2000年10月27日、我が社(川崎製鉄水島技術研究所実験棟2 階作業場)にフクロウが迷い込んだ、作業場の薄暗い所に潜んでいたこのフクロウ(以下、アオバズク)は近づいた作業者に驚いたのか突然飛び立ち、外へ飛び出そうと窓に向かって突進しガラスに激突して落下したが再び飛び立ち、同じ場所の窓ガラスに再度激突し落下したところを作業員に保護された。アオバズクは外傷は見られないものの、激突のショックで脳震盪を起こしたのか、嘴を傷めたのか、保護直後には猛禽類に見られる独特の攻撃性、精悍さがみられないため、傷が癒えるまで暫く様子を見ることにした。 このアオバズクが飛び立つまでの介護記録 |
保護した「ふくろう」をアオバズクと特定した理由 | |||
1.体長が約25cm前後である。 2.目の色(光彩)が金色である。 3.足(指に近い部分)に毛が生えていない。 4.羽角(耳のように見える飾り羽)がない。 |
![]() ひっきりなしにホーホー、ホーホーと鳴くアオバズクに対し フクロウ はゴロッコホッホ、またはホ、ホ、ゴロッコホッホ(聞く人や地方によって表現が異なる)と啼くだけで、次に啼くまでしばらく時間があります。アオバズクは、トンボ蛾など昆虫類を捕らえて、ひっきりなしに巣に運び雛を育てる。南方から日本に渡って子育てをし、日本で生まれ、日本で育ったアオバズクは秋には越冬のため南に帰る。したがつて冬には日本にいませんが最近は、国内で越冬する個体もいるようです。それに対して、フクロウは、四季を通じて民家に近い山里に棲みネズミを主食とする。 |
10月28日(土) フクロウを保護した時の様子と処置についてフクロウ研究家や動物園などに問い合わせた結果、しばらく様子を見て、窓ガラスに激突した衝撃により嘴や羽に異常がなく、元気に飛び立てそうなら山野に放してやってくださいとのこと。当然そのつもりでいるが保護される鳥類は何らかの理由があってそのままでは自然では生き残れないことが多い、春まで面倒を見て餌が豊富になってから自然に帰す方がよいのではとの専門家のコメントもあり、暫く様子を見ることにする。早速フクロウ小屋の作成にとりかかる。 |
![]() 押入れを利用した小屋 |
![]() 小屋の中のアオバズク |
![]() アオバズクの勇姿 |
![]() 動物園 : この時期から春先にかけては、餌となる昆虫類が少ないので、ササミ(鶏肉)や、ペットショップで売っているコオロギ、ミールウオームなどを与える。 フクロウ研究家 : フクロウの種類により餌は異なる、アオバズクは ヒゲコガネ、ガムシ、タガメ、クワガタムシ、アキアカネ、オニヤンマ、シオカラトンボ、バッタ、トビケラ、セミやキビタキなどの小鳥、テングコウモリ、など、これらが手に入らない時は、ペットショップなどで売っているミールウオームやササミ(鶏肉)を与える。二十日ネズミが手に入れば、これを与える。 フクロウ愛好家 (インターネットで検索) 秋から冬にかけては昆虫などなかなか手に入りません。そういう時は、釣り餌屋に行くとミールウォームという「ウジ虫」を売っています。フスマ(麦糠)をバケツに入れてミールウオームを5.6匹放り込んで置けばどんどん増える生きもの バードウォッチャーは、これで餌付けをして写真を取ったりするのに用います。 息をするのがせいぜいのような極度に弱っているものについては、先ず保温、そしてごく少量の水か、または市販の高カロリー飲料をくちばしの横から湿してやります。一度に沢山与えると、窒息してしまいますから要注意です。 チョボチョボ飲んでいるようでしたら、しばらく時間をおいてまた与えるといいでしょう。さらに状況がよくなったら、赤ちゃん用の総合ビタミン剤(水溶性)が あるのでそれを人間より薄めにして、体重比で与えるのもいいでしょう。 情報収集 このような情報はインターネットで検索するのが信頼性は別にして、詳しい情報(写真やイラストによる解説付き)を得ることが出来き便利。また、インターネットでは何度も繰り返し読むことが出来るので電話とは違いメモの必要も無い。動物園 ではこのような保護した鳥を引き取って面倒をみることは、忙しいこと、餌代に経費がかかる事などを理由に断るところが多いそうです。ちなみに岡山の池田動物園(岡山)では「持ってくれば面倒は見ます」との回答を得た。 |
