−リンクですってんころりん−
この冬初めて彼女とスケート場に来たが
こんなに明るくはしゃぐ彼女を見たのは久しぶりなような気がした
もともと運動神経のいい彼女は
「久しぶりに滑るんだ」といいながらも
リンクの上を自由自在に駆け抜ける
そしてそれが不得意なボクをからかうように不意にボクの背中を押しては
「つかまえてみろー」と
背中を向けたままボクから遠ざかっていく
でもボクはその姿が
「早く私をつかまえて」
そうボクに訴えているような
そんな気がしてならなかった
そして彼女が再びボクの背中を押そうとしたとき
ボクは少しだけ右に動いた
すると彼女はバランスをくずし
初めてリンクにしりもちをついた
「大丈夫?」と近くに滑り寄ったボクに
彼女は照れくさそうな表情を浮かべたが
氷についたままのその手を一向にボクの方には向けようとはしなかった
そしてボクがこの手を静かに差し出すと
彼女はしっかりとボクの手を握り返した
そしてすっかり冷えた彼女の手だったが
その奥にとても強いものをボクは感じた
〜Image Artworksより〜
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