Dearest Love


センチメンタルグラフティ




穏やかな冬の日差しがふりそそぐ午後

僕は その扉を開け 

真っ白に包まれたこの街に駆け出した。

あふれる想いを抱いて…

君のいる…あの場所に




綺麗な黒髪を腰まで伸ばした、中性的な顔立ちをしている特徴の
彼の名は後藤悠…
現在は「WHITE ANGEL」のボーカリストだ。
2年前に結成され、今年の秋、ついにメジャーデビューを果たした。

だが、彼にはもう一つの姿があった…
アサシンというあの日以来、二度と見せることのなかった姿が…

けれど、今の彼にはどうでもよかった。
彼女さえ幸せにできたら

何も望むものはないのだから…

そう これから始まるのは
まるで 夢のような  love Song…



−Dearest Love−




12月21日  大通り公園 

真っ白な空
まだ、静けさが漂う街並では
綺麗な雪が静にふりそそいでいた。
通りなれたあの道沿いも
こんなに輝いて見える。

いつからだろう…
彼女のことを想いはじめたのは…

「こっちよ、悠!」
待ち合わせの駅に、瑠璃色の済んだ瞳をもつセミロングの少女
るりかは優しく手を振っていた

いつものように君は笑っている…
「ごめん、待たせちゃった?」
「うんうん、私も今来たとこなの」
「それは良かった」

彼女と再開してから、3ヶ月が経つ。
あれから、僕等はこうして逢える日を楽しみにしていた。
そして今日は、君が大好きなあの場所に…

「るりか、今日はやけにはしゃいでるじゃない?」
「やっぱりわかっちゃう?何たって今日は、函館の100万ドルの夜景を見るんだからね!」
「そうだね、僕も函館の夜景を見るのは久しぶりなんだ…」
「ねえ、はやく行こうよ!」
「あはは、そんなに慌てないで…」
彼女に手をひかれ、僕等はいき追い良くホームに駆け出した
今まで以上に胸の高鳴りを覚えた。

2人の夢みる恋は 淡く優しい瑠璃色で

あの空の鳥のように 

優しい風が彼女に吹き付けていた。





PM 4:00 函館山

「すごーい!なんて綺麗なの…」
それは、まさに輝く宝石の海だった。。
僕らはしばらく夜景の美しさに見とれていた

「街の灯りがこんなにも綺麗に映るなんて」
「確かにね…でも君のほうが、ずっと素敵だよ」
「え…!?ちょ…ちょっと何言ってんのよ…そんなお世辞…」
「お世辞じゃないよ、それが僕の本音ってわけ」
彼女は驚きとともに嬉しさを覚えた。
周囲ではたくさんの観光客達の歓声に溢れかえり、数人が身を乗り出して夜景を眺めている。
そこには望遠鏡があり、さっき乗ってきたばかりのロープウェイが、別の観光客達を運んでくる
「やっぱりカップル達にも人気あるんだね」
「ま、デートにも定番の場所みたいだから」
「ねえねえ、写真撮らない?」
「ああ、僕に任せて」

カメラに映る彼女の笑顔はこの夜景の美しさよりも輝いていた。
今までどおり君を守りたい
そして、これからもね・・・






―――――函館市内――――――


ライトアップされた建物
幾つものモニターがとりつけてある部屋で…
「な…なんだって…!?」
るりかが連中に狙われている
その情報に昌宏は耳を疑った。
『…確かアナタの元クラスメイトだったわよね』
「ああ、筋金入りのゲス野郎だよ…あの朝倉は…」

朝倉健…
昔からよく知っている卑劣な男。
メンバーの鈴木、安岡、佐々木、比婆、黒田までもがくわわっている。
アサシンの削除リストに乗ってる、たちの悪い連中だ。
『今回ばかりは、私も手伝わせてもらうわ…』
「…るりかは…今何処に?」
『函館山にいるわ…後藤くんも一緒のはずだけど…』
「後藤もいるのか!?」
『ええ、昔の彼なら…私が助けるまでもなかったけどね…』
「そうか…能力が使えなくなった今となっては…」

それは、全てを抹消する殺しの能力

「俺はバイクでいく…あいつ等を皆殺しに…」
『ちょ…ちょっと、まだ話しは終わってな…!』

勢い良くドアが開けられる。
銃を取り出した昌宏は、バイクに乗りこんだ。
彼の脳裏には殺意しかなかった…
「るりか…無事でいてくれよ」
輝く夜景に、そっと呟く彼…
冷たい風が…雪に覆われた道をかけぬけていた…



痛みを覚えてく…


2年前のあの日…

それは 悲しいほどの青空だった…

届かない思いのままに…





「あっ!雪だ…」

気がつくと、辺りに雪が優しく降りそそいでいた
降りそそぐ雪もこんなにも暖かく感じている。

「すごい…幻想的な風景だね」
るりかは高台の手摺によりかかり、雪降る夜景を見下ろす。

「ねえ・・・」
「なに?」
「この前のことなんだけど…」
「え…ああ、手紙のことか…」
「嬉しかったよ…あの言葉…」
「いや、昔から好きだったんだよ…君のことが…」
悠は、そっと彼女を抱き寄せた

