■イラク、パレスチナ、イラン■
中東における新たな動乱と新たな転換
            ジルベルト・アシュカル

−イラン爆撃のおそれ、パレスチナにおけるハマスの勝利、そしてイラクにおける「低強度」内戦と共に、中東は今、新たな動乱と新たな転換に入り込もうとしている。ジルベルト・アシュカルが、オンラインマガジンの「ステート・オブ・ネイチャー」(SoN)のインタビューに答える−IV編集部

−イラクにおける宗派的暴力の最近の激化に関して、自軍の撤退を遅らせるためにアメリカがイラク市民内部の紛争を煽っている、との疑念が高まっている。どう考えますか−

 ある意味でこれは、占領のまさに当初からあった問題だ。アメリカは、彼らに都合がよく見えた立場を選択している。それは、イラクにおける様々な層や相争う派閥間の調停者、という立場だ。そしてこの選択は彼らが作り上げた諸制度に移し変えられた。それはつまり、全くもって人口の3大部分、クルド、シーア派アラブ、スンニ派アラブの間での議席と権力の配分に大きく基礎を置いていた。
 この国の状況は昨年以降実際に極度に悪化した。この期間にアメリカは、1月の選挙結果として、当地の諸制度に関する掌握力を失い始めた。選出された議会はもはやアメリカの全面的な支配下にはない。そしてその時から我々は、イラクにある違いや分裂をそれが例え何であれ利用した、占領者による益々逆上に駆られた試みを目にすることになった。これはまさに、「分割統治」という極めて古典的な帝国の秘訣だ。

−これはどこに行着くと思いますか。それは国の3分割ということですか。それともあなたは、当面アメリカはそのような代案に準備ができていない、と思いますか−

 それは確かに1番目の選択肢ではないだろう。さらに私は、それがイラク原油の大部分を支配下に置くある種のシーア派国家に帰着する、という単純な理由ただ1つだけであったとしても、アメリカにとってそれが実際に次善の選択肢となる、という可能性にも疑いを持っている。そのような国家は、イランの親密な同盟国になる可能性があるだけであり、その時それは、主要な産油地帯がシーア多数の住民で占められているサウジアラビアを含む、この地域全体に危険に満ちた動きを解き放つことにつながるだろう。これは明確に、ワシントンの利害に合ったシナリオではない。さらにこれは、この地域全体を不安定化し、世界経済に極めて危険な諸結果をもたらすはずだ。例えばそれはもちろんのこととして、過去2年既に騰貴し始めている原油価格に直接影響を与えるだろう。
 それ故私は、分割シナリオ−何人かの者達によって、特にイラクにおけるプランBとして、何人かのネオコングループ内部で、定式化され、好感をもたれているとしても−が、アメリカの利害にとって好都合な結果を示すものとして、ワシントンが真剣に考える可能性のある何かである、とは信じていない。

