検察、巨大メディアによる3党連立政府の解体策動をゆるすな                      
                      北村一夫                                         


 2月4日検察は小沢幹事長を不起訴とし、元秘書の議員を含む3名を起訴した。罪名は政治資金規正法の虚偽記載である。これで昨年の西松建設政治献金事件から始まった小沢幹事長に対する疑惑解明の一連の捜査は一段落したといえる。
 今回の国会開催直前の1月12ー3日の小沢事務所ガサ入れ、1月15日小沢民主党幹事長の元秘書等3名逮捕、小沢幹事長への事情聴取と関係者と称する検察からの巨大メディアへの情報リーク、巨大メディアの世論誘導など検察による小沢幹事長側に対する捜査は異常なものがあった。この捜査手法のあまりのひどさに検察出身者からも批判が起き始めている。東京新聞では編集長の名で検察リーク問題についての見解が表明された。
 一連の小沢幹事長に対する特捜の捜査は昨年衆議院選前の西松建設政治献金違反問題を名目に行われた捜査の意図と同じ政治目的を持って行われている。昨年麻生首相に小沢代表が世論調査で勝ち小沢内閣の現実性が浮上したときに、東京地検特捜部によって仕掛けられたのが西松建設政治献金事件であった。偽装献金と検察リーク情報を元にキャンペーンが張られ、代表の座を降ろされたことは記憶に新しい。
 この事件は西松建設が小沢事務所に東北地方の公共事業について天の声を発してもらうために偽装献金を行った賄賂性の高い政治資金違反事件であるとする特捜の見込み捜査が行われた。しかし結果は小沢秘書の一人が政治資金不実記載で起訴されただけであった。おまけに同じように献金を受け、西松建設から事務所まで提供されていた二階経産大臣の捜査は見送りとされ、市民に告発された。にもかかわらずこの件を検察は不起訴とした。不公正な取り扱いに、検察審査会では起訴相当と決議され、二階大臣の秘書を起訴せざるを得ない失態を演じたのである。
 また、注目すべきは無条件降伏した西松建設の国沢元社長の政治資金規正法違反事件の公判において検察は東北地方の公共事業受注の談合の「天の声」の対価としての寄付が小沢事務所になされたものと冒頭陳述したが、判決においては認められなかった。「岩手県選出の衆院議員の関連団体に対する寄付は、いずれも特定の公共工事を受注できたことの見返りとして行われたものではない上、西松建設の業績が悪化し、建設会社各社が談合による公共工事の受注をやめたこともあり、同議員の秘書との間で06年を最後に寄付をやめることとして、従前よりはるかに少額の寄付をしたにすぎない。」と判示している。それによって小沢事務所の秘書の分離裁判ではこの事件は逮捕起訴されるような悪質な事件ではなく軽微なものに過ぎないという判決が下される可能性が大きくなってきた。検察の描くシナリオがおかしくなり始めてきたのである。

 今回の捜査は不発だった西村建設事件をうけて7月の参議院選を射程に、できたら3党連立政府を瓦解させることができたらという意図での小沢追い落としの捜査の再開である。政治資金で不動産を購入したとか、銀行の借り入れの時期が大きくずれているとか、原資の出何処がどことか、下請けから裏献金を受けたとか、検察のリーク情報を巨大メディアが垂れ流し、「説明責任が不足している」と異常な反小沢キャンペーンを張っている。政治資金での不動産購入は小沢だけのように言うが、自民党の町村元幹事長ら自民党代議士も同様のことをしているにもかかわらず報道すらされない。昨年の政治資金規正法まで不動産の取得は規制されていなかった。
 この間の巨大メディアによる3党連立政府に対するキャンペーンは小沢問題だけにとどまらない。普天間移転をめぐる報道においても顕著に表れている。自民党政権の既成路線である辺野古に決めなかったことに対するアメリカ政府関係者の反応を意図的に加工し、日米関係の不安を煽るキャンペーンを張っている。
 このような巨大メディアによる3党連立政府に対する反動的キャンペーンはあきらかな政治的意図をもっている。日米安保堅持を前提とする巨大メディアは3党連立政府の発足から批判的であった。とりわけ社民党が入ることで日米関係とりわけ安保問題に不安が生じるのではという恐れを指摘してきた。3党連立政府発足後、官僚、巨大メディアの恐れは的中した。3党連立政府は自民党亜流政権では無かった。
 普天間移設問題をはじめ安保外交路線では対米従属の自民党路線を蹈襲しないことを模索し始めた。むしろ日本外交の批判的検証、米国からの相対的自立と中国との関係強化にはいりはじめた。無能な首相の存在を可能とした実質の内閣機能である官僚の事務次官会議を廃止し、予算の組み替えと政治を官僚から奪い自らの手で統治することを模索し始めた。検察の領域においても例外ではない。認証官僚である検察最高幹部を日銀総裁と同じ国会同意人事とすること、民間人登用、捜査の全面可視化の実現を諮ろうとしているという。巨大メディアにたいしても官僚癒着の記者クラブ制度の廃止をはかり、フリーランスの導入と情報公開を実現しようとしている。(民主党ではすでに行われている)
 かかるごとく民主党はおずおずと日本の支配構造の一部である官僚ー巨大マスメディアの権益構造とぶつかり始めている。そしてかかる推進者が政治主導を提唱する小沢幹事長と見られているのである。この小沢を何とかしなければということで始まったのがこの間の小沢追い落としキャンペーンである。
 巨悪でダーティーな小沢の悪事を暴くためには人権を無視しても良いかのような手法がえん罪という可能性も考慮することなく巨大メディアと検察によって世論誘導されている。その結果小沢幹事長に対するイメージ作りは効をそうしているように見える。3党連立政府の支持率は50%を割ってしまった。
 検察、巨大メディアに付け込まれた原因は小沢幹事長が自民党的体質を引きずっていると見られていることにある。とりわけ金と政治の問題では巨大メディアによって多くの民衆に不信感を植え付けられた。少なくとも民衆の不信感を払拭するためには掃討の努力しなければならない。
 そのためにも懸案である政治の金の問題では企業、団体献金の禁止、全官庁の記者クラブ制度の廃止と情報公開の実現が求められている。その様な政策を実現することによってしか三党連立政府の支持率の回復はないだろう。利権侵害に危機感を持つ官僚、巨大メディア、大企業経営者は三党連立政府解体の追求の手を緩めないだろう。民主党は自らも変わることで民衆の変革の意志を力に変えてゆかねばならない。

