いままでも、そしてこれからも……。 少年と少女たちが紡いできた、 こころを揺らす物語のひとつとして。 その街は海に侵食されつつあった。 誰もが知りながら、誰もが口をとざす。 忍び寄る週末は、ゆるやかであり、おだやかであり、ものがなしさをまとっていた。 幻想的な日々のなかで、繊細な指先にふれたのは、 陽炎ゆらめく、夏の昼下がりだった。 白い肌に、しっとりと汗をにじませて。 それでもはかない、濡れたような瞳―― おしよせる波に踊らされ、彼女が、子供のようにはしゃぐ。 ゆるやかな風に、ゆらめく長い髪。 そして振り返る。 見つめて、微笑んでくれるたび、 知りたいことが、嵐のようにわきおこって、潮騒にのみこまれて。 陸が海にきえるときまで、 たわいもないやり取りとか、 ささやかな我侭とか、 いくつも積み重ねていくだろう。 つよき思いは願いにも似て…… やがて至純へと届く。 |