死 後 の 世 界 の 生 活

   人間は死後、しばらくは夢を見ています。それを、「冥界」にいる、と呼ぶ事があります。 
    しかし、実質的に死後の世界の住人になるのは、次の「幽界」に入ってからです。




5.ある霊魂の旅 (01.08.22)


 山本さん(仮名)は、霊魂の世界に入ってから、地上の時間ですでに数十年は経っている霊魂でした。つまり、普通なら、もうとっくに霊魂の世界に慣れていなければならないはずなのでした。

 ところが、山本さんは霊魂になっても地上の事ばかり気にしていたようで、新しい世界になかなか溶け込めず、いまだに分からない事がたくさんある初心者のような霊魂なのでした。

 そんな山本さんが霊魂の世界に入ったのは、どちらかというと下の方の世界でした。山本さんの家はお寺だったので、死後は当然、上の方の世界に行くつもりだったようです。ところが現実は、逆でした。何しろ、地上にいた頃は、仏教は霊魂の存在を否定していると言っていた方です。それなのに山本さんは、職業として先祖の供養をしていて、万に一つ、死後の世界があった場合は、極楽の方へ行けると考えていたのでした。しかし、現実は甘くありませんでした。霊魂を信じていないのに、いくら先祖を供養しても、それで自分が極楽へ行けるはずなどなかったのです。

 山本さんが霊魂の世界を抜け出したのは、ちょうどお盆の頃でした。お盆になると、一部の霊魂は地上に帰って行きます。上の方の世界では、許可の出た霊魂だけなのですが、下の方の世界の場合は、時々、地上に帰る方法を知っている霊魂がいるようで、そうした霊魂に聞いた一部の霊魂達は、地上に戻る事があるようなのでした。

 山本さんが地上の家を見つけるのは、比較的簡単でした。何しろ、お寺だったので、すぐに分かったのでした。

 山本さんはなつかしい我が家に戻ると家族に対して必死に訴えました。もちろん、死後の世界の実在についてでした。それでも、家族は誰一人気付きません。それどころか、死後の世界なんかあるはずがないと笑っています。

 (このままでは、皆、自分の二の舞になってしまう。)

 山本さんは、とうとう決心しました。山本さんは霊魂の存在を気づかせようとさまざまな細工をしました。時には、蝋燭の炎を揺らそうとしたり、また時には、幽霊として出現しようとしました。ところが、どうやってみても、うまく行かず、何の効果もないのでした。

 とうとうお盆は終わりました。それでも、山本さんは家を離れませんでした。それから五か月経ちました。この家の人には、なぜか、悪い事ばかり起こるようになりました。どうやら、山本さんの行なう行為がことごとくうまく行かず、結果として、山本さんは、悪霊同然となってしまったそうです。



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