彼女に相応しい宝石のような夜景…

このまま時が止まえばいいくらいに…


その頃・・・
「おい、来たぜ」
「山本か…イイ女だなぁ、俺好みの女って感じだ」
髪を金髪に染めたリーダー各の男が、目をぎらつかせナイフをなめまわしている。
「どうする、朝倉…」
「アイツの情報は…確かなんだな?」
仲間が釘をさすように尋ねてくる。
「安心しろ…後藤は、もう殺しはできねえからな」
これまで、グループで何人もの少女を襲い殺してきた卑劣な男。
ケダモノとしかいいようがなく
誰よりも罪深い人間
「だがよ、女の兄が黙っちゃいねえぜ?」
「くっくっく…手間がはぶけて丁度いい…目障りだったんだよ、あの忌々しいアサシンだけはな!」


――――函館市内――――

バイクは猛スピードで、ひたすら街を駆けぬける
冷たい雪と風が襲いかかる
しかし彼は意に返さない。
函館山が横にみえた。
山道に入ろうとしたその先で
見なれたヘリが着陸していた。
「あれは…?」
そのままバイクを急停止させる。

「そんなバイクじゃ…間に合わないわよ…」
ヘリの証明が彼女を照らす。
彼女は美しすぎた…
男も女も惑わすくらいに…
「晶…」
そう 彼女の名は遠藤晶…
彼女も、同様にアサシンだ。
「乗りなさい…こっちのほうが速いわ」
そう言って手招きする。
「なるほど、ヘリか…」

ヘリは函館の夜空に向かい
空高く飛び立った…

―――函館山―――

ふと、懐かしくて切ないメロディが辺りに流れている。
「White Angel」が初のデビューを果たした、ファーストシングル
「In To The Sky」。
メンバーは、ボーカル:悠 ギター:晶 サイドギター:夏穂 
ベース:ときな ドラム:光一、で構成されている。


―『さあ、かけだそう…あなたと2人でこの世界を』―――――


―『流れる長い髪に 僕は魅せられてゆく』―――


――『夢の世界でさえも あなたはずっと素敵な笑みで』―――


――『空の彼方で、響かせる歌声さえも』――――

モニターでは、「In To The Sky」のプロモーションでの彼等が映し出されている…

そう言えば、僕は約束をしていた…
新曲のラブソングをるりかに聞かせるって…

僕達はしばらくこの場所を歩いた
夢のようなこの場所で…


ドン!!
「キャア…!!!…な…何すんのよ…!」
そのとき、一人の若者がるりかにぶつかってきた。
何も言わず、そのまま通りすぎる彼等…
「るりか…大丈夫!?」
「ええ、もうあの人ったら謝りもしないで…」
「まったく、近頃の若者は…」
「あれ…?」
彼女は始めて、ネックレスを無くしたことに気づいた。
「どうかしたの?」
「ない…!…私のネックレスが…」
「何処かに落としたんじゃ…」
それは彼女にとって大切なもの。
辺りを探したが、結局見つけることはできなかった。
「そんなはずは…あ…もしかしてアイツらが!」
「まさか…」
嫌な予感がした…

「私…ちょっと行ってくる…!」
「僕も行くよ」
「うんうん、すぐ戻ってくるからここで待ってて…!」
彼女は階段を駆け下りていった。

あの男 何処かで?

「しまった…!」


あの顔に間違いなく見覚えがあった。
僕はダッシュで階段を駆け降りていた。

忘れるわけがなかった

理沙を殺した張本人…

るりかを…絶対に…絶対に近づけてはいけない…!
…朝倉を…

「何処に行ったのよ…」
彼等を探しても何処にも見当たらない…
そして、徐々に近づく影…
「探し物は、これか〜?」
「え…?あっ…それ…!!」
何故か…その男、朝倉が彼女の大切なものをつかんでいた。
「どうして…あなたが持ってるいるのよ!?」
「ククク…」
「か…返して!」
「そうはいかないな〜」
後ろから数人の男が、るりかを羽交い締めにした。
「何よ…あなた達…」
男達はニヤニヤと笑っていた。
「まさかこんなところで逢うとはな…」
比婆が、強引に彼女の髪をつかんだ。
「い、痛い…!何するのよ〜!」
「おっと、怪我したくなかったら動くんじゃねえよ」
ナイフを取り出す黒田。
その刃はるりかの頬に向けられた。
「狙ってたんだよ…お前のことをなぁ!」

「やめろぉー――!!」
階段を駆け下りた視界に・・・
あの男達が、るりかに絡んでいる姿が見えた。
「ゆ…悠…!?」
俺は、あらかじめ携帯していた拳銃を取り出した。
そのとき・・・

