10. 霊媒の真偽2  (「霊魂と交信する技術」参照)

 霊媒が本物か偽者かを見分ける事も大切ですが、実は霊媒の体を使用して語る霊魂が本物か偽者かも調べなければならないのでした。

 つまり、霊媒は確かに真面目な人で嘘をついておらず、その人によって起きる現象が霊媒の潜在意識ではなく霊魂の関与であったとしても、語っている霊魂自体が嘘つきであっては困ります。実は平凡な霊魂なのに、地上時代は高名な宗教家だったと嘘をついて出て来る霊魂がいては困るのです。そのため、霊媒と語る人は、その霊魂が嘘をついているかどうかを見分けねばならないのです。

 ところが、これはそう簡単な事ではありませんでした。実は日本には古くから審神者 (さにわ)といって霊媒に入った霊魂を判定する立場の人がいました。しかし、その審神者も霊魂に騙されることが多く、実際、霊魂の判定はなかなか正しく出来る事ではないのでした。
 歴史が流れて西洋から心霊研究が入ってきたり、日本でも神道系の新宗教などで鎮魂帰神法と呼ばれる術が流行るようになってから、霊魂を判定する役目が重要視されるようになりました。

 ところが、現実は甘くありませんでした。審神者と呼ばれる立場の方が質問する事は、決して霊魂の真偽を見抜く事にはならなかったと私は考えています。つまり、そうした人達は霊媒や霊魂に対する考えが不十分で、誤った判定をしておられました。そのため、あまり成果はなかったのではないかと考えています。

 たとえば、霊魂の身元を調べれば、その霊魂が本物か偽者かが分かるのではないか、と考えた方がいらっしゃるようです。こうした方は霊魂から生前の出生地や名前などを聞き出し、後で実際に調べれば霊魂が本物かどうかが分かると考えられたようです。

 ところが、実際に高級な霊魂達に聞いてみると、それはほとんど意味がないのでした。何しろ、霊魂として長く生きているのですから、地上にいた頃の事はほとんど覚えていない事の方が多いというのでした。

 それは、死後、時間がたった霊魂ほど顕著で、どうかすると自分の名前も思い出せない霊魂がいるのでした。
 ある霊魂がこう言われました。
 「あなたは幼児の頃遊んだ友達の名前を全て覚えていますか。小学校の住所を覚えていますか。私たちは死後の世界へと移転しています。霊魂が地上時代の住所など正確に覚えていると思いますか。
 大まかなことしか覚えていないものなのです。」と。
  
 地上の人間は常に自分の立場から霊魂を見ています。だからこそ、真実が分からないのでした。

 たとえば、他界して千年以上たった霊魂は、地上時代の自分の思想など覚えていません。地上の理念は地上でしか通用せず、環境の違う霊魂の世界ではまるで通用しないのです。何しろ、地上のように御飯を食べるために労働したり、肉体によって、出産したり、血縁で家族を作ったり…、とにかくそういった事が全くないのです。その上、幽体なので殺されることはなく、『汝、殺すなかれ』という言葉とも無関係なのです。

 そのため、人間とは全く違う思想で千年以上も生きています。仏教やキリスト教の哲人だった霊魂でも、その教義を地上の人間ほどには記憶していないものなのです。

 地上時代に宗教家や哲学者として有名だった霊魂に、その方の説いた宗教理念や思想についての質問をしてすら、正確な答が返らないものなのです。

 正確に答えるのはむしろ、長年地上にいて人間に干渉している、あまり高級でない霊魂の場合が多いのです。

 地上の人達の指導のために、必要と感じてシャカやイエスの思想を再考し、メッセージを送る高級霊魂はいます。しかし、もちろん、自分の事をイエスやシャカとは言いません。 実際に霊魂が本物かどうかを見分けるのは大変難しい事なのです。

 霊魂の真偽を、人間の側から見た考えで計ろうとしてもとても無理なのでした。