−ハマスは選挙の勝利でどのように変化するだろうか−

 それに応えることは非常に難しい。それは、アメリカやヨーロッパの公式的対応を含む、多くの要素に依存しているからだ。現在のところ彼らは、彼らが取り得る様々な立場を試し、あるいは今も思案している最中だ。
 しかし私が言いたいことは以下のことだ。即ち、ハマスの現実の姿、その勝利を築き上げた道筋、それが体現している綱領に照らして考えたとき、何人かの人々が希望的観測から可能性があると信じている楽観的シナリオ−ハマスは、この人々が「現実」だと思っているものにまさに順応し、何らかの形でいわゆる「和平過程」に合流するだろうという−がありそうだと見ることは、私には殆ど不可能だ。私はそれが現実になるとは考えていない。何故ならば私は、ハマスがそのような早さで、引き換えとなるものが具体的には何もないまま、彼らの政治的独自性をまさに放棄しようとする、とは信じていないからだ。
 そして私は、主に以下の理由で楽観的シナリオが可能だとは信じていない。その理由とは、現在イスラエルには極めて頑強で極めて右翼的な多数派が存在し、さらに現実に、権力の座にあるシャロンとその継承者達はその心の底で、現在の状況に全く満足を感じている者達だ、ということだ。ハマスの勝利は彼らに、彼らに合った「最終的解決」を作成し、彼らの一方主義的な動きを前に進めるための口実を提供している。
 アメリカとEUそしてイスラエルのハマスの勝利に対する対応は、外交的孤立とパレスチナ自治政府に対する資金提供の停止で脅迫することとなった。しかしイランは、彼ら独自の資金援助を約束し、他のムスリム諸国がそれに続くよう呼びかけることをもって対応した。「アラブプレス」の最新報道は、ハマスが否定しているとはいえ、イランがハマスの政府に2億5000万ドルを提供する、と明らかにしている。これら全てが意味することは何だろうか。
 全くのところそれは、ハマス孤立化を狙った試みは現実にはそれほどの孤立化を意味せず、パレスチナ民衆が選出した政府を作り出し、まさに期待に反した結果となるだろう、ということを示している。そして、パレスチナにおけるハマスの勝利は、イラン、シリア、そして世界のこの地域におけるアメリカの敵全てにとっての大きな勝利であることも、また明白だ。彼らはこの勝利を無条件に喜んでいる。そしてイランはその結果として、この地域におけるもう1つの政治的切り札を提供され、既にそれを利用しつつある。
 イランは昨年の選挙のずっと前から実際にハマスを支援していた。そしてハマスは、イラン大統領の最近の扇動的な声明の後、イランとの連帯を示すことで返礼した。選挙の2、3週間前、ハマスはイラン大統領への支持を宣言し、ダマスカスで亡命生活を送っているハマスの指導者、メシャールは、テヘランを訪問しこの支持を確認した。
 イラン政府は今、金融保証という形で、パレスチナ民衆が必要なものを提供するつもりだと語っている。そしてそれは、アメリカが保護する親米のアラブ諸国ですらが、袋小路に追い込まれ、高値を競うテヘランとの競売に参入するよう強制されている理由なのだ−テヘランがハマスに対する唯一の支援者として立ち現れるかもしれない、と深刻に恐れを抱いているために−。
 これらの諸国の政府は、1方におけるハマスと他方におけるイスラエルとヨーロッパ、このような対立においてアラブの世論はもちろん全面的にハマスの側に立つ、と承知しているが故に、ハマスを支援せざるを得ないと感じている。

−レバノンの組織であるヒズボラは、レバノンからイスラエルを追い払ったことによって信用を得ている。この勝利がパレスチナにおけるハマスへの支持を力付けていると、私達はどの程度まで言うことができますか−

 ヒズボラの勝利の影響力は、占領に対するこの組織の闘いが2000年に南レバノンからイスラエルを撤退させる点で決定的な役割を果たした、という意味で、実のあるものだ。この勝利は当時、特に、オスロ過程が入り込んだ膠着状態、それに関する幻滅、そしてまたこの歩みに賭けたアラファト指導部に関する大きな幻滅、と対照された時、ハマスの政治的発言力を高める点で1つの役割を果たした。
 この2000年という年は、クリントン、バラク、アラファトのキャンプ・デービッド交渉、そこでの最終解決条件についての膠着、次いで同じ年の9月におけるエルサレムのアリエル・シャロンによる挑発、これらを目にした年であった。そしてこの挑発は、2001年2月のシャロン自身の勝利に力を与えた。これら全てが双方の側の姿勢における、イスラエル側ではもちろん、パレスチナ側では「第2次インティファーダ」の爆発をもって、1種の急進化を促進した。
 ハマスの勝利はこの政治的枠組みの直接の結果だ。もちろんここには、あらゆる観察者が強調してきた、そしてそれほどにも明白となっている諸要素が、特に、社会的サービスと人々への奉仕に捧げられた1つの組織としてのハマスの評判との対比における、パレスチナ自治政府の深い腐敗が加えられるべきである。

−確かにその意味では、ハマスはヒズボラに非常に似ている−

 ヒズボラに非常に似ているということを再確認したい。しかしこれら全てはもちろん、ハマスがその勝利をヒズボラに負っている、ということを意味しない。ヒズボラという要素は、ハマスの政治的発言力を高めることに1つの役割を果たした。しかしヒズボラという要素が全くなかったとしても、パレスチナとイスラエルの情勢における力学を理由として、ハマスは勝利を手にしたと思われる。

−コンドリーサ・ライスは、イラン反政府派への資金援助のために今年7500万ドルを要求した。彼女は、イラン対策のための「選択肢メニュー」を用意している、と明らかにしている。これらの選択肢とはどういうものですか。アメリカは最終的にそこから何を選び取るのだろうか−

