を論ず〉、
発行を禁止し、持主若くは社主及編輯人・印刷人各々罰金百円を科す。其の詐て官准の名
を冒す者は各々罰金百円以上二百円以下を科し、更に印刷器を没入す。

第二条 願書に挙ぐべきの目左の如し。
一、紙若くは書の題号。
二、刷行の定期〈毎日・毎週・毎月或は無定期の類〉。
三、持主の姓名・住所。○会社なれば差金人を除くの外社主一人若くは数人の姓名住所。
四、編輯人の姓名・住所。○編輯人数人ある者は編輯人長一人の姓名・住所。
五、印刷人の姓名・住所。○編輯人自ら印刷人を兼る者は其由を著す。
右の五目中、詐謬ある者は発行を禁止若くは停止し〈時日を限り発行を止むる者を停止
とす〉、仍ほ願人に向て十円以上百円以下の罰金を科す。

第十二条 新聞紙若くは雑誌・雑報に於て人を教唆して罪を犯さしめたる者は、犯す者と
同罪。其教唆に止まる者は、禁獄五日以上三年以下、罰金十円以上五百円以下を科す。
其教唆して兇衆を煽起し或は官に強逼せしめたる者は、犯す者の首と同く論ず。其教唆に
止まる者は罪前に同じ。
第十三条 政府を変壊し国家を顛覆するの論を載せ騒乱を煽起せんとする者は、禁獄一年
以上三年に至る迄を科す。其実犯に至る者は首犯と同く論ず。
第十四条 成法を誹毀して国民法に遵ふの義を乱り及顕はに刑律に触れたるの罪犯を曲
庇するの論を為す者は、禁獄一月以上一年以下、罰金五円以上百円以下を科す。
                               〈法令全書〉

しゅうかい‐じょうれい【集会条例
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 集会・結社に対する取締りを規定した法令。一八八○年(明治一三)四月公布。自由民権
運動の進展に伴い、これを規制するための条例で、九○年七月に「集会および政社法」
に代った。

第一条 政治に関する事項を講談論議する為め公衆を集むる者は、開会三日前に、講談
論議の事項、講談論議する人の姓名・住所、会同の場所・年月日を詳記し、其会主又は会
長・幹事等より管轄警察署に届出で其認可を受くべし。

第二条 政治に関する事項を講談論議する為め結社する者は、結社前、其社名・社則・会
場及び社員名簿を管轄警察署に届出で其認可を受くべし。其社則を改正し及び社員の出入
ありたるときも同様たるべし。此届出を為すに当り警察署より尋問することあれば、社中
の事は何事たりとも之に答弁すべし。
第三条 講談論議の事項、講談論議する人員・会場及び会日の定規ある者は、其定規を初
会の三日前に警察署に届出、認可を受くるときは、爾後の例会は届出に及ばずと雖も、之
を変更するときは第一条の手続を為すべし。
第四条 管轄警察署は、第一条・第二条・第三条の届出でに於て国安に妨害ありと認むる
ときは、之を認可せざるべし。
第五条 警察署よりは正服を着したる警察官を会場に派遣し、其認可の証を検査し、会場
を監視せしむることあるべし。
第六条 派出の警察官は、認可の証を開示せざるとき、講談論議の届書に掲げざる事項に
亘(ワタ)るとき、又は人を罪戻(ザイレイ)に教唆誘導するの意を含み又は公衆の安寧に妨害あり
と認むるとき、及び集会に臨むを得ざる者に退去を命じて之に従はざるときは、全会を解
散せしむべし。
第七条 政治に関する事項を講談論議する集会に、陸海軍人常備・予備・後備の名籍に在
る者、警察官、官立・公立・私立学校の教員・生徒、農業・工芸の見習生は、之に臨会し
又は其社に加入することを得ず。
第八条 政治に関する事項を講談論議する為め、其旨趣を広告し、又は委員若くは文書を
発して公衆を誘導し、又は他の社と連結し及び通信往復することを得ず。
第九条 政治に関する事項を講談論議する為め、屋外に於て公衆の集会を催すことを得ず。
第十条 第一条の認可を受けずして集会を催すもの、会主は二円以上二十円以下の罰金若
くは十一日以上三月以下の禁獄に処し、其会席を貸したる者並に会長・幹事及び其講談論
議者は各二円以上二十円以下の罰金に処し、第三条の規程を犯したる者も亦本条に依る。
(付) 明治十三年集会条例改正追加
明治十三年〈四月〉第十二号布告集会条例左の通改正追加し、同年〈十二月〉第五十六号
布告を廃止す。
第二条 政治に関する事項を講談論議する為め結社<何等の名義を以てするも、其実政治
に関する事項を講談論議する為め結合するものを併称す>する者は、結社前、其社名・社
則・会場及び社員名簿を管轄警察署に届出で其認可を受くべし。其社則を改正し及び社員
の出入ありたるときも同様たるべし。此届出を為すに当り、警察署より尋問することあれ
ば、社中の事は何事たりとも之に答弁すべし。
 前項の結社及其他の結社に於て、政治に関する事項を講談論議する為めに集会を為さん
とするときは、仍ほ第一条の手続を為すべし。

第四条 管轄警察署は、第一条・第二条・第三条の届出に於て、治安に妨害ありと認むる
ときは之を認可せず、又は認可するの後と雖も之を取消すことあるべし。

第五条 二項
警察官会場に入るときは其求むる所の席を供し、且其尋問あるときは結社集会に関する事
は何事たりとも之に答弁すべし。

第六条 二項
前項の場合に於て解散を命じたるとき、地方長官〈東京は警視長官〉は其情状に依り演説
者に対し一個年以内管轄内に於て公然政治を講談論議するを禁止し、其結社に係るものは
仍ほ之を解社せしむることを得。内務卿は其情状に依り更に其演説者に対し一個年以内全
国内に於て公然政治を講談論議するを禁止することを得。

第八条 政治に関する事項を講談論議する為め、其旨趣を広告し、又は委員若くは文書を
発して公衆を誘導し、又は支社を置き若くは他の社と連結通信することを得ず。

第十一条 第二条第一項の規程に背きて届出を為さず、又は尋問する所の事項を開答せざ
るとき、社長は弐円以上弐拾円以下の罰金に処し、詐欺の届出を為し或は尋問を得て偽答
するとき、社長は右罰金の外、尚ほ十一日以上三月以下の軽禁錮に処す。
第十二条 第五条の規程に背き、派出警察官の臨席を肯ぜず又は其求むる所の席を供せざ
るとき、会主・会長及社長・幹事は各五円以上五拾円以下の罰金若くは一月以上一年以下
の軽禁錮に処し、警察官の尋問に答へず又は偽答する者は同罪に処す。再犯に当る者は拾
円以上百円以下の罰金若くは二月以上二年以下の軽禁錮に処す。

第十六条 学術会其他何等の名義を以てするに拘はらず多衆集会する者、警察官に於て治
安を保持するに必要なりと認むるときは、之に監臨することを得。若し其監臨を肯ぜざる
ときは、第十二条に依て処分す。
 学術会にして政治に関する事項を講談論議することあるときは、第十条に依て処分す。