「待ってたぜ、後藤〜」

ドン!
「な…に?」

朝倉の不適な笑みに気づいたときには既に遅く…
背後から振りかざされる鉄パイプを、もろにくらってしまった。
「弱くなったなお前も」
見上げればそこに佐々木がいた。
「佐々木…!」
理沙を襲う計画を立てた張本人…
「悪ぃな、山本は俺がもらうぜ」
「相変わらず綺麗な髪してるよな、うらやましいぜ…黙ってても女寄ってくんだろ?」
比婆が俺の髪をつかみ、笑っている。
「お前等…るりかを離せ!」
「あ〜?誰にもの言ってんだ〜」
バカにしたように鈴木がトカレフを向ける

「あんた達…私をどうする気よ!」
とたんに朝倉の蹴りが、彼女の腹部にはいる。
「あうっ…!」
「おいおい、顔だけはやめとけよ?可愛い顔が台無しになっちまうからな〜」
彼女は今にも泣き出しそうだ。
「ヒャッヒャ!お前もワルだな〜」
卑劣な笑いを浮かべ朝倉は言った。
"「お楽しみはこれからさ……この女も""理沙の時""みてえにしてやるからよ」"

殺シテヤル…!

そのとき、心のなかで何かが切れた…

そして、何かが変わった…

よほど余裕があるのか連中は、彼から視線を外していた

「ひっ…やめて…!」
「くっくっく…ショータイムだ…この女を…」
鈴木が彼女の胸に手をかけようとしたそのとき…

「触るなよ…彼女に…」

ドン――――――――――――!!!!!

鮮血とともに舞いあがるトカレフ
それは、普段の優しげな悠とは、まるで別人のようだった。

鈴木の左腕をもぎ取るのに…
数秒もかからなかった
大量の鮮血が飛び散り千切れ飛んだ左腕が落ちる…

「ギャアアアア〜〜〜〜〜〜!!!!腕がぁーーーー!!!!」
「す…鈴木ぃ!?」
「い、今…何を…!!?」
あまりにもの出来事に驚愕する彼等…
「放してよ!」
その隙にるりかは、連中から逃れることができた。
「こ…この女ぁ〜!」

すかさず悠は、舞いあがった鈴木のトカレフを手にとる。
標的は…彼女にナイフをつきつけていた奴…

ドン!ドン!!

黒田の腹や首、顔面に容赦なく弾丸が貫く。
「がはぁ…!」
さっき放った弾丸は…全部で6発…

悠は笑っていた
美しくも冷ややかに…

そして倒れた黒田の死体を踏み潰し、弾丸を積め変える。

「同じだ…兄貴と同じだ…!」
るりかにも見覚えがあるはずだった。
その恐ろしい能力は…

鈴木の足元に、もがれた彼自身の左腕が投げられる。
「鈴木、お前の腕だ。なんなら取り付けてやってもいいんだぜ?」
それは恐ろしく冷たい声で…
「ち…チクショウ〜〜〜!!!よ…よくもォ…!!」
腕をもがれた鈴木が発狂し左手で銃をつかもうとした瞬間…
彼の顔面をガラスに叩きつけ横にひきずった。
鈴木はたまらず悲鳴をあげた。
「ギャアアアアアアア!!!」
ガラスが散乱し彼の顔は切れ流血した。
「おい、あ…あいつヤバイぜ…!ただのアサシンじゃねえ!」

そして長い髪が夜空に舞ったとき…
鈴木の首は切り裂かれ鮮血を吹きだしていた。
「よ…よくも鈴木を!」
朝倉が発砲した弾丸がすぐ横を通りすぎ観光客を貫く。

「ひ…ひどい…」
その光景に、るりかは言葉を失う。
「チッ、はずしたか」
目的をはたすためなら他の人間がどうなっても構わない。
昔からそうゆう連中だった。

俺は迷わず、るりかの手をとり走り出した。
「るりか、大丈夫か?」
「ゆ…悠、あなた…!」
彼女もわかったようだ
俺がアサシンだということを…
「今まで黙っていたけど、俺はアサシンなんだ…君の兄さんと同じくね」
「あいつ等、何なの?」
「最低のゲス野郎どもだよ…2年前に昔幼なじみを殺されたんだ…」
「で…どうする気!?」
「始末するさ…君に危害は加えさせない」

「待ちやがれ…!」
追おうとした安田を勢い良く壁にたたきつける。
「死にたくなければ、彼女に関わるな」
そのまま自動販売機に叩き付ける。
「るりか、今のうちに逃げ…」

「ゆ…悠…!!」
だが、それは最悪の展開となった…
るりかから目を離したのが、いけなかった。
物陰で待ち伏せをしていた比婆につかまってしまう。
「残念だったな山本〜、お前は逃げられねえんだよ」
そのままるりかを床に叩き付ける。
「て…テメエ…よくもるりかを…」
「ひゃっひゃ!見せてやるぜ…ショータイムを!」
比婆が、彼女にナイフを突きつけたその瞬間…
形成は逆転する。

ドスッ…!!

