梅内 美華子 作品



4度目の紹介です。  「月」  2首です。
シキリ、シキリ



ソックスの下がるかたちに月のぼりわれは歩くよ鋏のように



                                                              みかづき
夜半の道君ひとりする物思い知らざれば照るわれは若月


人は光を放つものが好きらしい。

かく言うあたしもそう。

目に飛び込む光の粒子(細かい事は言いっこなしね!)に

ぼーっとする一人なのだ。 ははは。

あたしは月も星も太陽も好き。

自ら光源たりうる太陽も、

周囲に輝くものなくしては輝くことのできない月も、

そして個々にその理由は知らないけれども、

空に光りまたたく星々も。





あたしは月を好きな自分を、ついついマイノリティみたいに

思ってしまうのよ。そして、

月を好きな誰もが、マイノリティな感覚で月を好きなのでは?

と思うのね。



結局、みんながそう思っているんなら、

思いっきりマジョリティなのだけどね。 はは。



人ってマイノリティで何かを支持し、好きである感覚が

好きなのかもしれないと思うの。

そういう魅力を「月」は持っているんだろうなぁ。





1首目



あたしは靴下が大嫌い。滅多にはかない。

だから「ソックス」はあたしから乖離して、女子高生を連想させたの。

あたしの頭の中で キコキコ 歩くのは女子高生なのよ。



― あたしの頭の中の風景 ―



気が付くと、さっきとは違う位置にある

コマ送りのようにのぼる月。

一歩一歩歩くごとに ズッズッ とずりおちるソックス。

月明かりの夜を徘徊する女子高生。

見慣れた駅前の風景。





ちょっともの悲しく感じてしまうのは、

あたしがもう29歳になんなんとするおばさんだからかなぁ…。



女子高生を横目にぎこちなく歩くあたし、

何かを切り裂き断絶したいあたしも、夜の鋏になるのかもしれないけど。





2首目



あたしのもの想いは全く独りのもの想い。

きっとみんなもそうだと思うの。

たった独りの物思い。

あたしは他の誰かの物思いもそっちのけで、自分に沈んでいく。





誰かのためになれるのかもしれず、なれないのかもしれず、

誰かの暗い夜を照らす存在のような気がしていても、

その光源はその誰かの方で、

あたしはその反射でしかないのかもしれず。

しかも、夜を照らす自分は、満月に届かない若い若い三日月。

夜を照らせる自分になっているような気がしても、

きっとそれは、あたしが自分独りに沈んでいるからなのだろうなぁ。





この2首目の「知らざれば」の部分は強烈なパンチだったの。

あたしにとっては。



あたしは、君の物思いを知ってもなお、

光を放てる存在でいられるのだろうか?



君は地球上のすべての命なのかも知れず、

君はたった1つのちっぽけな命なのかも知れず、

もしかすると、君は、あたし自身なのかも知れず…。



今回の作品  出典

1首目  2000年発行  「月鞠」創刊号 (同人誌)
「完全手洗い」 より

みかづきさい
   2首目  1999年発行  「若月祭」  (梅内 美華子 第二歌集)
「萩の息」 より