頭 CHIBA AKIO
ちばあきお

プロフィール
1943年当時日本の領土だった満州にて生まれる。戦争終結後混乱の中、日本に戻ってくる。
もともと手先が器用でエンジニアなどを目指し、おもちゃ会社にて働いていたが病気のため仕事を断念して自宅で療養することに…
その間に自然とお兄さんのちばてつやの漫画のアシスタントをするようになり、それを見た編集者が「そろそろ漫画を描いてみないか」とスカウトし、漫画家になっていった。
とても細やかな神経とやさしさを持ち合わせた性格で漫画にもそれがとても現れていて読者をあったかい気持ちにさせてくれる数少ない漫画家。
ただ、完璧主義者のため筆が遅く週刊ペースには無理があったようで、しだいに心労がたまっていったのか41歳の時に自ら命を断ってしまうのだった。

 

 

レビュー

校舎うらのイレブン
(短編集)集英社
校舎うらのイレブン
■ちばあきおはプロフィールでも触れたように作品に対して妥協を許さず何度でも加筆・修正を繰り返しとても時間をかけて漫画を描いていたそうだ。
デビュー作になる短編には最初だし編集者は2、3ヶ月の期間を言い渡したが結果的に1年かかってしまったほど…
それから長期連載の代表作「キャプテン」まで少女漫画雑誌から少年誌まで色々な雑誌にて短編を描きあげ掲載した。
その中から選り抜きの短編を集めた作品集がこの「校舎うらのイレブン」なのである。
デビュー作である「サブとチビ」やちばあきおの自伝的マンガ「がんばらなくっちゃ」など全てが面白い作品。
中でも初めて長編といえるページ数を描きあげた表題の「校舎うらのイレブン」は恵まれない環境の生徒達が熱血教師と出会いガッツとチームワークで強くなるというキャプテンに繋がるものを作った転機の作品と言える。
あと忘れてはいけないのが「半ちゃん」と「みちくさ」。
「半ちゃん」は野球が心から好きだけどヘタッピな少年。その少年が草野球チームを立ち上げる話なのだが、「勝ちへのこだわり」と「単純に楽しみたい」という間で揺れる葛藤が見事に描かれている。これは野球だけでなく色々な物事に当てはまるテーマで実に深い。それとラストがとにかくビックリした。読んで欲しいので書かないけれど、少年漫画でこんなに突き放された感じで、しかもクールなラストは見た事がないです。読んだその日はずーっとボーっと考えさせられた。北野武の映画が目指しているクールさをあっさりとこの少年漫画は描ききっていると僕は思った。
そしてもうひとつ「みちくさ」ですが、教育ママに育てられ常に成績優秀のメガネっこと勉強なんて大嫌いのガキ大将がほんのちょっとの‘みちくさ’から廃屋の地下室に閉じ込められピンチになってしまう。このデコボココンビから徐々に生まれ出す奇妙な友情は本当に感動します。漫画で完結した後の2人を色々想像してニンマリしちゃう漫画です。(クロブチ)

 

 

キャプテン
(全26巻)集英社
キャプテン
■ちばあきおの名前を知らなくてもこの「キャプテン」を知ってる人、大好きな人が以外と多い。
特に今では働いている年代の人達には大人気だったようだ。アニメ化されたせいかもしれないけれど漫画家の名前などは抜きにして純粋に作品が面白いからだろう。
僕も最近まで「キャプテン」の存在は知っていたけど、野球漫画でしかも全部で26巻もあるなんて結構疲れそうとか思って敬遠してる部分があったのですが、やっとの事集めて第1巻どころか第1話を読んだ時点でこの漫画の半端じゃ無いオモシロさの虜になってしまい、一気に全部時を忘れて読んでしまったのだ。間違い無く僕が今まで読んできた野球をテーマにした漫画で一番の作品。
では何がそんなに魅力的なのかというと登場人物達の人間の魅力につきると思う。
他の野球漫画では主人公が格好よくて思いっきり打ったり魔球を投げたり、または「私を甲子園に連れてって」って可愛いマドンナに言われたりするのがほとんどだけど、一切そんなのはナシ。
本当に主人公のキャプテンをはじめナインは揃いも揃って地味なのだ。でもそんな地味な中学生達にどうしょうもないほど惚れ込んじゃうし涙を流させられてしまう。
冷静に漫画を構造的に(?)見てもいかにも感動させようとするシーンやセリフが無い事に驚かされる。黙々と練習してる姿や誰でもしそうな気持ちのぶつかり会いなど何気ない描写の積み重ねを描く事によって読者に本当に伝えたいメッセージを全てを伝えてしまっているのだ!!こんな漫画がかける人はどれだけいるでしょうか?
ちばあきおの作品に共通して感じる事だけど、出てくる人物にちばあきお本人も同時に感じている。実際会った事もないけれど、絶対ちば先生は谷口や丸井、イガラシ、近藤のようないいやつだと思ってしまいます。
もちろん野球のゲーム事体も本人が野球をする人だというだけあってかなり本格的。野球の心理戦やテクニックなど奥深さを知らされた。
さぁ誰かキャプテンを読んだ事ある人、僕とどのキャプテンが好きかで討論しましょう!!(クロブチ)

