REVIEW

part5
(最終更新日6・7)

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「ドッグ・ファイトの快楽 『それゆけ宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ』」
1999・6・7
BY もんぺーる
 
 

 戦争は楽しいに決まっている。
 なんて冒頭に1行書いただけで、関係各方面から非難と罵声を浴びそうだ。だが、非難と罵声を浴びせかける人達の戦争観というものも結構観念的だったりするわけで、よくよくその主張に耳を傾けてみると、ヤマト、ガンダムレベルの『眉間皺寄せ、頬ぴくぴく、こぶし握り締め状態』の『僕は戦争は嫌いだああ!』パターンが多いのだ。
 このアムロ・レイに代表されるステロ・タイプな主人公は当然のことながら、アニメファン、製作者の双方から欝っとうしがられ、『少年=逃げちゃだめだ!逃避型観念規範モデル』、『少女=命令ならばそうするわ…あんたバカァ!現実直視型行動規範モデル』という構図に帰結することになる。
 ロック・オンされたら数秒で決着がついてしまう現代、未来の戦場は、直観的に悪を嗅ぎ分けられる少女達にこそふさわしいフィールドだ。理屈より先に平手打ちを食らわせる少女の論理は、男達を否応無く戦場から駆逐し『会議室』に追い込んでいく。
 宇宙戦艦という呼称のプログレ的な仰々しさとは裏腹に、少女達の操るTAは機敏で軽快だ。その操縦感覚や直線的な外観、アフターバーナーの描写から受ける印象は、戦艦というよりはF15のような攻撃戦闘機に近い。(敵の宇宙戦艦の魚型のフォルムは『海底大戦争
スティングレー』に出てきた敵の『フグトラ潜航艇』を彷彿とさせる。)
 学業優秀運動神経抜群の無敵少女ヤマモト・ヨーコに、オタクオデコ少女御堂まどか、おっとり大和撫子白鳳院綾乃エリザベス、関西生まれの木野まこと?松明屋紅葉
 女子高校生4人が繰り広げるスペースウォーズには、ただただ気持ちの良いドライブ感覚だけが詰まっている。思想も哲学もいらんのだ。何しろ人が死なない戦争なのだ。爆発する 寸前に転送するシステム…宇宙大作戦やタイムトンネルでも使われていた、米国テレビ映画的主人公不死身理論がここでも立派に生きている。
 女の子4人というのは珍しいパターンだ。このメンバーならつい頭の良いメガネっ娘を追加したくなるところだが、何しろヤマモトヨーコは運動神経も抜群なら校内模擬試験も一番、きっと共通一次なら990点以上(すみません私は共通一次の世代なもんですから)というとんでもない少女なのだ!自分以外にブレインなどいらないのである。
 だが、TV版のヤマモト・ヨーコは、非の打ちどころのないはずの完璧少女が友人関係や戦いについて思い悩んだりするシーンなどが織り込まれ、映像表現的にも多少エヴァを意識したような部分が随所に見られ今後の展開が楽しみだ。
 御堂まどかのオデコねたも回を追うごとにエスカレートし、最近ではおでこへの映り込み表現というアニメ史上画期的な手法が用いられている。これほど激しい身体的特徴への攻撃は、「てなもんや三度笠」の「チビ」「ウマヅラ」の連呼にも匹敵する激しさであり、ともすればバトルに終始しがちなストーリー展開に輝かしい花を咲かせている。
 このおでこ表現がどこまで過激になっていくかもこの作品の見所となっている。