 私は「東西対立」といわれた時代が終わったとはいえ世界革命を考えるにあってグローバル化したアメリカ帝国主義との闘い、その世界、その価値観からの離脱の課程が世界革命の道であると考える。その意味で3党連立政府がその構造を変革しようとする限り期待するものがある。。とりわけ70年安保以降、安保は自動延長となり、社民党が安保を是認してからは日米関係について国民的論議をすることは無くなった。日米同盟が青壮年層には当たり前となった。小泉政権によって米国の世界政策を一体となって支え、従属化した日本のあり方を3党連立政府の旧勢力との格闘が、新たな国際的関係の視点、価値観を提議し、社会的流動化を生みだす契機になることを ねがうものである。3党連立政府に市場万能主義からの脱却を期待するものがある。
 
 この三党連立政府の要諦である小沢幹事長に対し異常な手法をもって行われている検察の見込み(思い込み)捜査を見過ごすことは社会的運動にも重大な影響を生み出すだろう。とりわけ石川元秘書の現職議員逮捕は許し難いものがある。逮捕拘留するには「取り調べに応じず」、「逃亡の恐れ」「証拠隠し」の要件が当てはまるときに逮捕拘留されるという。今回は政治資金報告書で「不実記載」であることを本人も認め、自供しているにもかかわらず自殺の恐れがあるとかの理由で現職議員を逮捕したのである。
 この間この巨大メディアとタッグを組んだ特捜の見込み捜査手法は重大な問題を抱えている。巨大メディアにより流布された情報と裁判での論点は全く違うものが多くある。起訴前は巨大メディアは大騒ぎし世論を誘導してゆくが、それに比べ裁判の経過及び結果は大きくは報道されない。その結果検察の捜査、起訴のあり方に対してチェックが効かないものとなっている。福島県知事贈収賄事件、長銀事件では実質的無罪となったえん罪事件であったことはどれだけ知らされているだろうか。巨大メディアは「記者クラブ」制度によって情報を独占することが出来る反面検察に統制されるような状況に陥っている。その結果検察の作ったストーリーにそって情報が流されるとそれに沿った報道がなされ、巨大メディアも検察と共に起訴をするような擬制が作り出されてゆく。
 また、法務省の下で「判検交流」ということがおこなわれ、裁判所と検察(行政)の分立が失われ、裁判の独立性を失わせる状況を作り出している。検事が判事となり、判事が検事となることで判事と検事のなれ合いがうまれ、検察の起訴の有罪率が99.9%以上だという先進国ではあり得ない裁判制度となっている。
 そして社会的に「正義の実現」は唯一検察が行うかの様な擬制が作られている。その結果が検察の横暴を許し、えん罪や人権侵害を生み出す土壌を作っているのである。正義の味方は民主主義には必要ない。
 巨大メディア、裁判所に支えられた検察の横暴を糾弾しなければならない。

 巨大メディア、官僚による3党連立政府に対するなりふり構わぬ反動的キャンペーンを粉砕しよう。

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