−変わらない味−
『うわー...。すごいね。』
「そうでしょ?あなたが久しぶりに帰ってくるって言うから、ちょっと張り切っちゃった。」
『でもこれは少し多すぎない?さすがにボクでも全部は食べきれないよ。』
「いいじゃない。せっかくあなたが帰ってきたんだもん。それに、慌てて食べなくても大丈夫なんでしょ?」
『まあ、それはそうだけど。』
「それに、残りは全部お母さんがご近所に配って回るから大丈夫。」
『なるほど。妙子のお母さんらしいね。』
「でも...。」
『でも?』
「でも、せっかく私が作ったんだから、全部食べてほしいな...。」
『そりゃもちろん。おなかいっぱいになっても全部食べるよ。』
「なにもそこまで無理しなくてもいいのよ。ゆっくり食べてね。」
『うん。妙子が一生懸命作ってくれたんだもんね。』
「...どお、おいしい?」
『..........。』
「ひょっとして、おいしくないの?」
『..........。』
「...?どうしたの!?」
『ゴホゴホッ...!』
「大丈夫?ほら、これ飲んで!」
『...。ごめんごめん。あんまり急いで食べたもんだからちょっとつまらせちゃって。』
「もう...。ちっとも昔と変わってないんだから...。」
『でももう大丈夫。ありがとう。』
「そう...。よかった。それで、味のほうは...?」
『うん。バッチリだよ。とっても美味しい。』
「よかった...。」
『でもさ、妙子。』
「何?」
『さっき飲ませてくれた味噌汁さ、あれって妙子のお母さんが作ったの?』
「えっ...、どうして?」
『何て言うか...。その...。何となく懐かい気分になってね。』
「懐かしい?」
『うん。小さいころに妙子の母さんに作ってもらったのと同じ味がしたから。』
「ホントに?」
『うん。妙子もおせちの作り方はバッチリだから、あとはこの味噌汁を作れるようになるといいね。』
「...。うん!」
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