blockquote要素とq要素

引用を明示するHTML/XHTMLの要素型は、blockquote要素q要素です[HTML4.01]。パラグラフなどのブロック(まとまり)ごと引用する場合はblockquote要素、ひとつのブロック(まとまり)に満たない断片的な引用の場合はq要素としてマーク付けします。

<blockquote>
<p>今日は7月7日、七夕です。笹に短冊を吊るそうとしましたが、
通りすがりのパンダに笹を食べられてしまいました。</p>
</blockquote>
<p>なにこの例文。<q>通りすがりのパンダ</q>とかありえないだろ。</p>

HTML4.01及びHTML5の仕様では、文書制作者がq要素の内容に引用符を付けるべきではない、ということになっています[HTML4.01]/[HTML5]

HTML5では、q要素なしで明示的に引用符を使用することも、q要素の使用と同様に正当です[HTML5]

出典の明示

引用の際には出典を明示する必要があります[著作権法]HTMLで出典を明示する手段として用意されているのは、cite属性とcite要素です[HTML4.01]

cite属性

出典を明示する第一の方法は、ウェブページや書籍が持つ固有のURIを、blockquote要素やq要素のcite属性に記述することです。

<blockquote 
  cite="http://www.interq.or.jp/leo/fer/net/site/2008/html-02.html">
<p>今日は7月7日、七夕です。笹に短冊を吊るそうとしましたが、
通りすがりのパンダに笹を食べられてしまいました。</p>
</blockquote>
<p>なにこの例文。
<q cite="http://www.interq.or.jp/leo/fer/net/site/2008/html-02.html">
通りすがりのパンダ</q>とかありえないだろ。</p>

cite属性は、HTML4.01でプログラムにも明確な形で引用部分と出典を結びつける唯一の方法です。しかし、この方法で明示できるのは引用元のURIだけなので、引用元のタイトルや著作者名を明示することはできません。

引用元のタイトルや著作者名を示す方法としては、まずtitle属性が考えられます。

<blockquote 
  cite="http://www.interq.or.jp/leo/fer/net/site/2008/html-02.html"
  title="幻想夢, 2008, 『div要素とspan要素について』">
<p>今日は7月7日、七夕です。笹に短冊を吊るそうとしましたが、
通りすがりのパンダに笹を食べられてしまいました。</p>
</blockquote>
<p>なにこの例文。
<q cite="http://www.interq.or.jp/leo/fer/net/site/2008/html-02.html"
   title="幻想夢, 2008, 『div要素とspan要素について』">
通りすがりのパンダ</q>とかありえないだろ。</p>

ただし、blockquote要素やq要素のtitle属性が出典を意味するという規定はありません。したがって、title属性の内容が出典を示していると判断できるのは人間だけです。プログラムには、title属性の内容が引用部分の関連情報であることしかわかりません。

また、cite属性やtitle属性の内容を人間の読者が簡単に利用できるかどうかは、読者の環境に依存します。cite属性をリンクとして利用可能にすることは、仕様上、必須ではありません。

cite要素

文章の中で出典を示す場合は、cite要素としてマーク付けします。

<p><cite>新約聖書</cite>には、<q>愛は決して滅びない</q>という
有名な一節があります。結婚式などで耳にした人も多いかもしれません。</p>

cite要素と引用部分のあいだには明確な結びつきが存在しない、という点には注意が必要です。もちろん人間の目で見れば結びつきは明らかですが、プログラムはcite要素と引用部分を関連付けて処理することができません。

しかし、読者の利便や著作権法を考慮すると、たとえば以下のようにマーク付けすることは望ましいでしょう。

<blockquote 
  cite="http://www.interq.or.jp/leo/fer/net/site/2008/html-01.html"
  title="幻想夢『日本語文におけるp要素』">
<p>パラグラフの内容は、そのパラグラフの主題によって限定されます。
基本的に、主題に関係のない情報がパラグラフに含まれてはいけません。
パラグラフの主題を一文にまとめたものを、
<dfn>トピック・センテンス</dfn>と呼びます。</p>
</blockquote>
<div class="cite">幻想夢, 2008, 
<cite><a href="http://www.interq.or.jp/leo/fer/net/site/2008/html-01.html">
日本語文におけるp要素</a></cite>
</div>

このようにマーク付けしておけば、人間の操作でも機械処理でも出典を辿りやすくなります。

HTML5では、引用文とその帰属を明確に関連付けるための方法が新たに追加されています[HTML5]。が、まだ仕様書をちゃんと読んでいないので、ここでは言及しません。

引用要素の中にあるcite要素はどう扱われるか

cite要素をblockquote要素の内容に含めると、引用部分と出典(cite要素)の結びつきがプログラムにも明確になると考える人もいます[神崎, 1996-2003]

出典を示すcite要素の位置は、文法的には特に定められていません。ただし、この例のようにblockquote要素内で引用元を示すと、引用部分をコピー/ペーストする、あるいはスクリプトで引用部分を抽出するといった操作を行う時に、出典が不明にならないというメリットがあります。逆にcite要素を外に置くと、引用部分(blockquote)と出典を直接結びつける方法はなく、プログラムはその関係を単純に理解することはできません。要素をどこにおくべきか判断に迷う時は、どうやって利用されるのかを想像してみると、答えが出てくることがあります。

しかし、プログラムがblockquote要素内のcite要素を、そのblockquote要素の出典を示すものと解釈してしまうと、次のように引用文の内容が引用と出典を含む場合に困ったことになります。

<blockquote>
<p><cite>新約聖書</cite>には、<q>愛は決して滅びない</q>という
有名な一節があります。結婚式などで耳にした人も多いかもしれません。</p>
</blockquote>
<p>こういう場合はどうなるのかな……。</p>

この例では、新約聖書は明らかにblockquote要素の出典を示してはいませんので、機械的に結びつけられると都合が悪いかもしれません。

ただし、HTML5ではこのような場合も含めて、引用文とその帰属を示す方法がいくつか用意されており、blockquote要素内のcite要素で出典を示すことが認められています[HTML5]

出所明示義務について

著作権法第四十八条の規定により、引用には出所明示義務が伴います。ここでいう出所には、引用した著作物の題号などに加えて、著作者名も含まれます[著作権法]

前項の出所の明示に当たつては、これに伴い著作者名が明らかになる場合及び当該著作物が無名のものである場合を除き、当該著作物につき表示されている著作者名を示さなければならない。

cite属性などで引用元のURIを示しただけでは、多くの場合、出所明示義務を果したことになりません。出所明示義務を果すためには、著作者名が存在しない場合や、引用部分に著作者名の表示がある場合を除いて、なんらかの形で著作者名を示しておく必要があります。なお、出所明示義務違反は非親告罪(らしい)です。

参考文献

[HTML4.01]
W3C, 1999, HTML 4.01 Specification, 及びその日本語訳.
[HTML5]
W3C, 2014, HTML5 A vocabulary and associated APIs for HTML and XHTML, 及びその日本語訳.
著作権法, 昭和四十五年五月六日法律第四十八号, 2008年7月27日確認.
[神崎, 1996-2003]
神崎 正英, 1996-2003, 強調,引用,グループ化,画像などの要素, 2008年7月27日確認.