悲しき別れ:若菜編
きーんこーん・かーんこーん
若菜、今、帰り?
あっ、美鈴さん
そうですけど何か御用でしょうか?
うん、若菜は、今、付き合ってる人いる?
えっ?
だから付き合ってる人がいるかいないかって
わ、私は、もう、心に決めた方がいますが
(あの方に嫌われてしまったのにどうして)
それって、交際してるって事?
そ、それは
でも、どうして、急にその様な事をお聞きになられるのです?
うん、若菜と付き合いたいって人がいて
若菜に付き合ってる人がいるか聞いてきて欲しいって
そうだったのですか
でも、私、他の誰ともお付き合いする気がございませんので申し訳ありませんが
そう、残念
でも、しょうがないよね
相手には上手く言っとくから
すみません
いいのいいの
こっちが勝手に聞いただけなんだから
でも
はい?
若菜に交際してる人がいたなんて
よく、あのお爺さんが許したね
それでどんな人なの?
そ、それは
あっ、もう時間がすみません、お迎えの車が待っていますので失礼します
あっ、若菜
・・・・・・・・・・・
はぁ、はぁ、はぁ・・・・・どうしてあのような嘘をついてしまったのでしょう
私には、もう、あの方の笑顔を見る事も出来なくなってしまったのに・・・・どうして
お嬢様、若菜お嬢様
あっ、中島さん
どうなされたのです?
そのような悲しそうなお顔をされて
い、いえ
何でもないのです
そうですか
分かりました
さっ、御乗り下さい
・・・・・・・・・・・・・・・・
中島さん
はい、なんでしょうか?
私は、人を好きになってはいけないのでしょうか?
なぜ、その様な事を言われるのですか?
い、いえ、ただ・・・・その様に思っただけですから
お嬢様
また、あの方の事を思い出されたのですか?
・・・・・・・・・
若菜様の御気持ちは、この中島
よく分かっているつもりです
ですが・・・・
それ以上は言わないで下さい
お嬢様
あっ、すみません
大声を上げてしまって
いえ、私もお嬢様の御気持ちを考えないで申し訳ありませんでした
中島さん
私は、どうしたらいいのでしょうか?
あの方を忘れなくてはと思っているのですけど
どうしても忘れられないのです
お嬢様
迷惑だってことも分かっているのです
ですが・・・
お嬢様、忘れることなど・・・ないのではありませんか?
なぜですか?
あの方はもう、私の事を・・・・・
だからです
お嬢様は、あの方を今でも好きでいらっしゃるのでしょう?
ならば忘れてしまう事はお嬢様の思い出も無くしてしまわれる事になるのですよ
お嬢様はそれでもよろしいのですか?
・・・・・・中島さん・・・・・
確かにお別れになったというのは
お嬢様にとってとてもお辛い事でしょう
ずっとお嬢様を見てきたこの中島には、よ〜く分かっているつもりです
ですが、辛い事ばかり考えていても先には進まれないと思います
私は、あの方との楽しい思い出を胸にお嬢様には頑張って頂きたいのです
中島さん
私に出来るのでしょうか?
あの方との思い出だけで頑張れるのでしょうか
出来ます
若菜様には、きっと出来ます
この中島、そう信じています
ですから、そんな悲しそうなお顔をなさらないで下さい
・・・・・・・はい・・・・・
私、頑張ってみます
あの方との思い出を胸に頑張ってみます
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
終わり
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