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KAZUICHI HANAWA |
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花輪和一 |
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■銃砲刀剣類不法所持により、三年間の獄中生活を過ごした花輪和一が、記憶をたよりに再現した獄中記。(それにしても花輪和一の画力には敬服する) 普段の日常を綴るかのように、穏やかに淡々と、獄中の日常が、執拗に描写される。 異様なほど細部に執着して描かれる刑務所の中は、陰惨でもなく、むしろ刑務所の中の有様、ものごとに対し、好奇心と興味を全開にする花輪和一の眼を通しているため、しばしば楽しげにすら見える。 不自由の中から生まれる自由が、ここには在り、普段、滅多に気づきようもないことへの気づきが在る。 だから読者は普段気づいているつもりで、見逃していた驚きを随所に再発見することになる。 大上段に構えず、自分の眼と心が記録(記憶)したありのままを、自分の手によって再現する。 それが背筋が寒くなるほど自然に行われているゆえ、この獄中記は、他に類を見ない訴求力を持っている。 「食って、寝て、起きて、食う」 「夢を見て、起きて、寝て、夢を見る」 どうでもいい(と勝手に思っている)ことの中に、普遍的で、絶対的な本当のことが潜んでいる。そのことを、花輪和一は本質的に無意識に、実感しているのだろう。 冴え渡った感覚に基づく実感のなんと確かなことよ。 当たり前に見えて不可思議な日の常に、思いを馳せる。(雅)
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