梅内 美華子 作品



6度目の紹介です。 「FLASH」 2首です。

シキリ、シキリ



ジタンの香りさせつつ入るトンネルのナトリウム灯に君は色づく



特急の電車に眠りている君に尻尾のごとき光走りぬ



まるで映画のワンシーンみたいだって思ったの。

君が人工灯に照らされる瞬間を見ている私。

それは暫く点滅を繰り返す。

それをずっと見つめ続ける私。

そして、気にも留めないか全く気付いていない君。



君がフラッシュに照らされている瞬間瞬間を見るのは、

いつも私だ。

君が気付く必要はないのだ。

その代わり、私は君の暗さに目を留めないから‥。





なーんて、ちょっと感傷モードに入ってみた。

ははは。(^○^)





一首目

ジタンって牛乳臭い煙草だって聞いたけど本当かな?

そんでもって、フランス語っていうのも本当かな”ジタン”??



あたしは古典的なステレオタイプの持ち主だから

煙草ときて連想するのは男の人。

ほいでもって無口。

ふんでもって大人。←35歳くらい

(あたしの年齢と正比例であたしにとっての大人の年齢も

上がってくんだよなぁ。ばかみたい。)

ジタンとくれば、フランス映画「大人は判ってくれない」みたいな

とっくりの黒のセーターに、天然パーマだ。

(ここら辺はチョウ個人的な連想っす)





君はくわえ煙草で運転。私は助手席。

二人きり車の中、そしてトンネルへ。

車のこもったエンジン音。ゆれる紫煙。

断続的なflashが彼を照らし出す。





おぉ!なんと素敵なsituation!

フランス映画だったらここで、

「この男女の光と影」

とか言っちゃって、過去の映像が折りこまれたり

するに違いないんだわさ、これがっ!



実際のところ、あたしは煙草も無口も真っぴらゴメン。

素敵なsituationは分かるんだけど、

ホント、当事者じゃなくてよかった。



って、ちょっと思いこみ激しいかな?あは。





2首目

このウタの「君」は私の知らない人だとよいな〜って思ったの。

見知らぬ人。ただ席が隣の人。

そして君は私より若い人。

そうすると、君を見つめる私の目が優しくなるでしょ。

それほどまでに若い君だ。





光は君の全体じゃなくて、一部分を細く長く照らす。

明るく、暗く、不定期に君を照らす。

外は夜。

私は君の目的地を知らない。

君を待つ人を知らない。

そして今、君は君自身を照らす光を知らない。

何処が照らし出されているかも、当然知らない。

閉じた目の奥に、君は目的地を探しているのかもしれない。

自分を待っている人を探しているのかもしれない。

私は近くの他人で、君に何も語ることが出来ない。

ただ、君を照らす無数の気まぐれな光を見つめるだけ。





あたしはここで、自分の知らない人を「君」として

設定してしまったのだけど、

それは随分臆病な想像だわよね。うん。

臆病すぎて、無難すぎるぅ。(勇気ないなぁ‥)





あたしに点滅するフラッシュを見るのは一体誰なんだろう?

そして、その目はあたしに優しいだろうか?









今回の作品
 ゼブラ・ゾーン
出典  1994年発行   「横断歩道」 (梅内 美華子歌集) 
1首目   桜貝の爪  より
2首目   きこえて滅ぶ  より