−初めに見たいのは...−

「ホントにここなの?」
『うん、そうだけど、どうして?』
「だって、まさかこんなところから初日の出を見るなんて、思ってもみなかったからね。」
『そうだね。ここは、誰も知らないボクだけのヒミツの場所。』
「そうなんだ...。やっぱりまだキミにはかなわないな。」
『どうして?』
「私のまだ知らない、いろんな場所を知ってる...。」
『そんなことないよ。優だって、ボクの知らないことたくさん知ってるじゃない。』
「そうかな...?」
『うん、そうだよ。ほら、ずっと前に教えてもらったあの場所。今でもはっきり憶えてるよ。』
「へえ、憶えててくれたんだ...。」
『そりゃあ、まあ...、ね。でも、あの時見た朝日もとっても感動したな。』
「っていうことは、ここから見える日の出はもっと綺麗なんだろうね。」
『うーん...。そう言われると少し自信ないかな。』
「ごめん。別にそんな意味でいったんじゃないんだ。」
『分かってるよ。でもね...。』
「でも?でも何...?」
『ううん。いや、何でもない。』
「なんか変なの。でも、まっ、いいか。」

『あーっ!』
「何?どうしたんだい?」
『雲が...出てきた...。』
「あっ、ホントだ...。」
『なあんだ...。せっかく楽しみにしてたのに。』
「仕方ないよ。ちょっとだけこの星の機嫌が悪かったんだろうね。」
『せっかくお願いごとをしようと思ってたのに...。』
「あははっ。そうだね。流れ星よりは珍しいから効果があるかもね。」
『別に笑わなくてもいいじゃない。』
「ごめんごめん。でも、ホントキミらしい考えだね。私そういうの好きだよ。」
『優にそう言ってもらえるなら、まっ、いいか!』
「ところで...。何をお願いするつもりだったの?」
『言わない。』
「えっ、どうして?」
『だって、口に出したら消えてなくなりそうだから...。』
「そっか...。じゃあ、太陽のかわり、っていったら変だけど、神様にでもお願いに行こうか?」
『そうだね。初詣もまだだし。』
「大丈夫。キミの願いはきっと叶うよ。」

『ところで、優は何をお願いするの?』
「ううん。私はない。だって、もう叶ったから...。」
『えっ?』
「う、ううん...。何でもないよ。」
『...。そっか..。』
「うん。そう!だから後はキミの願いが叶うように、しっかりお願いしなくちゃね。」
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