第十七条 前条の場合に於て治安を妨害すと認むるときは、第六条に依て処分す。

第十八条 凡そ結社若くは集会する者、内務卿に於て治安に妨害ありと認むるときは、之
を禁止することを得。若し禁止の命に従はず又は仍ほ秘密に結社若くは集会する者は、拾
円以上百円以下の罰金若くは二月以上二年以下の軽禁錮に処す。
                               〈法令全書〉
 
 

ほあん‐じょうれい【保安条例 頁の先頭へ
 明治憲法制定の直前、一八八七年(明治二○)に自由民権運動を弾圧するために制定され
た法令。多くの自由民権論者が東京から追放された。九八年廃止。
朕惟ふに、今の時に当り大政の進路を開通し、臣民の幸福を保護する為に、妨害を除去し、
安寧を維持するの必要を認め、茲に左の条例を裁可して之を公布せしむ。

保安条例
第一条
凡そ秘密の結社又は集会は之を禁ず。犯す者は一月以上二年以下の軽禁錮に処し十円以上
百円以下の罰金を附加す。其首魁及教唆者は二等を加ふ。
内務大臣は前項の秘密結社又は集会又は集会条例第八条に載する結社・集会の聯結通信を
阻遏(ソアツ)する為に必要なる予防処分を施すことを得。其処分に対し其命令に違犯する者、
罰前項に同じ。

第二条
屋外の集会又は群集は、予め許可を経たると否とを問はず、警察官に於て必要と認むると
きは之を禁ずることを得。其命令に違ふ者、首魁・教唆者及情を知りて参会し勢を助けた
る者は、三月以上三年以下の軽禁錮に処し十円以上百円以下の罰金を附加す。其附和随行
したる者は二円以上二十円以下の罰金に処す。
集会者に兵器を携帯せしめたる者又は各自に携帯したる者は各本刑に二等を加ふ。
第三条
内乱を陰謀し又は教唆し又は治安を妨害するの目的を以て文書又は図書を印刷又は板刻し
たる者は、刑法又は出版条例に依り処分するの外、仍(ナオ)其犯罪の用に供したる一切の器
械を没収すべし。
印刷者は其情を知らざるの故を以て前項の処分を免るゝことを得ず。
第四条
皇居又は行在所を距る三里以内の地に住居又は寄宿する者にして内乱を陰謀し又は教唆し
又は治安を妨害するの虞(オソレ)ありと認むるときは、警視総監又は地方長官は内務大臣の
認可を経、期日又は時間を限り退去を命じ、三年以内同一の距離内に出入・寄宿又は住居
を禁ずることを得。
退去の命を受けて期日又は時間内に退去せざる者又は退去したるの後更に禁を犯す者は、
一年以上三年以下の軽禁錮に処し、仍(ナオ)五年以下の監視に付す。
監視は本籍の地に於て之を執行す。
第五条
人心の動乱に由り又は内乱の予備又は陰謀を為す者あるに由り治安を妨害するの虞ある地
方に対し、内閣は臨時必要なりと認むる場合に於て、其一地方に限り期限を定め左の各項
の全部又は一部を命令することを得。
一、凡そ公衆の集会は、屋内・屋外を問はず、及何等の名義を以てするに拘らず、予め
警察官の許可を経ざるものは総て之を禁ずる事。
二、新聞紙及其他の印刷物は、予め警察官の検閲を経ずして発行するを禁ずる事。
三、特別の理由に因り官庁の許可を得たる者を除く外、銃器・短銃・火薬・刀剣・仕込
杖の類、総て携帯・運搬・販売を禁ずる事。
四、旅人出入を検査し旅券の制を設くる事。
第六条
前条の命令に対する違犯者は一月以上二年以下の軽禁錮又は五円以上二百円以下の
罰金に処す。其刑法又は其他特別の法律を併せ犯したるの場合に於ては、各本法に照し重きに従
ひ処断す。
第七条
本条例は発布の日より施行す。

(付) 集会および政社法 頁の先頭へ
集会及政社法
第一条 此の法律に於て政談集会と称ふるは、何等の名義を以てするに拘らず、政治に関
る事項を講談論議する為公衆を会同するものを謂ふ。政社と称ふるは、何等の名義を以て
するに拘らず、政治に関る事項を目的として団体を組成するものを謂ふ。
第二条 政談集会には発起人を定むべし。
政談集会を開くときは、発起人より開会四十八時以前に会場所在地の管轄警察官署に届出
べし。
 前項の届出ありたるときは、警察官署は直に其の領収証を交付すべし。
届書には集会の場所・年月・日時、並に発起人及講談論議者の氏名・住所・年齢を記載
し、発起人署名捺印すべし。届書に記載したる時刻より三時間を過ぎて開会せざるとき
は、届出の効を失ふものとす。
第三条 日本臣民にして公権を有する成年の男子にあらざれば政談集会の発起人たること
を得ず。
第四条 現役及召集中に係る予備・後備の陸海軍軍人、警察官、官立・公立・私立学校の
教員・学生・生徒、未成年者及女子は政談集会に会同することを得ず。
 法律を以て組織したる議会の議員選挙準備の為に開く所の集会は、投票の日より前三十
日間は、選挙権を行ふべき者及被選挙権を有する者に限り本条の制限に依るを要せず。
第五条 政談集会に於ては外国人をして講談論議者たらしむることを得ず。
第六条 政談集会は屋外に於て開くことを得ず。
第七条 凡そ屋外に於て公衆を会同し又は多衆運動せんとするときは、発起人より四十八
時以前に会同すべき場所・年月・日時及其の通過すべき路線を管轄警察官署に届出で認可
を受くべし。但し祭葬、講社、学生・生徒の体育運動、及其の他慣例の許す所に係るもの
は此の限にあらず。
警察官署は、前項の届出に於て安寧秩序に妨害ありと認むるときは認可を拒むことを得。
警察官署は、安寧秩序に妨害ありと認むるときは、何等の場合に拘らず屋外の集会又は
多衆運動を禁止することを得。
第八条 帝国議会開会より閉会に至るの間は、議院を距る三里以内に於て屋外の集会又は
多衆運動をなすことを得ず。
 但し第七条第一項但書の場合は本条に於ても之を適用す。
第九条 警察官署は、制服を著したる警察官を派遣し政談集会に臨監せしむることを得。
 発起人は、臨監警察官に其の求むる所の席を供すべく、集会に関する事項に付尋問ある
とき何事たりとも之に開答すべし。
 政談集会にあらざるも安寧秩序を妨害するの虞ありと認むる集会には、第一項の臨監を
為すことを得。
第十条 凡そ集会には戎器又は兇器を携帯して会同することを得ず。但し制規に依り戎器
を携帯する者は此の限にあらず。
第十一条 凡そ集会に於て、罪犯を曲庇し、又は刑律に触れたる者若は刑事裁判中の者を
救護し又は賞恤し、又は犯罪を教唆するの談論をなすことを得ず。
第十二条 会場に於て故(コトサ)らに喧擾(ケンジヨウ)を為し又は狂暴に渉る者あるときは、警察
官は之を制止し、其の命に従はざるときは会場外に退出せしむることを得。
第十三条 警察官は左の場合に於て集会の解散を命ずることを得。
一、集会の成立此の条例に背きたるとき。
二、第十一条を犯したるとき、又は安寧秩序に妨害ありと認むるとき。
此の場合に於ては、全会を散解せずして単に其の一人の講談論議を停止することを得。
三、警察官の臨監を拒み、又は其の求むる所の席を供せず、又は其の尋問に答へざるとき。
四、会衆騒擾に渉り警察官之を制止するも鎮静せざるとき。
五、第四条・第十条の違犯者多数にして、警察官より退場を命ずるも其の命に従はざる
とき。
第二十二条 警察官より解散を命ぜられたる後仍(ナオ)退散せざる者又は退出を命ぜられた
る後仍退出せざる者は、十一日以上六月以下の軽禁錮又は二円以上二十円以下の罰金に処
す。
第二十三条 政社には役員を置くべし。
政社は組成後三日以内に、其の役員より社名・社則・事務所・役員及社員名簿を其の事
務所所在地の管轄警察官署に届出べし。其の届出の事項に変更ありたるとき亦同じ。
 前項の届出ありたるときは、警察官署は直に其の領収証を交付すべし。
役員は其の政社に関る事項に付警察官より尋問あるとき、何事たりとも之に開答すべし。
第二十四条 政社にして政談集会を開くときは第二条の手続を為すべし。但し講談論議者
及会場を予定して定期に集会するものは、之を初会の開会四十八時以前に届出るときは爾
後の例会は届出を要せず。其の届出の事項に変更ありたるときは、仍第二条の手続に依る
べし。
第二十五条 現役及召集中に係る予備・後備の陸海軍軍人、警察官、官立・公立・私立学
校の教員・学生・生徒、未成年者、女子及公権を有せざる男子は、政社に加入することを
得ず。
第二十六条 政社に於ては外国人をして加入せしむることを得ず。
第二十七条 政社は標章及旗幟を用ゐることを得ず。
第二十八条 政社は、委員若は文書を発して公衆を誘導し、又は支社を置き若は他の政社
と連結通信することを得ず。
第二十九条 政社に於ては、法律を以て組織したる議会の議員に対して其の発言及表決に
付、議会外に於て責任を負はしむるの制規を設くることを得ず。
第三十条 凡そ結社にして安寧秩序に妨害ありと認むるときは、内務大臣は之を禁止する
ことを得。若し禁止の命に従はずして仍結社するの実ある者は、二月以上二年以下の軽禁
錮又は二十円以上二百円以下の罰金に処す。
                              〈法令全書〉
 