「ギャアアアーーーー!!!」
比婆は顔を抑え絶叫している。
顔にナイフが突き刺さり、血を流していた。

上空には一機のヘリ

「らしくねえ真似してんじゃねえよ…悠…」
そう言って彼はヘリから飛び降りた。
久しぶりに仲間に出会った。
「昌宏…」
「情けねえな…るりかを守ることがお前の役目だろうがよ?」
「すまない…借りを造っちまったな…」
「気にするな…当たり前のことをしただけだ」
不適な笑みを浮かべた昌宏は、倒れてる比婆に向かって歩いていく。

「比婆…テメエよくも妹に手を出してくれたよな?」
「な…何者だお前…ぐあっ!!!」
起きあがろうとした比婆にすかさず蹴りをいれ、
ライフルを顔面に突きつける。

「ひっ…だ…誰か助け…!」
「虫がよすぎるぜ」

ドン!!!バズッ…!!

耳を突くような銃声が響き渡り
比婆の全身から血液が噴き出した。
「ぐあっ…!!」
かろうじて彼は、声にならない悲鳴をあげている。
「苦しいか?じゃ…死ねよ」
冷ややかな笑みをうかべた昌宏は、引き金に手をかけた

ドン!!

脳天が吹き飛び鮮血が散乱
「チッ…またやっちまったか」
正気を取り戻した視界に、比婆の無残な姿があった。

「クズ相手に、弾を無駄にすることもないわ」
そのとき、ヘリの操縦席から見なれた美少女が降りてくる
「久しぶりね…悠」
「晶さん…」
「こんな連中に負けてるようじゃ、せっかくの美形がだいなしじゃない?」
「すまないね…」
「フフッ、まあいいわ…楽しみましょう、狩りを…」

相変わらず、アナタも変わらない
ゲスを嫌悪する気持ちは同じというわけだ。

「おいおい、この女がどうなってもいいのかよ?」
朝倉はゴンドラに乗りこもうとしている。
るりかを人質にして…
残りの連中は逃げ出した。
「彼女から手を離せ!」
「るせえ!!」
ドガガガガガガガ!!!!
朝倉の放った銃弾が、窓や電話ボックスを破壊する…


その一方では…
「片山、無線だ!」
「ああ・・・」
佐々木に言われ、片山は無線のあるとこまで走り出した。
応援を呼ぶつもりだ…それもありったけの…

そんな彼の行動を、晶は見逃さなかった。
「ここはあなた達に任せるわ」
「何処に?」
そのとき、ドアが閉まりゴンドラが動き始めた。
走り出した悠は、ゴンドラの屋根に飛び移る。
るりかを助け出せるのは、今しかない…

「しつこい野郎だ!」
朝倉の放つ弾丸が屋根を貫通する。
彼は振り落とされそうになるが…
「ひゃっひゃ!どうだてめえも手だしできねえだろ〜!?」

「なめんなァ…!」
ゴンドラの窓を叩き破った悠が、反撃に移った。
銃撃にひるむ佐々木
しかし、そこに朝倉の姿はなかった。
るりかと共にドアから飛び降りたのだ。
「ちっ、逃がすかァ!」
彼も雪原に飛びこみ、朝倉を追跡した。

雪に覆われた林が下に広がっている
林の中を朝倉は駆け出した。
「助けて…悠!」
「ここまで追いついて見ろよ…くくく」
見渡せば小屋の近くにスノーモビルが見えた
あれは・・・?


一方、片山は無線機のある車にかけこんだ。
「俺らの勝ちだ…仲間さえ呼べば誰にも」
その時、彼女の美しい髪が空に靡く
「逃がさないわよ誰一人として」
晶はくすくすと笑い
「ひっ…!お前は!?」
「フフ、そんなに怖がらなくてもいいのよ」
「がっ…!!?」
片山が銃を取り出そうとするが、何故か撃つことさえできなかった。
そう感覚がなく
ただ熱かった…腕から先が…
「うわああアアアアアアアア!!!」
見ると手首はなかった…
そして、大量の血が噴き出していた。
"「大袈裟ね…まだ""手首だけ""じゃない…これからなのよメインはね…」"
彼女は素敵な笑みをうかべ、血のついた細いワイヤーを眺めてる
「うわああああ!!…く…来るなぁ!!!!」
襲いかかるアサシン、晶…
「フフ、本当のヘヴンリィを見せてあげる」
「ギャアアアアアアアアーーーーーーーーーーー!!!!」
断末魔が鳴り響いた…

…5分後…

ゴンドラの中では…
「連中はお前に任せた、俺はあの遠藤って女と楽しんでるからよ…」
品のない笑いをうかべる佐々木。
「片山はどうした?」
「今に来るぜ。応援をつれてな」
「それにしても、お前好みの女で良かったな。遠藤晶…アサシンってのがもったいねえなあ」
「まあ楽しんでこいよ」
そう言って安田は屋根から飛び降りた。

