2. 若 く し て 他 界 し た 人
ある霊魂の他界後の足跡を、
なるべく分かりやすいように、物語風に記述します。
山本泉(仮名)は若くして自殺した。彼女はノイローゼだったようで、死んでもしばらくの間は笑うことさえなかった。そのためか、何かと後ろ向きに思考し、積極性を失い、死後の世界の住人となっても、誰とも話そうとしないのであった。
彼女が入った世界は街であった。いろいろな形の家が並んでいて、霊魂も大勢住んでいた。その上、他の霊達も気軽に声をかけてくれるのであった。
それでも彼女はうつむいたままで、何やら物思いに耽っていた。とはいえ、ここは霊魂の世界である。地上とは勝手が違う。食事もいらなければ、寝ることもない。おまけにどの家に入っても誰も文句を言わないのである。
ある時、彼女は思い切って聞いてみた。
「ここはどうして、誰も私に文句を言わないのですか。」
ある女性の霊魂が教えてくれた。
「あなたは、まだ来たばかりで、何も知らないのでしょうけど、ここの生活は思っただけで何でも出てくるのよ。」
「えっ。」
泉が驚くと、女性は笑いながら答えた。
「あなたのいた世界は物でできているから、家を建てるのは大変なのよ。でもね、ここは物質では出来ていないの。だから、念じるだけですぐに家が建つのよ。欲しいと思えば何でも手に入るの。だから、泥棒もいなければ警察もいらないのよ。
何しろ、誰かに取られてもまたすぐに作れるのよ。」
「でも、土地は自分の物じゃあないんですか。」
「ほっほっほっ。」
女性は口に手を当てて笑うのであった。
「土地なんて物はないの。地面はあなたに地面と見えているだけなの。まあ、そのうち、ゆっくり覚えるといいわ。最初は皆、戸惑うのよ。」
泉は、付いていけない、という感じがした。ただし、ここは地上とは全く違う世界なんだ。それだけははっきり分かったのであった。
それから、どれだけかの時が流れた。泉は笑顔で霊魂たちと語っていた。まるで別人のようであった。
*このページは自殺を推奨しているわけではありませんので、誤解のないようにしてください。
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