ちあん‐けいさつ‐ほう【治安警察法頁の先頭へ
集会・結社・大衆運動の取締りを目的とした法律。一九○○年(明治三三)公布。団結権
・同盟罷業権を制限した規定は、労働者の正当な権利を阻害するものとして二六年削除。
四五年廃止。
第一条 政事に関する結社の主幹者(支社に在りては支社の主幹者)は結社組織の日より
三日以内に社名、社則、事務所及其の主幹者の氏名を其の事務所所在地の管轄警察官
署に届出つへし其の届出の事項に変更ありたるとき亦同し
第二条 政事に関し公衆を会同する集会を開かむとする者は発起人を定むへし発起人は到
達すへき時間を除き開会三時間以前に集会の場所、年月日時を会場所在地の管轄警察官
署に届出つへし届出の時刻より三時間を過きて開会せす若は三時間以上中断するときは届
出は其の効を失ふ
第三条 公事に関する結社又は集会にして政事に関せさるものと雖安寧秩序を保持する為
届出を必要とするものあるときは命令を以て第一条又は第二条の規定に依らしむることを

第四条 屋外に於て公衆を会同し若は多衆運動せむとするときは、発起人より十二時間以
前に会同すへき場所年月日時及其通過すへき路線を管轄警察官署に届出つへし。
但祭葬、講社、学生生徒の体育運動其の他慣例の許す所に係るものは此の限に在らす
第五条 左に掲くる者は政事上の結社に加入することを得す
一 現役及召集中の予備後備の陸海軍軍人 二 警察官
三 神官神職僧侶其の他諸宗教師 四 官立公立私立学校の教員学生生徒
五 女子 六 未成年者 七 公権剥奪及停止中の者 女子及未成年者は公衆を会同する
政談集会に会同し若は其の発起人たることを得す
第六条 日本臣民に非さる者は政事上の結社に加入し又は公衆を会同する政談集会の発起
人たることを得す
第八条 安寧秩序を保持する為必要なる場合に於ては警察官は屋外の集会又は多衆の運動
若は群集を制限、禁止若は解散し又は屋内の集会を解散することを得
第十条 集会に於ける講談論議にして前条の規定に違背し其の他安寧秩序を紊し若は風俗
を害するの虞ありと認むる場合に於ては警察官は其の人の講談論議を中止することを得
第十二条 集会又は多衆運動の場合に於て故らに喧擾し又は狂暴に渉る者あるときは警察
官は之を制止し其の命に従はさるときは現場より退去せしむることを得
第十四条 秘密の結社は之を禁す
第十七条 左の各号の目的を以て他人に対して暴行、脅迫し若は公然誹毀し又は第二号の
目的を以て他人を誘惑若は煽動することを得す
 一 労務の条件又は報酬に関し協同の行動を為すへき団結に加入せしめ又は其の加入を
妨くること
二 同盟解雇若は同盟罷業を遂行するか為使用者をして労務者を解雇せしめ若は労務に
従事するの申込を拒絶せしめ又は労務者をして労務を停廃せしめ若は労務者として解雇
するの申込を拒絶せしむること
三 労務の条件又は報酬に関し相手方の承諾を強ゆること
耕作の目的に出つる土地賃貸借の条件に関し承諾を強ゆるか為相手方に対し暴行、脅迫
し若は公然誹毀することを得す
              〈法令全書・1900(明治33)3月10日、法律第36号〉

ちあん‐いじ‐ほう【治安維持法頁の先頭へ
国体の変革、私有財産制度の否認を目的とする結社活動・個人的行為に対する罰則を定
めた法律。一九二五年(大正一四)公布。二八年改正。さらに四一年全面改正。主として
共産主義運動の抑圧策として違反者には極刑主義を採り、言論・思想の自由を蹂躙。
四五年廃止。

(一)第一条 国体を変革し又は私有財産制度を否認することを目的として結社を組織し
又は情を知りて之に加入したる者は十年以下の懲役又は禁錮に処す
前項の未遂罪は之を罰す
第二条 前条第一項の目的を以て其目的たる事項の実行に関し協議を為したる者は七年以
下の懲役又は禁錮に処す
第三条 第一条第一項の目的を以て其目的たる事項の実行を煽動したる者は七年以下の懲
役又は?ヨ錮に処す
第四条 第一条第一項の目的を以て騒擾、暴行、其他生命、身体又は財産に害を加ふへき
犯罪を煽動したる者は十年以下の懲役又は禁錮に処す(下略)
               〈官報・1925(大正14)年4月22日、法律第46号〉
(二)治安維持法の改正
治安維持法中左の通改正す
第一条 国体を変革することを目的として結社を組織したる者、又は結社の役員其他指導
者たる任務に従事したる者は、死刑又は無期若くは五年以上の懲役若くは禁錮に処し、情
を知りて結社に加入したる者、又は結社の目的遂行の為にする行為を為したる者は、二年
以上の有期懲役又は禁錮に処す
私有財産制度を否認することを目的として結社を組織したる者、結社に加入したる者又は
結社の目的遂行の為にする行為を為したる者は、十年以下の懲役又は禁錮に処す
前二項の未遂罪は之を罰す
              〈官報・1928(昭和3)年6月29日、勅令第 129号〉