「さて、何処に隠れてやがる…」
ガシャ―ン!…ゴロン…
その時…ゴンドラの窓が突き破られ
何かが足元に転がった…
「…!?」
彼の目に映ったものは…
「うわアアアアア!!?」
切断された片山の首がそこにあった…
白目の状態で見開いている。

「だ…誰がこんな真似を…!」
「フフッ、お前もこうなるのよ」
余裕の笑みでドア拠りかかっている晶の姿があった。
「お…お前は…!」
「佐々木…死んでもらうわ」
「ヒャヒャッヒャ!…わざわざ俺の奴隷になりにくるとは嬉しいな〜」
口では言っても内心、恐怖を感じていた。
晶のしなやかな髪が揺れる。
「私にそんなものを向けるなんて…救いようのないバカね…」
(な…なんだその自身は…?)
「どうしたの?まさか、ビビッてるのかしら?」
「上等だよ、こらァ!!」
勢い良くナイフが振りかざされるが
彼女はあっさりかわし不適に笑う。

「クス…遺言は…それだけ?」
気がつくと彼女は、背後にまわりこんでいた
驚愕する佐々木。
「格の違いって奴を思い知りなさい」
その瞬間、佐々木の顔面がぶっ飛ばされ
勢い良く壁に激突し、衝撃で窓ガラスが砕け散った。
「ぐあっ…!!」
「もっと、遊んであげるわ…」
冷静さを失った佐々木は怒りに身を任せ
闇雲にナイフは振るが、すべてが宙を切った。

「後悔しなさい。この私に手を出したことを」
ドガッ!!
ナイフを叩き落とし、彼の顔面や腹に何十発もの鉄拳を炸裂させる。
たまらず、佐々木は口や鼻から血を流した。
「ぐえっ…!がはっ!」
「物足りないわ…」
さらに佐々木の腕をつかみ勢い良く床に叩きつけた。
(つ…強すぎる…!)
彼は逃げ腰になるが、何処にも逃げ場はない。
「お楽しみはこれから…お前も片山みたいに…」
ザバッ…!!
「――――――――――――――!!!!!!!」
突然、左耳が千切れとび、佐々木は悲鳴をあげた。
晶は右手にピアノ線のような細いワイヤーをとりだしていた。
そう彼女のもっとも得意とする武器だ。

「フフッ、痛いのはこれから…」
腕、手首、胸が斬られ、たまらず彼は恐怖に陥る。
晶は冷ややかに笑った。
立っているのもやっとの状態の佐々木に追い討ちをかける。
そして、左足を切り裂いた。

そう 彼女は 

誰よりも美しく 誰よりも残酷なアサシン

「ひいいいい!!!!…やめろぉーーー!!!」
倒れてる状態の佐々木は、床に落ちていた銃をとろうとするが…
腹を蹴りとばされ銃はドアのほうに滑っていく。
そして彼女は、見下すように彼の手を踏みつける。

これまで殺してきた報いが、まさか自分自身に襲いかかるとは、佐々木も思ってもいなかったようだ。
「た…助けて…くれ…!」
「生憎ね…クズを助ける必要なんてないわ」

ザバッーーー!!!!!

それは恐ろしくも冷酷で…
さながらエンジェルのように…

肉が切り裂ける嫌な音がして、
ゴンドラの壁中が赤く染められた。

「アナタに…相応しい死に様で良かったわね?」

窓を叩き破り…地上に飛び降りる彼女…

雪と風が世界を包み込む
林の隙間にあの函館の夜景がかすかに映っていた。
「私の役目はもうこれまで…。絶対に守ってあげなさいよ…彼女を…」





朝倉は戸惑っていた。
この突然の吹雪に…
「くっ…これじゃ視界が…!」
当たりを見渡すが何も見えない。
「雪、やみそうにもないわね…」
るりかにはわかっていた。
必ず来てくれると
不利なのは朝倉のほうだ。
「何処に行くの?…あんた達はもうお終いなのに…」
「ケッ…どうせアイツはくだばってるさ…!妙な期待してんじゃねえよ!」


「そいつはどうかな?」
「……………!!?…て…テメェは!?」
その声に振りかえる朝倉…
「悠!?」
「待たせたね、るりか」
ついに朝倉を追い詰めた…



「諦めな、お前は逃げられない」

「悠、うしろ…!」
「死ねや!」
ドン!!
安田が背後からライフルを放ってくる!
「まだいたのか…」
勝ち誇ったように安田が銃を向けてくる。
「残念だったな、嬢ちゃんを助けられなくて」