10月29日(日) アオバズクに与える餌を野菜畑に捕りにいく、キャベツについた青虫(蝶の幼虫)約50匹とカエル2匹を捕らえ、このうちの青虫20匹とカエル1匹を与えた。夜半に与えた餌を確認したところカエルは喰ったようだが、青虫は籠(仮作りのダンボール)の餌箱から這い出して、あたり一面青虫がウヨウヨ、青虫は喰ったかどうか確認できなかった。 |
10月30日(月) 昨日与えた餌はあまり食べていないようだ。 捕えておいたカエルにビタミン剤を詰めて、スーパーで買ったササミ(親指大に切った2切れ)と共に与える。 |
10月31日(火): 小さいダンボールの箱では可愛そうなので、押し入れの半分をアオバズクのために開放し快適に過ごせるよう改造、新築の部屋に引越し させる。丸い目をさらに丸くして不思議そうに首を振りながら私を観察している。 昨日与えた餌(ササミ、カエル)は喰っていなかった。新しくササミを親指大に切って、ペットシ ョップで買ったミールウオームと共に与える。20時ごろ確認したところササミの一つをたべているようだ った。ミールウオームは数が減っているようだが、喰ったかどうかは確認できない。ササミとミールウオー ムを新しいのと取り替える。 |
11月1日(水) 与えたササミは喰っていない。ミールウオームは喰ったかどうか(ミールウオームは5mm程度の小さいもので仮死状態でフスマと糠に混ぜて与えるため)確認できない。 |
11月2日(木) 生きているコオロギを与える。コオロギはサルなどの餌としてペットショップで年中生きた状態で売っている。このコオロギが好物なのか、それとも昨日、餌を口にしなかったせいか与えた直後に喰ったようだ。 窓ガラスに激突した時に嘴を傷めたのか食は細いように思われる。 |
![]() フクロウとミミズクは専門家からみれば”おふくろ”と”紙ぶくろ”ほどの違いがあるそうですが、一般に耳があるからミミズク、耳のないのがフクロウ??? と言われていますが耳のあるフクロウもいます。逆に耳の無いミミズクもいます。実際にはミミズクにもフクロウにも耳はあります。ミミズクの耳のように見えるのは頭の飾り羽根(羽角)のことです。例外としてアオバズクは「ズク」がつき、つまりミミズクのことですが飾り羽(羽角)耳はありません。また、「ズク」の付かないシマフクロウにも、羽角(ハカク)があり、これが混乱の原因となっているようです。 人々の生活とフクロウ 国や地方、時代によりフクロウに対するとらえ方は違いますが、ギリシャでは学問の神様の使いをしたのがフクロウで、以来学問の神様といわれるようになり、これが世界に広まっていったようです。西洋ではフクロウを良いイメージでとらえていて、世界最初のコインにもフクロウがデザインされていて、このことからもフクロウとの関係をうかがい知ることが出来る。 日本でも時代や地方によって異なるが、学問の神様とか森の知恵者とか英知の象徴のように良いイメージでとらえている地方が多いようです。北海道のアイヌでは、シマフクロウをコタンクルカムイといって、部落の守り神とし民族最高の神様として崇められている。 本州では逆に「フクロウが鳴くと人が死ぬ」などと縁起の悪い鳥としている地方もある。 ネズミを食べてくれるフクロウが農業の神様と言われたりと、夜活動し、実態がよく解らないので不吉な鳥など変遷もあるようです。中国では一般に不吉な鳥として扱われているようです。 実態の理解できない、しかも神秘的な生き物などは、信仰や民話の対象となったりその時代の吉凶の原因としたり、逆に神として崇められることが多いようだ。 |
11月3日 (金) 昨日与えたコオロギ3匹は姿が見えない。糠にまみれたミルウォームは数を確認できず食ったかどうかも確認できないが、少なくなったように感じた。とにかく一安心。 |
