Essay


   「女の喧嘩と由美かおる

日本はすっかり欧米調になり、もともとの日本の文化は
どんどん失われている。ダイニングテーブルが浸透し、
ご飯を食べる時に正座をしたことがない子供が増え、ま
た、自分も箸を持てないからか、上手に箸を持つ手を教
えられない親が増えている。
テーブルの椅子に正座をしながらこの文章を打っている
私としては、自分の未来を今の子供たちに託すのが不安
なような気がしている。
ま、箸をもてないくらいでここまで言うのは大げさだけ
どね‥。


さて、時代も人も移り変わるが、そうは言いながらも変
わらぬものもある。
石器時代に残された洞窟の落書きに「最近の若い者は‥」
という愚痴が書かれているそうだが、これこそ変わらぬ
真理、先ほど私が嘆いた内容に変わらない。
ある意味、私はその石器人の何かを受け継いでいるので
ある。



上記に挙げたような内容とは全く異なる次元の話なんだ
けど‥。


今まで日本は沢山の感覚を欧米並みにしてきたけれど、
私は、日本がまだ到底変わらないであろうという部分を
見つけた。見つけたと思っているのは私だけかもしれな
いし、変わりつつあるとしても、女の私がそれに気付く
ことができてないだけかもしんないけど。


私が見る映画や読む本は、ほとんど外国人によるもので
ある。それで、その中で、どうにも納得いかない描写が
しばしば登場することに気がついた。一度気になると、
どうもその違和感をぬぐえないのである。


昨日の金曜ロードショー(ラッシュアワー2)にもその
シ−ンは出現した。エンターテイメントっぽい映画には
よく出てくるシーン。
それは「女のケンカ」である。私はどうも、外国映画に
登場する、女同士の闘いというのに合点がいかないのだ。
女が怒り、髪をつかみ合いながら闘う。
男同士のヒーローがするように、カーチェイスとか銃撃
戦はあり得ない。絶対に肉弾戦なのだ。


私が一番最初にこれに気付いたのはトータル・リコール
という映画だった。主人公の地球人妻であるブロンドの
(シャロン・ストーンだわな)女性と火星でパートナー
となるブルネットの女性とが、ものすごいケンカをする
のである。ケンカというよりは闘いなんだけれどね。


私は正直、見たくない気持ちになった。女同士の闘う姿
は受け付けなかったのだ。なんとなく、間違っていると
いう感覚があったのである。


で、この女のケンカ、その後もよく目にすることに気が
ついた。


このシーン、なんとなく筋とは関係ないオマケみたいな
感じがする。日本で言えば、由美かおるの入浴シーンや
しずかちゃんの入浴シーンに当たるだろうか。
別になくてもいいんだけど、取りあえず必須になってる
場面と言えると思う。


で、何故「女のケンカ」が「由美かおるの入浴シーン」
と同レベルになるのかというところだが、これに関して
は私の勝手な推量だと言わざるを得ない。
私にとっては、両方とも同じくらい筋に関係なく、それ
にも関わらず、かなり頻繁に出てくるシーンであり、全
くシラケるシーンなのである。
だから単純に、男性向けのシーンだと結論付けたのだ。

  あ、そうだ。由美かおるさんの名誉のために言わせ
  ていただきますが、私は全くしらけているわけでは
  なく、ある意味とても感嘆して観させていただいて
  ますので誤解ないように‥。


で、私はこれに関して、日本の男性が「え?」と言う事
に期待している。私が見つけたという日本の変わらない
ものとは「女のケンカ」を「由美かおるの入浴シーン」
と同レベルには見られない日本の男性の感覚を言ってい
るからだ。
私は、一般に、日本の男性にこの感覚はないと言えると
思う。



外国の小説を読んで「へ?」と思う描写として、男性が、
怒っている女性に対して「怒っている君も凄くキレイだ」
というものがある。
え〜?そんなのあんの〜?と言うなかれ。凄くあるのだ。
しかも、女性が書いた小説にも、そういう描写はよく出
てくる。怒ると目がキラキラして、頬が赤くなり、とて
も魅力的なんだそうだ。
日本なら、さしずめお風呂上りの女性だ。

凄く違うけど、少し似ていることに気付いていただける
だろうか?


日本人はキレイ好きな国民で(と言われているのだね)、
よく風呂に入る。女性なんか、風呂上り濡れ髪で、頬が
上気して目がうるんでいたりする。服も少し緩めに着て、
なんとなく汗ばんで色っぽい。

欧米の人はあまり風呂に入らない(と言われているのよ
ね)。同じような状況を女性が生み出すのは、少し乱暴
な理論ではあるがケンカである。ケンカ後、髪がほつれ
毛で、頬が上気して目がランランとしている。服もあち
こち破れたりして、なんとなく汗ばんでいて‥‥色っぽ
いのかな?



この10
年、この感覚は日本にないよなぁとますますの
確信を持ちながら観ている。由美かおるが毎回ゲストの
女性とケンカを始めたり、しずかちゃんが何かにつけジャ
イ子とケンカをしたりするのはどうも考えられないのだ。
それに、日本人ならそんなシーン誰も望んでいない。

日本がキレイ好きで、お風呂好きである限り、この部分
は変わらなそうである。


どうか皆さんも、その点を考えながら外国の映画などを
観ていただきたい。

変ではあるけれど、なんとなく日本人としてのアイデン
ティティを感じることができるかもしれない。

怒れる女がセクシーだって言うシーン、うんざりするく
らい出てくるので。