安田は気づいてない
この吹雪のおかげで
ロープウェイのゴンドラが彼等の真上で停止したことに…

「るりか、ゴンドラから離れろ!!」
「え!?」
爆発する…
ついさっき、昌宏が仕掛けた時限装置が、もう時期カウントダウンを終えるはずだ…

「動くなと、言ったはずだろぉ!」
安田が銃口を向けた瞬間…
大音響と共に真上のゴンドラが吹き飛び、
爆風が襲いかかる…

ギギ…バチィ!!
何かが切れる音が不気味に響き渡る。

るりかの手をつかもうとしたが、すぐに離してしまった。

「…なめた真似を〜!」
「…!?…安田ぁ!!そこから離れろーーーー!!!」
朝倉に呼びとめられ、彼は初めて気づいた…
今の爆破は、ゴンドラを吹き飛ばすためではなく…
「まさか…!!?」

振りかえると爆風で切断され、勢い良く襲いかかるケーブルの姿があった…!!
その威力は木をもなぎ倒した。
「け、ケーブルがぁアアアアア…!!?」

ザバッ…!!!

頑丈なワイヤーは安田の胴体を真っ二つに切断した。

「るりか…!?」
辺りを見渡すが彼女はいない。
「放してよ!このケダモノ…!」
彼女は人質にされたままだ…
強引に彼女を連れて行く朝倉…
「後藤、お前さえ殺せばすべてうまくいくんだよ!」
そしてニヤリと笑い、俺にゆっくりと銃口を向ける。

「一つ聞きたい…理沙を殺した理由…聞かせてくれ…」
「理由だと?そんなもんねえよ。つくづくバカな女だったぜ」

「最低よ、あんた…」
るりかは怯えていなかった。
むしろ怒りのほうが遙に上回っていた。
「いつまで…そんな使えない銃向けてるのよ」
クスッ、と彼女は笑った
「ど…どういう意味だ!?」
「弾丸…さっき私が全部抜いたよ」
彼が目線を銃に向けた瞬間…!
ドン!
「な…!?」
彼女は朝倉の銃を叩き落し、腕を抑えつける。
「今よ悠、コイツを殺して!」
言われずともそうしていた。
朝倉の顔面を殴り飛ばすのに時間もいらなかった。
勢い良く木に叩き付けられる朝倉。

「るりか、はやく…!」
ついにるりかの手をつかむことができた
「この野郎〜!なめやがってぇ…!」
朝倉は、左手にもうもう一つの銃を取り出す。
後はこの外道の始末だけ…
「るりか、この朝倉をどうしてほしい?」
「痛めつけて殺してよ」
それが最も望んでいた答え
明らかに動揺していた。
「ち…近づくな!…こっちには銃があるんだぜ!?」
"「ククク、バカお前… ここが""真冬の北海道""だってことを忘れたか?」"
「な…どう言う意味だ!?」
「撃ってみろよ」
「そ…そんなに死にてぇのか!」
ガチャ
引き金に手をかける…しかし
カチャ、カチャという小さな音だけが繰り返し響く
朝倉は必死に引き金を引くが弾丸はでない。
「ば…バカな…引き金が撃てない…!?」
「凍り付いてるんだよ…テメエの銃はな!」
「…!?」当然だ。彼は長時間、銃を氷点下の空気にさらす状態にしていたのだから。
「うわあああああああ!!!」
発狂した朝倉は銃を投げ捨て、指先から細いナイフを取り出す。
「おいおい、まさかナイフで挑もうってのかい?」
すかさず手首に踵を振り下ろす!
「ぐあっ…!」ぶっ飛んでゆくナイフ。
その瞬間に、朝倉は無防備の状態となった。
「あ…ああ、しまっ…!」
数十発もの鉄拳が炸裂したのは、その直後だった。
口や鼻から血を流す朝倉。
さらに膝蹴りを数発くらわせ…
ぶっ飛ばされた朝倉は小屋の扉を突き破る。
「こんなもんか?」
彼はうめき声をあげながら、起き上がろうとしている。
小屋の室内にはストックやスキー板が散乱していた。
「チクショウ…ぶっ殺してやるよ〜!」
怒り狂った朝倉は、近くに落ちていたストックをつかみ振りまわした。
もはや彼の反撃力は無に等しい
「ムシケラが…」
俺は彼の腕をつかみとり、思いっきり壁に投げ飛ばした。
ガシャ―ンという音と共にガラスやスキー板が散乱する。
「すごいよ、悠!」
「るりか、さがってて」

(ひっ…か…敵わねえ…!)
もはや朝倉には恐怖心しかなかった。
どうやって反撃に移るかも考えられない…
(そうだ…せめてあの女を殺してやる…!)
ゆっくりと飛びだしナイフが取り出される
悠はまだ、気づいてない。
その瞬間、朝倉は鋭い刃を彼女にむけ襲いかかる。
だが、眩しい光が空気を切った瞬間に形成は逆転した。
朝倉の絶叫が辺りを木魂す。
肩にはナイフが突き刺ささっていた。
「ゲスの考えることなんて、お見通しなんだよ」
すかさず俺はもう一本のナイフを手にとった。