11月4日 (土) ”WoodCastle”無農薬有機栽培研究農場(私の管理する野菜畑)でバッタ数匹、カエル3匹コオロギ3匹、キャベツについた青虫数十匹を採取した。 新しく買った鶏肉を親指大にし2切れとコオロギ3匹を一緒に与える。 夜20時頃確認すると、コオロギ3匹は食ったようだが、鶏肉は与えた時の状態で残っている。 |
11月5日 (日) アオバズク君どうも鶏肉は好みに合わないらしいので、東岡山のペットショップへ冷凍マウスを買いに行く。この冷凍マウスは爬虫類の餌に改良されたものとのこと。 冷凍マウスと、やはり冷凍されたウズラの雛、ミルウォ―ムを買い求めた。 夕方この冷凍マウスとウズラ、ミルウォームを与える。 冷蔵庫の中には、冷凍マウス、ウズラ、ミルウォーム、バッタ、カエルが入っている まるで生態実験室の冷蔵庫だ。ゾーっとするような姿のこの物体、これを電子レンジで解凍したり、熱湯で戻したりして与える。 |
![]() 自然界では生きた小動物(アオバズクの場合、主に昆虫)しか食べない、飼育のためフクロウの餌を確保するのは困難、特に秋から冬にかけては餌となる虫の採取も困難になるため、主にペットショップで購入することになる。最近はワニ、トカゲ、蛇などの両生類、爬虫類を飼う人が増えていため、ペットショップには常時、冷凍マウス、ウズラ、コオロギ、ミルウォームを販売している。これらをアオバズクの餌として買い求めている、 したがって我が家の冷蔵庫には当然、これら、マウス、ウズラ、ミルウォームが異様な姿で冷やされている。 |
11月6日(月) 昨日買った冷凍マウスを解凍して与えるため電子レンジを使用。レンジの中で熱で変化するマウスが異様な姿をさらしている。完全には解凍されないまま取り出して与える。深夜そっと餌箱を覗いたが食欲がないのかあまり食ってないようだった。私もレンジの中のマウスの姿が脳裏に残り食欲がなく、食事も取らずに就寝する。 |
11月7日(火) 会社帰りにペットショップへ寄りアオバズクの餌になりそうなものを物色。大きなサイズ(約3cm)のミルウォームを売っていたいたのでこのミルウォームとコオロギを買って帰りこれを与える。 |
11月8日(水) 4日(土)に捕えたカエルの腹にビタミン剤を詰めて与える。昨日与えたミルウォーム、コオロギは姿が見えない。 |
11月9日(木) 夕方、餌箱を覗くと餌箱の周辺で何かがうごめく気配を感じた。よく見ると昨日与えたミルウォームとコオロギだ。餌箱に居なかったので食ったと思っていたが、這い出していたようだ。竹バサミで拾い集めて深めの餌箱にいれて再び与える。 |
11月10日(金) 餌箱にはミルウォームが数匹、よく目を凝らしてみると餌箱の周りでミルウォームがうごめいている。 足元でも何かがうごめくのを感じる。見ると餌箱から這い出し、さらに小屋から這い出したミルウォームが畳の上を這いまわっている。餌箱に居なかったので当然、餌にしていたものだと思っていたが大半は這い出していたようだ。竹バサミで拾い集める。夜、寝る時に背中を虫が這い回るような感じがして寝つけない、アオバズクはとても素人の飼える鳥ではないようだ。雪の季節を迎える前に自然の森に放してやることにしよう。 |
11月11日(土) アオバズクとの短い期間、しかも押入れの薄暗い小屋の中でじっくりとその姿を見たことはなかったが、いざ放鳥となると、もう少しだけ面倒を見たい、育ててみたいと思う気持ちが強くなる、しかし、部屋の中をウジ虫やコオロギ、バッタが這い回る、ネズミは異様なすがたで横たわっている、異臭もするようになってきた。この状態の中で生活を続けるのは、とても耐えられそうにない。 放すには忍びないが、アオバズクのためにも自然に帰してやることにする。 備中松山城の近くの山で元気に育つことを祈りつつ放す。薄暗い林の中に姿を消した。さよなら!アオバズク! |
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2001年フクロウ子育て記 |