(三)治安維持法 頁の先頭へ
第一章 罪
第一条 国体を変革することを目的として結社を組織したる者又は結社の役員其の他指導
者たる任務に従事したる者は死刑又は無期若は七年以上の懲役に処し情を知りて結社に加
入したる者又は結社の目的遂行の為にする行為を為したる者は三年以上の有期懲役に処す
第二条 前条の結社を支援することを目的として結社を組織したる者又は結社の役員其の
他指導者たる任務に従事したる者は死刑又は無期若は五年以上の懲役に処し情を知りて結
社に加入したる者又は結社の目的遂行の為にする行為を為したる者は二年以上の有期懲役
に処す
第三条 第一条の結社の組織を準備することを目的として結社を組織したる者又は結社の
役員其の他指導者たる任務に従事したる者は死刑又は無期若は五年以上の懲役に処し情を
知りて結社に加入したる者又は結社の目的遂行の為にする行為を為したる者は二年以上の
有期懲役に処す
第七条 国体を否定し又は神宮若は皇室の尊厳を冒涜すべき事項を流布することを目的と
して結社を組織したる者又は結社の役員其の他指導者たる任務に従事したる者は無期又は
四年以上の懲役に処し情を知りて結社に加入したる者又は結社の目的遂行の為にする行為
を為したる者は一年以上の有期懲役に処す
第十条 私有財産制度を否認することを目的として結社を組織したる者又は情を知りて結
社に加入したる者若は結社の目的遂行の為にする行為を為したる者は十年以下の懲役又は
禁錮に処す
第二章 刑事手続
第二九条 弁護人は司法大臣の予め指定したる弁護士の中より之を選任すべし但し刑事訴
訟法第四十条第二項の規定の適用を妨げず
第三〇条 弁護人の数は被告人一人に付二人を超ゆることを得ず
第三三条 第一章に掲ぐる罪を犯したるものと認めたる第一審の判決に対しては控訴を為
すことを得ず
前項に規定する第一審の判決に対しては直接上告を為すことを得
第三章 予防拘禁
第三九条 第一章に掲ぐる罪を犯し刑に処せられたる者其の執行を終り釈放せらるべき場
合に於て釈放後に於て更に同章に掲ぐる罪を犯すの虞あること顕著なるときは裁判所は検
事の請求に因り本人を予防拘禁に付する旨を命ずることを得
第一章に掲ぐる罪を犯し刑に処せられ其の執行を終りたる者又は刑の執行猶予の言渡を受
けたる者思想犯保護観察法に依り保護観察に付せられ居る場合に於て保護観察に依るも同
章に掲ぐる罪を犯すの危険を防止すること困難にして更に之を犯すの虞あること顕著なる
とき亦前項に同じ
               〈官報・1941(昭和16)年3月10日、法律第54号〉
 

戒厳令 頁の先頭へ

第一条 戒厳令は戦時若くは事変に際し兵備を以て全国若くは一地方を警戒するの法とす
第二条 戒厳は臨戦地境と合囲地境との二種に分つ
第一 臨戦地境は戦時若くは事変に際し警戒す可き地方を区画して臨戦の区域と為す者
なり
第二 合囲地境は敵の合囲若くは攻撃其他の事変に際し警戒す可き地方を区画して合囲
の区域と為す者なり
第三条 戒厳は時機に応し其要す可き地境を区画して之を布告す
第四条 戦時に際し鎮台営所要塞海軍港鎮守府海軍造船所等遽かに合囲若くは攻撃を受く
る時は其地の司令官臨時戒厳を宣告する事を得又戦略上臨機の処分を要する時は出征の司
令官之を宣告する事を得
第五条 平時土寇を鎮定する為め臨時戒厳を要する場合に於ては其地の司令官速かに上奏
して命を請ふ可し若し時機切迫して通信断絶し命を請ふの道なき時は直に戒厳を宣告する
事を得
第六条 軍団長師団長旅団長鎮台営所要塞司令官或は艦隊司令長官艦隊司令官鎮守府長官
若くは特命司令官は戒厳を宣告し得るの権ある司令官とす
第七条 戒厳の宣告を為したる時は直ちに其状勢及ひ事由を具して之を太政官に上申す可
し但其隷属する所の長官には別に之を具申す可し
第八条 戒厳の宣告は曩に布告したる所の臨戦若くは合囲地境の区画を改定する事を得
第九条 臨戦地境内に於ては地方行政事務及ひ司法事務の軍事に関係ある事件を限り其地
の司令官に管掌の権を委する者とす故に地方官地方裁判官及ひ検察官は其戒厳の布告若く
は宣告ある時は速かに該司令官に就て其指揮を請ふ可し
第十条 合囲地境内に於ては地方行政事務及ひ司法事務は其地の司令官に管掌の権を委す
る者とす故に地方官地方裁判官及ひ検察官は其戒厳の布告若くは宣告ある時は速かに該司
令官に就て其指揮を請ふ可し
第十一条 合囲地境内に於ては軍事に係る民事及ひ左に開列する犯罪に係る者は総て軍衙
に於て裁判す
刑法
第二編  第一章皇室に対する罪 第二章国事に関する罪 第三章静謐を害する罪
第四章信用を害する罪 第九章官吏涜職の罪
第三編  第一章 第一節謀殺故殺の罪 第二節殴打創傷の罪 第六節擅に人を逮
捕監禁する罪 第七節脅迫の罪  第二章 第二節強盗の罪 第七節放火失火の罪
第八節決水の罪 第九節船舶を覆没する罪 第十節家屋物品を毀壊し及ひ動植物を
害する罪
第十二条 合囲地境内に裁判所なく又其管轄裁判所と通路断絶せし時は民事刑事の別なく
総て軍衙の裁判に属す
第十三条 合囲地境内に於ける軍衙の裁判に対しては控訴上告を為す事を得す
第十四条 戒厳地境内に於ては司令官左に記列の諸件を執行するの権を有す但其執行より
生する損害は要償する事を得す
第一 集会若くは新聞雑誌広告等の時勢に妨害ありと認むる者を停止する事
第二 軍需に供す可き民有の諸物品を調査し又は時機に依り其輸出を禁止する事
第三 銃砲弾薬兵器火具其他危険に渉る諸物品を所有する者ある時は之を検査し時機に
依り押収する事
第四 郵信電報を開緘し出入の船舶及ひ諸物品を検査し竝に陸海通路を停止する事
第五 戦状に依り止むを得さる場合に於ては人民の動産不動産を破壊燬焼する事
第六 合囲地境内に於ては昼夜の別なく人民の家屋建造物船舶中に立入り検察する事
第七 合囲地境内に寄宿する者ある時は時機に依り其地を退去せしむる事
第十五条 戒厳は平定の後と雖も解止の布告若くは宣告を受くるの日迄は其効力を有する
者とす
第十六条 戒厳解止の日より地方行政事務司法事務及ひ裁判権は総て其常例に復す
                               〈法令全書〉

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こっか‐そうどういん‐ほう【国家総動員法 頁の先頭へ
 日中戦争に際し、人的および物的資源を統制し運用する広汎な権限を政府に与えた法
律。一九三八年(昭和一三)公布。四五年廃止。