「ぐ…あ…!…よくも…」
るりかに近づこうとした朝倉だが…
ザバッ…!!
指を数本切断され、血液が噴き出していた。
「アアアアアーーーーー!!!俺の指がぁ〜〜!!!」
「汚い手で…私に触らないでよ」
いつのまにか彼女は、血のついたナイフをとりだしている。
そして、重たい銃を朝倉の首にめがけて振り下ろす。
ドガッ!!
「ナイスだよ、るりか」
「当たり前♪これでもアサシン(昌宏)の妹だよ?」
「アハハ、そうだね」

とにかく一刻もはやくここから離れなければならなかった
るりかの手をとり雪原を歩いた
「函館山の屋外までは大分時間が掛かりそうだな」
確かにそうだった。
この視界でまともに見える状態ではなかった。
むしろ足元さえもかすんでよく見えない。
歩き出して5分ほど経ったとき…
ふとあるエンジン音に気づいた。
「あの音は…」吹雪きの中から激しいエンジン音が近づいてきたその瞬間
眩しいライトが照らされる。
至るとこから血を流してハンドルを握る朝倉の姿があった…
「てめえら道連れにしてやるぜぇ!!」

既に理性すら失っている朝倉
雪煙を撒き散らしながら、加速してくるモビル

「ねえ!…あ…あいつが…朝倉が来る…!」
「さがってて…」

「悠…何する気!?」
「フィナーレを飾らせるんだよ…朝倉のためにね」

悠は歩きだした。
猛スピードで襲いかかるモビルに向かって…
立ち止まった俺は…標的に銃口を向けた。

アサシンは決して正しい存在ではない
所詮、ただの冷酷な殺し屋

けれど、こいつは
誰よりも許されない存在で
俺以上に存在する意味もない。

モビルが目の前に接近する

だが、やっとわかった
…彼女を守るために…
…アサシンが存在しているということを…

「朝倉・・・終わらせてやるよ」

ドンドン!!!ドン!

「がはっ…!!」
血を吐き出す朝倉。
同時に彼は体が熱くなるのを覚えた。
(な…何が…?)
自分の体を見ると、胸から熱い血が溢れ出ていた
「ひっ…俺の体から血がぁ…!!」
道を外れるスノーモビル。
「あばよ…」
林を突きぬけたその先に地面はなかった。
眼下には一面の夜景が広がる。
ショートしたエンジンが燃えあがり、朝倉は炎に包まれた。
叫ぶ余裕もなかっただろう。

そのまま宝石の海に落下した。

落ちゆく 底無しの地獄に 

そして 迫り来る大地。

瞳に映るのは永遠の闇…

「ウワアアアアアアアアーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

ドォーーーーン!!

断末魔が途切れ、スノーモビルは大音響とともに吹き飛んだ。


「悠…!カッコよかったよ…」
「言ったろう?かならず君を助けるって」
はるか崖下には紅蓮の炎に包まれている残骸が見えた。
僕らは静にその場を後にした
笑顔を取り戻するりか。
愛が輝き出した素敵な瞬間だった

「お2人さん。感激の再開もいいとこなんだが…そろそろ帰りませんか?」
冗談まじりで昌宏が割って入る。
「昌宏…何処行ってたの?」
「後始末をしてただけさ…」

気がつけば雪はもう止んでいた…
「ところでどうやって帰んの?…この雪山から…」
そのとき、上空に仲間のヘリが現れる
「やっと来たな」
眩しい照明が辺りを照らしている。
綱状のはしごが降ろされた。
「これで帰るのさ」まさかヘリで迎えが来るとは、るりかも思ってもいなかった。
「もう片付けたみたいね」
操縦席から軽くウィンクする晶。
「ま、シナリオ通りってわけさ…」

その日は、コバルトブルーの夜空が鮮やかだった…
地上の夜景が彼女の瞳に輝いている。

これから始まるのは輝かしい夢のような世界…
そんな予感を期待していた。

そう、彼女と約束した…
ラブソングを聞かせるって…

12月23日
「WHITE ANGEL」のライブ会場は歓声に溢れかえっていた。
光り輝く夜景の中、スピーカーからあのメロディが流れ込んでいる…
「それにしても凄い人気ね…さすがWhite Angel」
るりかの友人、ほのかは目を大きくして驚いた。
「それより、はやくしないとライブ始まるよ!」
「待ってよ〜」

会場に着くのに30分もかからなかった
途中、彼が車で送っていったからだ
「なんとか間に合ったみたいね」
「ま、俺も聞いてみたかったんだよ」
やけにご機嫌な昌宏。
「そっか、WhiteAngelに興味もったんだ」
「当然、あの素敵な晶さんの大ファンだからね」
「もう、兄貴ったら!」
「ときなも、ギターの夏穂も可愛いねえ〜」