 私の推測では、ワシントン自身が、彼らの最終的に確定しようとする選択肢を語ることができないと思われる。その理由は、ある意味であらゆる選択肢が全く危険に満ちているからであり、彼らが多くの要素を、イランの諸要素、イラクの諸要素、イランとイラクを越えた地域的諸要素と国際的諸要素を、深く考える必要があるからだ。この問題は極めて複雑だ。その理由は、少なくともサダム・フセインの打倒に関してイラクに存在していた条件との比較で、イランがはるかに堅固な体制の下にある、ということにある。フセインの打倒は、そのようなゲームの中ではずば抜けて容易なものだったのだ。
 イラン政権の打倒は、何よりも、ワシントンがイランに侵攻することは不可能、という単純な理由からはるかに困難な目標だ。この国はイラクよりもはるかに大きい。そしてアメリカが既にイラクで陥っている泥沼を我々が見るならば、それに加えてアメリカがイランを侵略することが問題外であることを理解できる。
 イランの体制は実際に実のある社会的基盤を持っているのだからそれだけ一層、イラクのようなやり方での体制転換はそれ故実践的には問題外だ。アーメディネジャドの勝利に帰着した前回の選挙は、詐欺的な選挙ではなかった。それはまやかし、あるいはその種のものでは全くなかった。もちろんそれは、同じ体制の2つの支柱間の対立だった。そして、この政治過程に参加を許された政治勢力の範囲は厳格に制限されていた。しかしそれはそれにもかかわらず、真実の競争だった。
 この結果は、イランの体制にはポピュリズムの一定の量で動員可能な、真実の社会的基盤があるという事実を反映していた。
 イランの体制をワシントンが政治的に攻撃すればするほど、事実上イランにとってそれはそれだけよいことになる。これが、西側で考えられているよりも頑なではないアーメディネジャドが、アメリカとイスラエルを挑発し続けている理由を説明する。この種の声明が広範な民衆的承認を見出している彼の故国とムスリム世界において、これは彼の手を強化するが故に、彼は彼が行っていることを正確に承知している。
 ワシントンが脅迫を超えてイランへの軍事的打撃を加えようとしているのならばそれは、そのような攻撃の軍事的結果はいかなる形でも保障されてはいないという事実とは別に、イランだけではなくこの全地域における、抗議の強力な波と一層の急進化に道を開く可能性が高い。それはそれ故アメリカにとって、極めて微妙かつ危険な状況だ。
 しかし他方ワシントンは、イランが核兵器確保に進むのであれば、イランははるかに強力な抑止力を持つことになり、従って地域においてそれだけ政治的に活動し術策を凝らす能力を高めることになるが故に、それはこの地域全域におけるアメリカの利害にとって非常に危険な展開となる、と信じている。
 それ故私は、ワシントンにおいて彼らは、もちろんあらゆる選択肢を今深く考えているということ、しかし、彼らが気楽に挑戦可能な軍事攻撃という分野においては何の選択肢もないということを確実と考えている。今のところ彼らは、ヨーロッパやロシアその他と共に、最低でもイランが核の問題で遂行可能な努力を何であれ可能な限り遅らせるために、この飴と鞭作戦、悪徳警官と良心的警官を交互に繰り出す作戦の活用を、依然として試みている。そこに込められている希望は、イラン内部で情勢が再び変わるかもしれないということ、そしてイランにおける何らかの反体制的な反対派の新たな高揚があるかもしれない、というものだ。
 これこそ、ライスの声明に実際に関わっているものだ。それは、ワシントンがこの体制をイラクにおけるようには外側から変えることはできないし、それ故彼らの選択肢は唯一反対勢力支援によって内部からの変革を試みることだけ、ということを意味している。
 しかし彼らにとっての問題は、アメリカによって直接支援された全ての反対派が、信用されていないということだ。イラクに対するアメリカの侵略以前にイランで起きた変化が何であれ、事実はその時以降、イラクにおける泥沼とさらに核問題に関するテヘランとの対立という光景の中で、アメリカの印象が急速に悪化するに至った、ということだ。

−イランとロシアの関係にあなたはどのような意味を与えますか−

 ロシアにとってイランは重要な資本だ。モスクワは、同盟国や保護を与える国家の広がりを大きく縮小された状態で取り残されている。そして、特に9・11後にプーティンがブッシュ政権に示した大いに協調的な姿勢にもかかわらず、どのような種類の譲歩によってもアメリカが借りを返すということはなかった。その背景の中でロシアは、影響力が及ぶ彼ら独自の地域を再度主張しようと試みている。そして中国との戦略的な関係を再度固めた。
 中央アジアにおいては、アメリカの影響力を阻止し、9・11とアフガニスタンへの侵略に引き続いて世界のこの部分にアメリカが入り込んだ後それを巻返そうと試みながら、アメリカとの直接的な競争に再度取り掛かった。例えば我々は、ウズベキスタンがアメリカに貸し与えた空軍基地を、最近いかにしてこの国に取り消させたか、を目にした。この全般的な枠組みの中で、ロシアのイランとの関係は極めて重要だ。
 しかし他方でロシアは、経済的にはドイツとの関係に深く依存している。そしてドイツもまたイランの問題を深く憂慮し、圧力を行使している以上、プーティンとロシア政府は、これらの要素全てと圧力を調停しようと試み続ける。しかし結論的に私は、イランには、ロシアがテヘランとの断絶を望まないというほどの、特に風が中東におけるアメリカの利益に完全に逆向きに吹いている現在の状況においては一層それを望まないというような、それだけの戦略的重要性がある、と考えている。

