頭 HIDEO AZUMA
吾妻ひでお

プロフィール
1950年、北海道生まれ。
SFに傾倒しつつ、石森章太郎の「マンガ家入門」の影響でマンガ家を志す。
69年「リングサイド・クレイジー」でデビュー。
美少女漫画、ロリコン漫画、そして不条理漫画の祖と呼ばれる。(実質的には祖、ではないのだが)
イノベイターにしか観れない景色を観てしまったがためか、一時期、長く休筆し、失踪していた。
代表作は、星雲賞受賞の「不条理日記」。
日本のオタク文化に与えた影響も絶大であろう。

 

 

レビュー

夜の魚
(短編集)太田出版
夜の魚
■人間の心はどこまでも拡大し、部屋を充たす。が、充たされない。
部屋の壁がどんどん広がっていくからだ。
脳味噌の室内空間は宇宙よりも広いけれど、しかし先の方には部屋の壁が見える。
頭打ちになりながらも壁を突き破ろうとし、それが決してできないのに、行動を持続することこそサイケデリックだろう。
そして、悟りにも近い極みに達しようとするその行動の持続そのものが、素晴らしい一方、いかに危険でもあるか、この筋も意味もない物語りは物語る。
多幸感の漲るサイケの国にずっと寝転がっていると、体は四畳半の部屋の中で生きながら腐り、蝿がたかりだす。
他人と違うところに行くのに、ピクニック気分ではいけないのである。
しかし軽い気持ちでも行けるくらいサイケの国は近いからヤバイ。

桃源郷を1回観てしまった人間の、そこに居座ろうとする意識と、帰ろうとする意識のせめぎあい。「夜の魚」は孤独すぎる魂の闘いの、凄まじい記録である。
そこらの中身ゼロの表層的不条理漫画とは深さの規模が全然違うのだ。
あんまり深すぎて、吐きそう。(雅)

 

 

モドル
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