トーキョーN◎VA 2nd. Editionリプレイ 『Shining Sky』
シーン7:《世界》は僕の手の中に
〜エピローグ〜
薄暗い部屋の中でブランチはただ一人、目を閉じて座っていた。
「ふう……。」
わずかに開いた唇から吐息がこぼれ落ちろ。
彼はゆっくり……まるで別れを惜しむように手をのばし、後頭部からのぞいているワイア&ワイアを引き抜いた。
すると、あれほどまでに明確だったヴィジョンが幻のように消え去った。今、あるのは無限に包み込むような暗闇と、自分。果てなき喪失感の中に彼は漂っていた。
いつもなら、孤独が彼を襲うはずだった。ウェブ内での輝かしい光景とこの暗闇とのギャップ。砂漠の蜃気楼のように、揺らめき消えてゆく幻をただ見つめるだけ。そんな苦しみをだれも理解してはくれなかった。今日までは……。
ブランチはわずかに頭を振った。そして今度は別のことを考え始めようとした。
「イワサキを敵にまわしたか……。」
思わず口から飛び出した言葉に彼自身が苦笑してしまう。しかし、そんなことどうだっていいじゃないか。またひとつ、敵が増えただけじゃないか……。
そこまで考えたブランチの口元に、また新たな笑みが閃いた。幼い少年には似つかわしくない壮絶な笑みだ。
まさに裏社会を生き抜いたものだけが浮かべられる笑みだった。
「ふわぁ……。」
ブランチはあくびを噛み殺すと、大きな椅子にもたれかかったまま、体を丸めた。どうやら、このまま眠りにつくらしい。
彼は眠る前に今日の出来事を反芻した。大切な宝物を眺める子供の顔で。
あのお姉ちゃん達に連絡するのは、また後でいい。今はゆっくり休みたい……。
ブランチの意識が闇の中に落ちる前、彼の物映さぬ瞳が何かを見た。しかし、あれは……。
あれは希望(ハイランダー)の光……。
もしくはどこまでも続く光り輝く空(シャイニング・スカイ)の下で彼を待っていてくれた人の笑顔だったのかもしれない……
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