−2、3週間前、ハマスのカレド・メシャールがトルコを訪問した。この後にはイラク首相のイブラヒム・アル−ジャファリが続き、さらに数日後にはシーア派聖職者のモクタダ・アル−サドルがアンカラに到着することになっている。このあわただしい動きをあなたはどのように解釈しますか。中東で果たすことを期待されるトルコの役割とは何ですか−

 さてこの3つの訪問は、あるいは換言すればイラク問題とパレスチナ問題は、厳密には同じ問題ではない。ハマスはもちろん、国際的結び付きのある程度多様な網の目を築き上げようと、力を尽くして試みている。このようなものを彼らが以前に真剣に気に掛けることは決してなかった。
 西側世界からの追放という脅迫に彼らが直面している以上彼らは今、彼らが「自然な」関係を持ちえる諸政権、即ちアメリカに反目している政権、を超えた関係を築き上げるために、大変な努力を払って挑戦している。トルコはアメリカの公式的同盟国、NATOの1国であり、同時にその政権党がイスラム勢力である以上、それ故トルコへのこの訪問は重要だ。
 トルコはワシントンからのゴーサインの下にハマスを歓迎した、と私は確信している。ワシントンは、政治過程に入り込むためにワシントンが要求する譲歩を行うよう、ハマスを説き伏せるという希望を下に、彼らのムスリムの同盟国、サウジやその他の諸国を焚き付けている最中だ。
 しかしイラクに対しては問題は全く異なっている。そこではシーアとクルドの間に、激化一方の対立がある。イラクにおいては、クルド民族のアメリカとの同盟勢力は、ワシントンにとって最も信頼できる同盟勢力だ。そして最近この勢力は、その多数が現在モクタダ・アル−サドルとジャーファリとの連携から構成されている、シーアの連合勢力と一層対立を深めてきた。ご存知のようにモクタダ・アル−サドルは、シーア連合勢力の首相候補指名に当たって、ジャーファリを支援した。
 2005年の選挙以降2回目の選挙に向けてクルド連合勢力は、ワシントンのもう1人の中心的同盟者、イラクにおける傀儡のアラウィを来るべき政権に参加させるため、大いに努力を払っている。もっとも彼は今、昨年と比べはるかに弱体となっている。クルド勢力はそれを、シーア派連合の意思とテヘランの意思双方に逆らって試している最中だ。しかしテヘランは、極めて強くアラウィに反対している。
 現在進行中のこれらの権力闘争全てが、トルコへのイラク人訪問に結び付いている。周知のようにアンカラは、イラクのクルド連合勢力について深く懸念している。シーア派はそれ故、トルコにアラブスンニ派への圧力を行使させようと試みている。それは、アラブスンニ派をクルドから切り離すためだ。何故ならば、クルドとシーア間の対立においてアラブスンニ派は今、彼ら自身の機会をさらに改善し、クルドとの連携を下に分け前の大きな部分を得るために努力している最中だからだ。この全体的枠組みはさらに、ジャファーリのトルコ訪問に対して示されたクルド連合のあれほどの激しい反応が何故だったのかも、説明している。

−イスラム原理主義は、中東における反帝国主義の主要な形態となった。左翼的なあるいは進歩的な民族主義的反帝国主義勢力のこの地域における復活にとって何か望みはありますか−


