「ローディスの騎士」 The Knight of Lodis 《序章》 |
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ここにあるのはただ始まりばかり。 地をはう根、わき出る水のごとく… 大いなる風の手、あるいは太陽の炎のように… |
「ローディスの騎士」 The Knight of Lodis 《第1章》 |
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ローディス教国が「教化」の名の元に大々的な対外政策を開始して、もう十数年になる。 神都の騎士団、および「譜代」の属国を中心に行われたこの進出は、布教というにはあまりに侵略的な 色を帯びており、実際、武力による衝突−制圧も多く見られた。 しかしその一方で、無条件にローディスへの服従を受け入れる国があったこともまた事実である。 教国はローディス教の国教化と納税を義務づけたが、それぞれの領土における自治権を認めており、 さらに、各領内で深刻な問題が発生した場合、資金や武装など、様々な面における支援をも約束した。 圧倒的な力の差を前にみすみす犠牲をはらうより、大国の保護下に入ろうと考えた統治者がいたとて、 なんら不思議ではなかったのである。 …小さな争いが絶えることはなかったであろう。 が、ゼテギネアという時代全体を通してみれば、それは春の海のようにおだやかな時期であった。 |