JUNJI ITOH | |
伊藤潤二 |
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「地図の町」
■伊藤潤二は、楳図かずおや筒井康隆に多大な影響を受けていることを語っているが、その作品の放つ雰囲気には、前者に加え諸星大二郎的匂いも垣間見られる。 |
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「双一の誕生日」 ■愛すべきクソガキ、双一の連作の中でも、実に味のある佳編。 釘を何本もくわえて、自分勝手な呪いをかけるひねくれ小学生、双一のキャラクターは、実際にいたらほんとむかつくんだろうけど、漫画の中で見れば、逆に「こいつ憎めねえなあ」ってなってしまうのだから人間は勝手なもんだ。 双一に毎回のように「ホラーな目」にあわされる愛すべき被害者、路菜のリアクションも、真剣に怖がってるはずなのに、かなりユーモラスで楽しい。 「首吊り気球」などで心底恐怖した息抜きに読んでみてほしい。 この独特のユーモアも「うずまき」などに受け継がれていく、伊藤潤二の魅力のひとつなのだ。 炸裂するいかれた台詞センスに注目!(雅)
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■恐怖と笑いは紙一重。それは円周上の1度と359度で隣り合せになっている。 だから笑いに近づきすぎた恐怖は、勢い余ってそのまま一周して恐怖に戻る。 伊藤潤二の作風は、怖さの中に何処かユーモラスな側面を持っている。(「双一シリーズ」はその典型) だが、本短編集収録の「首吊り気球」に関しては、とにかく怖い。 1歩間違えばギャグに近い化け物の造形や世界観なのに、その描写の度が過ぎた結果、 笑いを通り越した、寒気のするような狂気の世界を現出させている。 リアリティも、あまりになさ過ぎると、かえって説得力を持つという実例。 否応なく悪夢の世界に引きずり込むその力量は、やはり只者ではない。(雅) |
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「記憶」
■楳図かずおは「心の醜さが顔に表れる」というテーマを繰り返し描いているが、伊藤潤二は「心は醜いが美しい」たちの悪い女を繰り返し描く。
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「暗殺」
■拙いながらも、既にその潜在能力の高さを垣間見せていたデビュー作にして、その後、伊藤潤二の代表作となった「富江」連作の中の一編。
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「悪魔の理論」
■わずか10Pの短編ながら、伊藤潤二作品の中でも1,2を争う禍々しい作品。
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「長い夢」
■伊藤潤二のSF的資質が開花した傑作短編。
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■読者の予想を遥かに上回るもの凄い展開の末、完結した長編作品。 「首吊り気球」の紹介で、「リアリティも無さ過ぎるとかえって説得力が生まれる」と書いたけど、これは、最早それどころじゃないくらいぶっとんでいる。 「うずまきに呪われた街」、たったこれだけの言葉から、限りなく暴走していく想像力。 そして、現実の街はあっという間にここではない世界に侵食され、全ての常識は覆され、ただ、そこにあるものがリアルなものとなっていく。 リアリティとは、現実をそのまま描くことではなく、「そう思わせる説得力」だから。 登場人物のひとりはひたすら「狂っている、、、」と呟きつづけるのだが、この世界は本当に狂っている。奇想天外の極地と言ってもいい。 今ここまで変な漫画を描ける人はそういない。これは最早ホラーの枠を完全に飛びだしている。 ただ、圧倒的にビザールで、だからこそどこか魅惑的な「漫画」なのだ。 ファンタスティック!(雅)
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