「あ…始まるよ…」

会場の照明が消え、
その刹那、美しくも切ないメロディがステージを包み込んだ。

巨大なスクリーンに、メンバー達の姿が映る

美しく切なげな音をだすリードギター。
迫力ある重低音を響かせているベース。
激しくもリズム感のあるドラムス。


そして、黒いレザースーツをまとった悠が現れた瞬間…
眩しい証明がステージ全体を包み込み…
華麗な詩声が響きわたる…

多彩な色のレーザー光線がドーム全体を駆け巡り
幻想的な光景につくりあげられた…

スクリーンには「Love」という文字が点滅していた。
「NextSongーー」
爽快な歌…綺麗な歌…切ない歌…
さまざまなナンバーが演奏された。
観客席から、演奏している悠達の名前を叫ぶ歓声が響き渡る
「Thank you―――!!」
それに応えるように叫ぶメンバー

光のシャワーに包まれた、メンバーの姿は本当に美しかった。
ライブは快調に進み、ついにフィナーレに突入する
「いよいよね…」晶はトリプルネックギターをはずし、
バイオリンを取り出す。

「くす…お兄ちゃんが羨ましいよ…こんなに、るりかさんに愛されてるなんて…」
優しい笑みで言うときな。
「アハハ、茶化さないでくれよ、ときな〜」
「じゃ…ラスト行こうか」
光一がスティックで合図をする

るりかは、この会場の何処かにいる。
見つけることはできなかったけど…
何処にいても一緒さ
二度と離れたりはしないから

僕はマイクをつかんだ。
「みんな、今日は来てくれて本当にありがとう!俺達がここまでこれたのも皆のおかげだよ!」
一斉に歓声がドーム全体に広がる
メンバー全員が一言ファンに次げた。

「最後に…この歌を贈りたいと思います…」

一番大切な…ひとに…

晶が演奏するバイオリンの美しい音色が
ドーム全体に響き渡った。


――『眠れなくて 窓の月を見上げた』―――

――『思えばあの日から 空へ続く階段をひとつずつ歩いてきたんだね』―――

――『何も無いさ どんなに見渡しても 確かなものなんて』―――

――『だけど うれしい時や悲しい時に あなたがそばにいる』―――



ねえ…聞こえるかい? 
この歌は… 君だけの ラブソングだよ…




(るりかの側に、あなたがいてくれて、本当に良かったよ…)
ほのかは優しい表情で、眩しいステージを見上げていた。
「え?…ほのか何か言った?」
「うんうん、何でもないよ…」

それは…眩しすぎて…夢のようで…


―――『胸にいつの日にも輝く あなたがいるから』――――

――――『涙枯れ果てても大切な あなたがいるから』―――――

――――――――――――――――――――――――――――――

―――『TO your heart』――――

―――『TO your heart I need your LOVE and care 』―

―――――――――――――――――――――

永遠を思わせる美しいメロディは全てを魅了させ…
こうして、夢のようなWhiteANGELのコンサートは幕を閉じたんだ…

「皆、おめでとう!!」
「アハハ、ときなちゃん…君はやっぱり可愛いね!」
「もう、昌宏さんったら…」

楽屋では淡く彩られた笑い声にあふれていた…
「そうだったんだ…あの歌は、るりかのために…」
夏穂がシャンパンを片手に取りながら、憂鬱そうな表情で言う。
「ああ、こうでもしないと僕の気がすまないからね…愛する側として…」
「フフッ、貴方らしいわ…」
「晶さん、お兄ちゃんはいつもこうなのよ♪…女の子の前でカッコつけたがる性格は昔から変わってないんだから…」
ときながイタズラっぽい表情で、僕の肩をたたく。
「ときなこそ、「想い出の坂」はもう見つけたのかい?」
「それが全然!…雄也の手がかりもつかめないし…って、もう〜話をそらさないでよ〜」
「ごめんごめん」
「ま…あとは、るりかちゃんとのご対面だけかな?」と光一。
「そうね…悠、会いに行きなさいよ…」
晶は微笑みながら、僕を促した。
「もちろんさ…」

…僕は走り出した…
大切な彼女のもとに…


「ありがとう…聞いてくれたんだね…」
「うん、貴方のラブソング…心に響いたよ…」
「るりか…」
嬉しくて涙が泊まらなかった…
「悠…ありがとう…」

君を想うだけで…
優しさや、ときめきがあふれて…
あの空の果てまで、たどりつけそうだよ…

会場では…
数分前に歌ったばかりのラブソングがスピーカーから響き渡っていた…


2人の新しい時代が始まる

「悠〜!はやくしないとコンサート始まっちゃうよ〜」
「アハハ、待ってよ〜」

いつものように
君と僕は真っ白に包まれたこの世界を歩き出す

空は果てしなく鮮やかで
雪と光が混じわい幻想的な空をつくりあげている
まるで祝福されたように。

「ねえ、今度は何処に行く?」
そう尋ねたるりかに…

「何処でもいいよ…君と一緒なら…」


瑠璃色の空は 今にも 今にも 

降りそそぐような鮮やかさで

見上げた僕達を包んだ
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