 

 

ふしぎトーボくん
(原案:千葉樹之)
(全6巻)集英社
ふしぎトーボくん
■動物ばかりか、植物、さらには星々とまで意志の疎通が出来る少年、トーボくんの物語りは、読み手の心に、優しく厳しく語りかける。

ちばあきおは実にクールだ。
心温まる話、胸に響くシーンを描くときも、決してウイットになりすぎることなく、冷静で透徹とした視点をもって描写する。
慎ましく朴訥なタッチと、淡々とした雰囲気の中で、都合のいい美化も、都合のいい貶めもしないで、ありのままに世界を描くバランス感覚が、実によい。
そして本質を時には残酷にさらけ出しても、なお、素晴らしく豊かな暖かさを同時に醸し出せるのは、原作者であり、実の兄弟でもある千葉樹之をして「トーボくんのようにふしぎな人」と言わしめた、ちばあきおのふしぎな人柄によるものなのだろう。
クールで、暖かくて、不思議を想う。
ちばあきおは実にピュアだ。

本質的にピュアな表現は、本当に美しい。(雅)

■「キャプテン」の長期に渡る連載をなんとか完結させた後にちばあきおは3年間の休養を取る。そしてじっくり休んだ後に弟で漫画の原作者をしている千葉樹之(七三太郎)と組んで「本当に描きたい作品をやる」という目標で出てきたのがこの「ふしぎトーボくん」だそうだ。
しかし当時のジャンプで採用されていたアンケートの人気ランキングではあまり人気がなく本人達は非常にガッカリしたらしい。
でも、この漫画は本当に素晴らしい漫画です。僕の中のランキングでは確実にずっとベスト5内にランクされ続けると言ってもいいです。
もしこの先自分に子供が出来た時、読ませたいと思う漫画でもあります。
とにかくこのページを目にしてこの文章を読んでいる人、「買って読んで」と言うしかないです。絶対後悔はしませんよ。というかこれを読んで何も感じる事の無い人間と僕は仲良くなれる気がしません。
自閉症気味で友達がいない主人公の少年トーボくんは色んな動物達と会話できる不思議な能力があって動物と仲良し。でも人間とはうまく会話ができない。
動物と会話する事により逆に人間社会の矛盾を浮きぼりにしたり、人間社会の縮図を見せたりと実に深くて感動的なお話。
徐々に人間にも心を開いて学校にもお友達が出来ていくと共にその友達の心をも変えていく感覚がとても清清しくて自分が生活して年月を重ねてきた過程で忘れかけていた想い出や感覚をひっぱり出してくれます。
後からちばあきおの人生を知って照らし合わせてみて気が付いたのですが、この作品で描きたかったのはちばあきお自身の社会や人間に対する警告やメッセージでもあり、同時にSOSのサインでもあったように感じました。(クロブチ)

 

 

プレイボール
(全22巻)集英社
プレイボール
■「キャプテン」の続編にあたる作品です。
「キャプテン」は「月刊少年ジャンプ」にて連載されていた作品でこの「プレイボール」では本人は最初嫌がったけれど熱心な当時の編集長に頼み込まれて「週刊少年ジャンプ」に土俵を移して連載されたのでした。
「キャプテン」の墨谷二中の最初のキャプテン谷口くんが墨谷高校に進学した所から話は始まるのです。
なにしろ「キャプテン」という漫画は「新しいキャプテンができる→新入部員が入部→練習風景→大会」というサイクルを守り、大会の後の3年が引退して新しいキャプテンを任命するシーンはおろか卒業した選手は丸井を除き一切登場しないで噂話で登場する程度だったのだ。それもクールで格好良いのだが、ファンの心理としてやっぱり卒業した谷口クンは高校でも大活躍してるのかな?って気になるのが本心でそのファンの声に答える作品がこの「プレイボール」なのだ。
「プレイボール」では色々とサービスともいえる歓迎会や送迎会、OBの応援から選手の家庭での生活まで描かれていてとても嬉しかった。
またただ野球だけでなく高校野球のもう一つのテーマである「本業は学業」「卒業後の進路」などもしっかり真面目に取り組まれていて好感が持てた。
しかし週刊のペースがちばあきおには相当にこたえたらしく徐々に疲労がたまっていたのが後半には伝わってきた。ゲーム内の描写も単調な印象を受けてしまう。そして最後はストーリー的にはこれから頑張って今度こそ甲子園を目指そうって所で連載がストップしてしまっている。非常に残念だけれど本人の事と作品のレベルを考えるとこれでしかたがなかったと思えます。
それにしても谷口クンは最高です!!(クロブチ)

 

 

モドル
copyright(c)1999 MANGA JIDAI