第1条 本法に於て国家総動員とは戦時(戦争に準ずべき事変の場合を含む。以下之に同
じ)に際し国防目的達成の為、国の全力を最も有効に発揮せしむる様、人的及物的資源を
統制運用するを謂ふ
第4条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは、勅令の定むる所に依り、帝国臣
民を徴用して総動員業務に従事せしむることを得、但し兵役法の適用を妨げず
第6条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは、勅令の定むる所に依り、従業者
の使用、雇入若は解雇又は賃金其の他の労働条件に付、必要なる命令を為すことを得
第20条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは、勅令の定むる所に依り、新聞
紙其の他の出版物の掲載に付、制限又は禁止を為すことを得
                        〈官報〉
 
 

太平洋戦争宣戦の詔書

たいへいよう‐せんそう【太平洋戦争】 頁の先頭へ
第二次世界大戦のうち、主として太平洋方面における日本とアメリカ・イギリス・オラ
ンダ等の連合国軍との戦争。十五年戦争の第三段階で、中国戦線をも含む。日中戦争の
長期化と日本の南方進出が連合国との摩擦を深め、種々外交交渉が続けられたが、一九
四一年一二月八日、日本のハワイ真珠湾攻撃によって開戦。
 戦争初期、日本軍は優勢であったが、四二年半ば頃から連合軍が反攻に転じ、ミッドウ
ェー・ガダルカナル・サイパン・硫黄島・沖縄本島等において日本軍は致命的打撃を受け、
本土空襲、原子爆弾投下、ソ連参戦に及び、四五年八月一四日連合国のポツダム宣言を受
諾、九月二日無条件降伏文書に調印。戦争中日本では大東亜戦争と公称。

天佑を保有し万世一系の皇祚を践める大日本帝国天皇は昭に忠誠勇武なる汝有衆に示す
朕茲に米国及英国に対して戦を宣す朕か陸海将兵は全力を奮て交戦に従事し朕か百僚有司
は励精職務を奉行し朕か衆庶は各々其の本分を尽し億兆一心国家の総力を挙けて征戦の目
的を達成するに遺算なからむことを期せよ
抑々東亜の安定を確保し以て世界の平和に寄与するは丕顕なる皇祖考丕承なる皇考の作述
せる遠猷にして朕か拳々措かさる所而して列国との交誼を篤くし万邦共栄の楽を偕にする
は之亦帝国か常に国交の要義と為す所なり今や不幸にして米英両国と釁端を開くに至る洵
に已むを得さるものあり豈朕か志ならむや中華民国政府曩に帝国の真意を解せす濫に事を
構へて東亜を平和を攪乱し遂に帝国をして干戈を執るに至らしめ茲に四年有余を経たり幸
に国民政府更新するあり帝国は之と善隣の誼を結ひ相提携するに至れるも重慶に残存する
政権は米英の庇蔭を恃みて兄弟尚未た牆に相鬩くを悛めす米英両国は残存政権を支援して
東亜の禍乱を助長し平和の美名に匿れて東洋制覇の非望を逞うせむとす剰へ与国を誘ひ帝
国の周辺に於て武備を増強して我に挑戦し更に帝国の平和的通商に有らゆる妨害を与へ遂
に経済断交を敢てし帝国の生存に重大なる脅威を加ふ朕は政府をして事態を平和の裡に回
復せしめむとし隠忍久しきに弥りたるも彼は毫も交譲の精神なく徒に時局の解決を遷延せ
しめて此の間却つて益々経済上軍事上の脅威を増大し以て我を屈従せしめむとす斯の如く
にして推移せむか東亜安定に関する帝国積年の努力は悉く水泡に帰し帝国の存立亦正に危
殆に瀕せり事既に此に至る帝国は今や自存自衛の為蹶然起つて一切の障礙を破砕するの外
なきなり
皇祖皇宗の神霊上に在り朕は汝有衆の忠誠勇武に信倚し祖宗の遺業を恢弘し速に禍根を芟
除して東亜永遠の平和を確立し以て帝国の光栄を保全せむことを期す
御名御璽
昭和十六年十二月八日
                                  〈官報〉
 

太平洋戦争終戦の詔書 頁の先頭へ

朕深く世界の大勢と帝国の現状とに鑑み非常の措置を以て時局を収拾せむと欲し茲に忠良
なる爾臣民に告く
朕は帝国政府をして米英支蘇四国に対し其の共同宣言を受諾する旨通告せしめたり
抑々帝国臣民の康寧を図り万邦共栄の楽を偕にするは皇祖皇宗の遺範にして朕の拳々措か
さる所曩に米英二国に宣戦せる所以も亦実に帝国の自存と東亜の安定とを庶幾するに出て
他国の主権を排し領土を侵すか如きは固より朕か志にあらす然るに交戦已に四歳を閲し朕
か陸海将兵の勇戦朕か百僚有司の励精朕か一億衆庶の奉公各々最善を尽せるに拘らす戦局
必すしも好転せす世界の大勢亦我に利あらす加之敵は新に残虐なる爆弾を使用して頻に無
辜を殺傷し惨害の及ふ所真に測るへからさるに至る而も尚交戦を継続せむか終に我か民族
の滅亡を招来するのみならす延て人類の文明をも破却すへし斯の如くむは朕何を以てか億
兆の赤子を保し皇祖皇宗の神霊に謝せむや是れ朕か帝国政府をして共同宣言に応せしむる
に至れる所以なり
朕は帝国と共に終始東亜の解放に協力せる諸盟邦に対し遺憾の意を表せさるを得す帝国臣
民にして戦陣に死し職域に殉し非命に斃れたる者及其の遺族に想を致せは五内為に裂く且
戦傷を負ひ災禍を蒙り家業を失ひたる者の厚生に至りては朕の深く軫念する所なり惟ふに
今後帝国の受くへき苦難は固より尋常にあらす爾臣民の衷情も朕善く之を知る然れとも朕
は時運の趨く所堪へ難きを堪へ忍ひ難きを忍ひ以て万世の為に太平を開かむと欲す
朕は茲に国体を護持し得て忠良なる爾臣民の赤誠に信倚し常に爾臣民と共に在り若し夫れ
情の激する所濫に事端を滋くし或は同胞排擠互に時局を乱り為に大道を誤り信義を世界に
失ふか如きは朕最も之を戒む宜しく挙国一家子孫相伝へ確く神州の不滅を信し任重くして
道遠きを念ひ総力を将来の建設に傾け道義を篤くし志操を鞏くし誓て国体の精華を発揚し
世界の進運に後れさらむことを期すへし爾臣民其れ克く朕か意を体せよ
御名御璽
昭和二十年八月十四日
                            各国務大臣副署
                                〈官報〉
 
 

