3. 死 後 、 幸 福 に な り そ こ ね た 人

 ある霊魂の他界後の足跡を、
 なるべく分かりやすいように、物語風に記述します。







 死後の世界は不思議な世界です。地上のような物質の世界ではないので仕組みが違います。そのために、幸、不幸も地上の感覚で考えてはいけないようです。

 静雄(仮名)は社会的な地位があった。そのため、生活は贅沢で威張り散らし、見栄っ張りで、人に嫌われている方であった。
 そんな静雄にもやはり死ぬ時が来た。静雄は若い時は死後の世界など馬鹿にしていたが、老いてからは、頻繁に仏壇の前に座っていたのであった。

 静雄が落ち着いた場所は、死後の世界としては標準的なのか、地獄といった感じもしないし、天国といった感じでもないのであった。
 ある時、静雄は先輩の霊魂に尋ねた。
 「俺は将来、極楽に行けるかのう。」
 先輩が答えた。
 「それはわしにも分からん。わしはここに長いが、ここから居なくなった者も少ないし、居なくなってからの事は分からんから、何とも言えんのう。」
 「なんか、情報はないのかのう。」
 「ないなあ。皆、極楽なんて考えるのは、最初のうちだけじゃから。」

 静雄はがっかりした。頭も良く、地位も名誉もあり、老いては寺に力を入れていた静雄としては、もし仮に死後の世界があったら、極楽の方に行きたいと願っていたからである。

 静雄は決心した。皆が止めるのも聞かず、極楽を探しに行く事にしたのであった。
 静雄の長い旅が始まった。とは言っても、別に食料がいるわけでなし、足も老人のはずなのに、ちっとも疲れないのであった。

 どれだけ経ったのであろうか。静雄は途中で休んでいた。いや、疲れたわけでもないので、気分転換をしていたのである。
 そこへ、一人の男性の霊魂が現れた。
 「そこの人、どこへ行かれるのですか。」
 静雄は答えた。
 「極楽という所をいっぺん見てみたいと思うてのう。」
 「それなら、私の後について来なさい。極楽かどうかは分かりませんが、ずいぶん偉い人が居るという場所を知っていますよ。」
 「そうか、それはありがたい。」
 静雄は飛び上がらんばかりであった。

 長い時間が経った。静雄はある恐ろしい霊魂の部下として、毎日絞られていた。
 「辛い! 辛い! 逃げたい! ほとけさまー!」

 静雄の悲しい叫びは誰にも届かないのであった。


この人は無知なるがゆえに、悪い霊魂に騙されてしまい、 取り返しがつかない失敗をしてしまったのでした。
どこの世界でも、悪い人は、まるで善人のような顔をして寄って来るのかもしれませんね。


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