 何よりも先ず私は、イスラム原理主義に対して反帝国主義というような呼び名を与えようとは思わない。反帝国主義は、そのような概念の中で物事を思考する勢力に対して用意される呼び名だ。しかしイスラム原理勢力は、我々がそのことによって、ビン・ラディンやザルカウィやその他の勢力のような、最も宗教的に凝り固まっている部分の呼び名を意味させているとするならば、反帝国主義という言葉は使わない。
 彼らは、世界についての極度に人種主義的かつ極度に宗教的に偏った考え方を明らかにする類の言語を使い、十字軍とユダヤ人と戦っている、と言っている。さらに、世界のこの地域における民衆に対する主要な抑圧者と戦っているとはいえ、彼らは同時に、特に彼らの社会的綱領と観点に関して、極めて反動的な種類の潮流なのだ。
 イラクはこのことをよく示す事例だ。何故ならばそこでザルカウィは、最低でも客観的に言って、正当な戦争と人がみなすかもしれない反占領の戦争に取り掛かっているだけではなく、どのような基準から見ても完全かつ極度に反動的な、極めて虐殺的で宗派的な戦争にも従事している。
 我々はもちろん、この種の病的な原理主義を、真の大衆的基盤をもつハマスやヒズボラやその他の勢力と同じ類型にくくることはできない。これらの諸組織は、彼ら独自の民族的なあるいは宗教的な基盤に立って、大衆の真に長期的な利害にとっては大きな不幸である彼らの反動的な社会的かつ政治的観点にもかかわらず、彼らの主要な外国の抑圧者に対する大衆的闘争を現に率いている。もちろんこれは、世界のこの地域における進歩的勢力の歴史的破綻の結果だ。しかし同時にそれは、先の進歩的潮流全てを攻撃するために、主に具体的にアメリカ自身によって、イスラム原理主義が徹底的に利用されてきた、という事実の結果でもある。
 現在我々はどのようにすれば、異なった種類の情勢を得ることができるのだろうか。何よりも先ず人は、反帝国主義の進歩的闘争は依然として世界という側面では可能であり、ラテンアメリカはその最良の証拠を提供している、という事実を強調すべきだろう。
 そこでは可能であり、今のところ中東では可能でないというこの現実には、その大きな部分をおそらくは、依然として広範な人気を得ているキューバの存在に帰すことができる。
 キューバを理由として革命や社会主義という理念全体はラテンアメリカにおいて、西側世界や東側において信用を失墜したような形では、信用を失ってはいない。キューバの印象がラテンアメリカでは今尚圧倒的に肯定的であるという事実は、左翼勢力の復活に対して実のある余地を残す助けとなっている。
 中東に付いて言えば私は、進歩的勢力が大衆的憤りや不満の表現を率いる情勢を我々が取り戻すまでには、一定の長期に亘る歴史的な時期を必要とするのではないか、との恐れを持っている。この過程は、先に私が述べてきた2つの過程の歴史的逆転となると思われる。即ちそれは第1に、原理主義運動が自分の番として、信用を失い、進歩的民族主義と左翼勢力が進んだ道である隠しようのない腐敗の状態に達する、という過程だ。そうであっても現在のところイスラム原理主義は、依然として攻勢にあり勝利を達成している。私はこれがこれ以上進むことはないと確信しているが、しかし流れが逆転するまでは何年もかかるかもしれない。
 第2に、左翼的な代替路線に対する新たな信頼を築き上げる必要がある。それを達成できるような種類の成功に達するという点で、世界のこの地域における左翼の何らかの部分に関して、あまり遠くない未来において何らかの可能性を私は目にしていない。もちろんその可能性は、世界の他の部分の経験によって力強く高められるかもしれない。ラテンアメリカは重要だ。しかし、そこは中東からあまりに離れている。その意味で私はむしろ、ヨーロッパにおける発展が極めて重要だ、と言いたい。
 ヨーロッパの政治的光景に起こることは何であれそれは、中東とムスリム世界の未来の政治的条件を形作るという点で、極めて重要となるだろう。これが意味することは以下のことだ。つまり、ヨーロッパで左翼勢力の重要な前進を実現する必要があるというだけではなく、ヨーロッパにおける移民出身のムスリム住民との関係で適切に振る舞い、イスラム嫌いに対決して闘う左翼勢力もまた必要とされる、ということだ。実際にこのイスラム嫌いは、西側諸国で非常に急速に発展しつつあるのだ。
 これら全ては多くの条件を課す。そして私は残念ではあるが、その全てを検討したとき、人が非常に楽観的になることは不可能なのではないか、と思う。しかし私は、非常にしばしば使われてきた、そして使い古されたとすら言ってよいがそれでも生命力を失っていない慣用句を使い、世界のこの地域では、意思の楽観主義はただ悲観的な確信、即ちもっと悪い何事かが起きる可能性があり、それは阻止されなければならないという、そのような確信によってのみ育成可能だ、と言いたい。

−このインタビューは、SoN編集者のシハン・アクサンが、2006年3月に年電話で行った−
注)筆者はレバノン出身、レバノン内戦下で青年時代を過ごし政治経験を積んだ。現在フランスに居住し、パリ大学で政治学と国際関係を教えている。彼は「ル・モンド・ディプロマティーク」誌の常連寄稿者であり、現代政治に関し何冊かの著作を発表している。その中では、「野蛮の衝突−9・11と新世界無秩序」(邦訳は、同名で作品社から出版)が注目され、最新作は「東方の大鍋」。(「インターナショナル・ビューポイント」電子版3月号)
 
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