天皇人間宣言  頁の先頭へ
(上略)惟(オモ)ふに長きに亘れる戦争の敗北に終りたる結果、我国民は動(ヤヤ)もすれば
焦躁に流れ、失意の淵に沈淪せんとするの傾きあり。詭激の風漸く長じて道義の念頗る衰
へ、為に思想混乱の兆あるは洵に深憂に堪へず。
 然れども朕は爾(ナンジ)等国民と共に在り、常に利害を同じうし休戚を分たんと欲す。朕
と爾等国民との間の紐帯は、終始相互の信頼と敬愛とに依りて結ばれ、単なる神話と伝説
とに依りて生ぜるものに非ず。天皇を以て現御神とし、且日本国民を以て他の民族に優越
せる民族にして、延て世界を支配すべき運命を有すとの架空なる観念に基くものにも非ず。
 朕の政府は国民の試練と苦難とを緩和せんが為、あらゆる施策と経営とに万全の方途を
講ずべし。同時に朕は我国民が時艱に蹶起し、当面の困苦克服の為に、又産業及文運振興
の為に勇往せんことを希念す。(下略)
                              〈官報〉
 

マッカーサー改革指令 頁の先頭へ
1.選挙権附与による日本婦人の解放。
2.労働組合の結成奨励。
3.より自由なる教育を行う為の諸学校の開設。
4.秘密検察及びその濫用に依り国民を不断の恐怖に曝し来りたるが如き諸制度の廃止。
5.所得並に生産及商業上の諸手段の所有の普遍的分配を齎すが如き方法の発達に依り、
独占的産業支配が改善せらるるよう日本の経済機構を民主主義化すること。
                  〈史料日本近現代史〉
 
 

だいにっぽん‐ていこく‐けんぽう【大日本帝国憲法 頁の先頭へ
一八八九年(明治二二)二月一一日に発布された欽定憲法。七章七六条から成り、天皇の
大権、臣民の権利義務、帝国議会の組織、輔弼(ホヒツ)機関、司法機関および会計などに
関して規定したもの。第二次大戦後、新しい「日本国憲法」に改められて失効。明治憲
法。
第1章 天皇
第1条 大日本帝国は万世一系の天皇之を統治す
第2条 皇位は皇室典範の定むる所に依り皇男子孫之を継承す
第3条 天皇は神聖にして侵すへからす
第4条 天皇は国の元首にして統治権を総攬し此の憲法の条規に依り之を行ふ
第5条 天皇は帝国議会の協賛を以て立法権を行ふ
第6条 天皇は法律を裁可し其の公布及執行を命す
第7条 天皇は帝国議会を召集し其の開会閉会停会及衆議院の解散を命す
第8条 (1)天皇は公共の安全を保持し又は其の災厄を避くる為緊急の必要に由り帝国議
会閉会の場合に於て法律に代るへき勅令を発す
(2)此の勅令は次の会期に於て帝国議会に提出すへし若議会に於て承諾せさるときは政府
は将来に向て其の効力を失ふことを公布すへし
第9条 天皇は法律を執行する為に又は公共の安寧秩序を保持し及臣民の幸福を増進する
為に必要なる命令を発し又は発せしむ但し命令を以て法律を変更することを得す
第10条 天皇は行政各部の官制及文武官の俸給を定め及文武官を任免す但し此の憲法又

他の法律に特例を掲けたるものは各々其の条項に依る
第11条 天皇は陸海軍を統帥す
第12条 天皇は陸海軍の編制及常備兵額を定む
第13条 天皇は戦を宣し和を講し及諸般の条約を締結す
第14条 (1)天皇は戒厳を宣告す
(2)戒厳の要件及効力は法律を以て之を定む
第15条 天皇は爵位勲章及其の他の栄典を授与す
第16条 天皇は大赦特赦減刑及復権を命す
第17条 (1)摂政を置くは皇室典範の定むる所に依る
(2)摂政は天皇の名に於て大権を行ふ
 第2章 臣民権利義務
第18条 日本臣民たるの要件は法律の定むる所に依る
第19条 日本臣民は法律命令の定むる所の資格に応し均く文武官に任せられ及其の他の
公務に就くことを得
第20条 日本臣民は法律の定むる所に従ひ兵役の義務を有す
第21条 日本臣民は法律の定むる所に従ひ納税の義務を有す
第22条 日本臣民は法律の範囲内に於て居住及移転の自由を有す
第23条 日本臣民は法律に依るに非すして逮捕監禁審問処罰を受くることなし
第24条 日本臣民は法律に定めたる裁判官の裁判を受くるの権を奪はるゝことなし
第25条 日本臣民は法律に定めたる場合を除く外其の許諾なくして住所に侵入せられ及
捜索せらるゝことなし
第26条 日本臣民は法律に定めたる場合を除く外信書の秘密を侵さるゝことなし
第27条 (1)日本臣民は其の所有権を侵さるゝことなし
(2)公益の為必要なる処分は法律の定むる所に依る
第28条 日本臣民は安寧秩序を妨けす及臣民たるの義務に背かさる限に於て信教の自由
を有す
第29条 日本臣民は法律の範囲内に於て言論著作印行集会及結社の自由を有す
第30条 日本臣民は相当の敬礼を守り別に定むる所の規程に従ひ請願を為すことを得
第31条 本章に掲けたる条規は戦時又は国家事変の場合に於て天皇大権の施行を妨くる
ことなし
第32条 本章に掲けたる条規は陸海軍の法令又は紀律に牴触せさるものに限り軍人に準
行す
第3章 帝国議会
第33条 帝国議会は貴族院衆議院の両院を以て成立す
第34条 貴族院は貴族院令の定むる所に依り皇族華族及勅任せられたる議員を以て組織

第35条 衆議院は選挙法の定むる所に依り公選せられたる議員を以て組織す
第36条 何人も同時に両議院の議員たることを得す
第37条 凡て法律は帝国議会の協賛を経るを要す
第38条 両議院は政府の提出する法律案を議決し及各々法律案を提出することを得
第39条 両議院の一に於て否決したる法律案は同会期中に於て再ひ提出することを得す
第40条 両議院は法律又は其の他の事件に付各々其の意見を政府に建議することを得但

其の採納を得さるものは同会期中に於て再ひ建議することを得す
第41条 帝国議会は毎年之を召集す
第42条 帝国議会は三箇月を以て会期とす必要ある場合に於ては勅命を以て之を延長す
ることあるへし
第43条 (1)臨時緊急の必要ある場合に於て常会の外臨時会を召集すへし
(2)臨時会の会期を定むるは勅命に依る
第44条 (1)帝国議会の開会閉会会期の延長及停会は両院同時に之を行ふへし
(2)衆議院解散を命せられたるときは貴族院は同時に停会せらるへし
第45条 衆議院解散を命せられたるときは勅命を以て新に議員を選挙せしめ解散の日よ

五箇月以内に之を召集すへし
第46条 両議院は各々其の総議員三分の一以上出席するに非されは議事を開き議決を為

ことを得す
第47条 両議院の議事は過半数を以て決す可否同数なるときは議長の決する所に依る
第48条 両議院の会議は公開す但し政府の要求又は其の院の決議に依り秘密会と為すこ
とを得
第49条 両議院は各々天皇に上奏することを得
第50条 両議院は臣民より呈出する請願書を受くることを得
第51条 両議院は此の憲法及議院法に掲くるものゝ外内部の整理に必要なる諸規則を定
むることを得
第52条 両議院の議員は議院に於て発言したる意見及表決に付院外に於て責を負ふこと
なし但し議員自ら其の言論を演説刊行筆記又は其の他の方法を以て公布したるときは一般
の法律に依り処分せらるへし
第53条 両議院の議員は現行犯罪又は内乱外患に関る罪を除く外 会期中其の院の許諾
なくして逮捕せらるゝことなし
第54条 国務大臣及政府委員は何時たりとも各議院に出席し及発言することを得
第4章 国務大臣及枢密顧問
第55条 (1)国務各大臣は天皇を輔弼し其の責に任す
(2)凡て法律勅令其の他国務に関る詔勅は国務大臣の副署を要す
第56条 枢密顧問は枢密院官制の定むる所に依り天皇の諮詢に応へ重要の国務を審議す
第5章 司法
第57条 (1)司法権は天皇の名に於て法律に依り裁判所之を行ふ
(2)裁判所の構成は法律を以て之を定む
第58条 (1)裁判官は法律に定めたる資格を具ふる者を以て之に任す
(2)裁判官は刑法の宣告又は懲戒の処分に由るの外其の職を免せらるゝことなし
(3)懲戒の条規は法律を以て之を定む
第59条 裁判の対審判決は之を公開す但し安寧秩序又は風俗を害するの虞あるときは法
律に依り又は裁判所の決議を以て対審の公開を停むることを得
第60条 特別裁判所の管轄に属すへきものは別に法律を以て之を定む
第61条 行政官庁の違法処分に由り権利を傷害せられたりとするの訴訟にして別に法律
を以て定めたる行政裁判所の裁判に属すへきものは司法裁判所に於て受理するの限に在ら

第6章 会計
第62条 (1)新に租税を課し及税率を変更するは法律を以て之を定むへし
(2)但し報償に属する行政上の手数料及其の他の収納金は前項の限に在らす
(3)国債を起し及予算に定めたるものを除く外国庫の負担となるへき契約を為すは帝国議
会の協賛を経へし
第63条 現行の租税は更に法律を以て之を改めさる限は旧に依り之を徴収す
第64条 (1)国家の歳出歳入は毎年予算を以て帝国議会の協賛を経へし
(2)予算の款項に超過し又は予算の外に生したる支出あるときは後日帝国議会の承諾を求
むるを要す
第65条 予算は前に衆議院に提出すへし
第66条 皇室経費は現在の定額に依り毎年国庫より之を支出し将来増額を要する場合を
除く外帝国議会の協賛を要せす
第67条 憲法上の大権に基つける既定の歳出及法律の結果に由り又は法律上政府の義務
に属する歳出は政府の同意なくして帝国議会之を廃除し又は削減することを得す
第68条 特別の須要に因り政府は予め年限を定め継続費として帝国議会の協賛を求むる
ことを得
第69条 避くへからさる予算の不足を補ふ為に又は予算の外に生したる必要の費用に充
つる為に予備費を設くへし
第70条 (1)公共の安全を保持する為緊急の需用ある場合に於て内外の情形に因り政府は
帝国議会を召集すること能はさるときは勅令に依り財政上必要の処分を為すことを得
(2)前項の場合に於ては次の会期に於て帝国議会に提出し其の承諾を求むるを要す
第71条 帝国議会に於て予算を議定せす又は予算成立に至らさるときは政府は前年度の
予算を施行すへし
第72条 (1)国家の歳出歳入の決算は会計検査院之を検査確定し政府は其の検査報告と倶
に之を帝国議会に提出すへし
(2)会計検査院の組織及職権は法律を以て之を定む
第7章 補則
第73条 (1)将来此の憲法の条項を改正するの必要あるときは勅命を以て議案を帝国議会
の議に付すへし
(2)此の場合に於て両議院は各々其の総員三分の二以上出席するに非されは議事を開くこ
とを得す出席議員三分の二以上の多数を得るに非されは改正の議決を為すことを得す
第74条 (1)皇室典範の改正は帝国議会の議を経るを要せす
(2)皇室典範を以て此の憲法の条規を変更することを得す
第75条 憲法及皇室典範は摂政を置くの間之を変更することを得す
第76条 (1)法律規則命令又は何等の名称を用ゐたるに拘らす此の憲法に矛盾せさる現行
の法令は総て遵由の効力を有す
(2)歳出上政府の義務に係る現在の契約又は命令は総て第67条の例に依る

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にほんこく‐けんぽう【日本国憲法

第二次大戦の敗戦後、大日本帝国憲法を全面的に改正した憲法。一九四六年一一月三日
公布、翌四七年五月三日から実施。国民主権、徹底した平和主義、基本的人権の尊重を
基調とし、象徴としての天皇、国権の最高機関としての国会、行政権の主体たる内閣の
国会に対する連帯責任、戦争の放棄、基本的人権の確立強化を目的とした国民の権利義
務に関する詳細な規定、独立した新しい司法制度、地方自治の確立などがその特色。

前 文
 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの
子孫のために,諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢
を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、
ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その
権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍
の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切
の憲法、法令及び詔勅を排除する。
 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚す
るのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持
しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に
除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、
全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有するこ
とを確認する。
 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないので
あつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を
維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを
誓ふ。

第1章 天皇
第1条〔天皇の地位・国民主権〕
天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日
本国民の総意に基く。
第2条〔皇位の世襲と継承〕
皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継
承する。
第3条〔国事行為に対する内閣の助言・承認と責任〕
天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任
を負ふ。
第4条〔天皇の権能の限界、国事行為の委任〕
(1)天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しな い。
(2)天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
第5条〔摂政〕
皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する
行為を行ふ。この場合には、前条第1項の規定を準用する。
第6条〔天皇の任命権〕
(1)天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
(2)天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
第7条〔国事行為〕
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
1 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
2 国会を召集すること。
3 衆議院を解散すること。
4 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
5 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使
の信任状を認証すること。
6 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
7 栄典を授与すること。
8 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
9 外国の大使及び公使を接受すること。
10 儀式を行ふこと。
第8条〔皇室の財産授受〕
皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の
議決に基かなければならない。
第2章 戦争の放棄
第9条〔戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認〕
(1)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争
と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを
放棄する。
(2)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権
は、これを認めない。
第3章 国民の権利及び義務
第10条〔国民の要件〕
日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
第11条〔基本的人権の普遍性、永久不可侵性、固有性〕
国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人
権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第12条〔自由及び権利の保持責任と濫用禁止〕
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しな
ければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉の
ためにこれを利用する責任を負ふ。
第13条〔個人の尊重と公共の福祉〕
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利につ
いては、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第14条〔法の下の平等、貴族制度の禁止、栄典〕
(1)すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地によ
り、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
(2)華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
(3)栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこ
れを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
第15条〔公務員の選定・罷免権、全体の奉仕者性、普通選挙・秘密投票の保障〕
(1)公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
(2)すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
(3)公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
(4)すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に
関し公的にも私的にも責任を問はれない。
第16条〔請願権〕
何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の
事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別
待遇も受けない。
第17条〔国及び公共団体の賠償責任〕
何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国
又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
第18条〔奴隷的拘束・苦役からの自由〕
何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意
に反する苦役に服させられない。
第19条〔思想・良心の自由〕
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
第20条〔信教の自由、政教分離〕
(1)信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を
受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
(2)何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
(3)国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
第21条〔集会・結社・表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密〕
(1)集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
(2)検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第22条〔居住・移転・職業選択の自由、外国移住・国籍離脱の自由〕
(1)何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
(2)何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
第23条〔学問の自由〕
学問の自由は、これを保障する。
第24条〔家族生活における個人の尊厳・両性の平等〕
(1)婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本とし
て、相互の協力により、維持されなければならない。
(2)配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他
の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなけれ
ばならない。
第25条〔国民の生存権、国の社会保障的義務〕
(1)すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
(2)国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進
に努めなければならない。
第26条〔教育を受ける権利・教育の義務〕
(1)すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受け
る権利を有する。
(2)すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせ
る義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
第27条〔勤労の権利義務、勤労条件の基準、児童酷使の禁止〕
(1)すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
(2)賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
(3)児童は、これを酷使してはならない。
第28条〔労働基本権〕
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
第29条〔財産権〕
(1)財産権は、これを侵してはならない。
(2)財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
(3)私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
第30条〔納税の義務〕
国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。
第31条〔法定手続の保障〕
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他
の刑罰を科せられない。
第32条〔裁判を受ける権利〕
何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
第33条〔逮捕の要件〕
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理
由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
第34条〔抑留・拘禁の要件、拘禁理由の開示〕
何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、
抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、
その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
第35条〔住居の不可侵、捜索・押収の要件〕
(1)何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのな
い権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所
及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
(2)捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
第36条〔拷問・残虐刑の禁止〕
公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
第37条〔刑事被告人の諸権利〕
(1)すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利
を有する。
(2)刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自
己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
(3)刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被
告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
第38条〔不利益供述の不強要、自白の証拠能力〕
(1)何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
(2)強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白
は、これを証拠とすることができない。
(3)何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は
刑罰を科せられない。
第39条〔遡及処罰の禁止・二重処罰の禁止〕
何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責
任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。
第40条〔刑事補償〕
何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、
国にその補償を求めることができる。

 

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第4章 国会
第41条〔国会の地位・立法権〕
国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
第42条〔両院制〕
国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。
第43条〔両議院の組織〕
(1)両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
(2)両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。
第44条〔議員及び選挙人の資格〕
両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、
社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。
第45条〔衆議院議員の任期〕
衆議院議員の任期は、4年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了
する。
第46条〔参議院議員の任期〕
参議院議員の任期は、6年とし、3年ごとに議員の半数を改選する。
第47条〔選挙に関する事項の法定〕
選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
第48条〔両院議員兼職の禁止〕
何人も、同時に両議院の議員たることはできない。
第49条〔議員の歳費〕
両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。
第50条〔議員の不逮捕特権〕
両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕
された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。
第51条〔議員の免責特権〕
両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。
第52条〔常会〕
国会の常会は、毎年1回これを召集する。
第53条〔臨時会〕
内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の4分の
1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
第54条〔衆議院の解散と特別会、参議院の緊急集会〕
(1)衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、
その選挙の日から30日以内に、国会を召集しなければならない。
(2)衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急
の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
(3)前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の
後10日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。
第55条〔議員の資格争訟〕
両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるに
は、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする。
第56条〔定足数、表決数〕
(1)両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決するこ
とができない。
(2)両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこ
れを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
第57条〔会議の公開、会議録の公表、表決の記載〕
(1)両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の3分の2以上の多数で議決したとき
は、秘密会を開くことができる。
(2)両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認
められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
(3)出席議員の5分の1以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しな
ければならない。
第58条〔役員の選任・議院規則・懲罰〕
(1)両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
(2)両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内
の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の
3分の2以上の多数による議決を必要とする。
第59条〔法律の制定、衆議院の優越〕
(1)法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律と
なる。
(2)衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の
3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
(3)前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを
求めることを妨げない。
(4)参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて60日
以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすこと
ができる。
第60条〔衆議院の予算先議と優越〕
(1)予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
(2)予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところに
より、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決し
た予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて30日以内に、議決しないときは、衆
議院の議決を国会の議決とする。
第61条〔条約の承認と衆議院の優越〕
条約の締結に必要な国会の承認については、前条第2項の規定を準用する。
第62条〔議院の国政調査権〕
両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録
の提出を要求することができる。
第63条〔国務大臣の議院出席の権利・義務〕
内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、
何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のた
め出席を求められたときは、出席しなければならない。
第64条〔弾劾裁判所〕
(1)国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁
判所を設ける。
(2)弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。
第5章 内閣
第65条〔行政権と内閣〕
行政権は、内閣に属する。
第66条〔内閣の組織、文民資格、連帯責任〕
(1)内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大
臣でこれを組織する。
(2)内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
(3)内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。
第67条〔内閣総理大臣の指名、衆議院の優越〕
(1)内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他
のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
(2)衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、
両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国
会休会中の期間を除いて10日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の
議決を国会の議決とする。
第68条〔国務大臣の任命、罷免〕
(1)内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ば
れなければならない。
(2)内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。
第69条〔内閣不信任決議と解散又は総辞職〕
内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日

内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
第70条〔総理の欠缺又は総選挙と内閣の総辞職〕
内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたとき
は、内閣は、総辞職をしなければならない。
第71条〔総辞職後の内閣による職務執行〕
前2条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を
行ふ。
第72条〔内閣総理大臣の職権〕
内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国
会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。
第73条〔内閣の職権〕
内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
1 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
2 外交関係を処理すること。
3 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経るこ
とを必要とする。
4 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。5 予算を作成して
国会に提出すること。
6 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、
特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
7 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
第74条〔法律・政令の署名・連署〕
法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要
とする。
第75条〔国務大臣の訴追〕
国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これが
ため、訴追の権利は、害されない。
第6章 司法
第76条〔司法権・裁判所、特別裁判所の禁止、裁判官の独立〕
(1)すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属
する。
(2)特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふ
ことができない。
(3)すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ
拘束される。
第77条〔最高裁判所の規則制定権〕
(1)最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関
する事項について、規則を定める権限を有する。
(2)検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
(3)最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任すること
ができる。
第78条〔裁判官の身分保障〕
裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合
を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこ
れを行ふことはできない。
第79条〔最高裁判所の構成、国民審査、定年、報酬〕
(1)最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構
成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
(2)最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民
の審査に付し、その後10年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査
に付し、その後も同様とする。
(3)前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、
罷免される。
(4)審査に関する事項は、法律でこれを定める。
(5)最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
(6)最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、
これを減額することができない。
第80条〔下級裁判所の裁判官、任期、定年、報酬〕
(1)下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命
する。その裁判官は、任期を10年とし、再任されることができる。但し、法律の定める
年齢に達した時には退官する。
(2)下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、
これを減額することができない。
第81条〔違憲審査制〕
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する
権限を有する終審裁判所である。
第82条〔裁判の公開〕
(1)裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
(2)裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した
場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関す
る犯罪又はこの憲法第3章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常に
これを公開しなければならない。
第7章 財政
第83条〔財政処理の基本原則〕
国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。
第84条〔租税法律主義〕
あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件による
ことを必要とする。
第85条〔国費の支出及び国の債務負担〕
国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。
第86条〔予算の作成と議決〕
内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければ
ならない。
第87条〔予備費〕
(1)予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任
でこれを支出することができる。
(2)すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。
第88条〔皇室財産・皇室費用〕
すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経な
ければならない。
第89条〔公の財産の支出・利用提供の制限〕
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、
又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその
利用に供してはならない。
第90条〔決算審査、会計検査院〕
(1)国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、
その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
(2)会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。
第91条〔内閣の財政状況報告〕
内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年1回、国の財政状況について報告し
なければならない。

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