頭 MINORI KIMURA
樹村みのり

プロフィール
昭和24年11月11日埼玉県生まれ。
「COM」、「別冊少女コミック」、「りぼん」などに掲載されたその作品群は、どれも、夢と現実、ウエットとシビアを等価に、わかりやすく、みずみずしく描いた良質な短編ばかり。
低年齢層の少女にも、わかりやすくものごとの本質を見せていくその手法は、実は、成長したと思っている男性女性たちに鋭く刺さるものでもある。 しかしこの柔らかい描線がそれを緩和している。見事なバランス感覚である。もっと評価されて然るべき漫画家。

 

 

レビュー

ポケットの中の季節
(短編集)小学館
ポケットの中の季節
「見えない秋」
■樹村みのりで個人的に一番好きな短編。
夏休み明けの学校で、同級生が事故死したことを知る主人公の女の子が、「人間が死ぬ」という現実を前に、考え、悩み、想うさまざまなことを、いつもと変わりなくすぎていく毎日の中で丁寧に描いていく。
子供の頃に誰もが大なり小なり経験するこういった漠然とした不安に、突然面と向き合ったその動揺と、そこから抜け出した時の解放感が、静かに伝わってくる感じは、とても素晴らしい。
樹村みのり作品はどんなにテーマが重くとも、どこかが常にきらきらと輝いている。
この「見えない秋」はそれがクライマックスからラストにかけて体験できる。
「死ぬことは死にまかせなさい」と作中ではつぶやかれる。だからとにかく、今を生きることのみが、俺達にはまかされているのだ。(雅)

「病気の日」
■小学生の頃、軽い風邪をひいて学校をお休みすることのドキドキ感、楽しい気持ちを思い出させてくれる。
親が凄く優しくて普段食べれないアイスクリームを食べさせてくれたり、教育テレビを見たり、友達が放課後ノートと給食のプリンを持ってきてくれた事などほんと読んでて胸がトキメキました。
そんな純粋な気持ちだったのにいつから学校を休むという行為がなんでこんな汚れたものになってしまったのだろう…(クロブチ)

「跳べないとび箱」
■「跳べないとび箱」と「新しいお母さん」の2つの軸をもってきて素直になれない自分、言葉にできない悔しさを書き出しています。
他人からみればなんでも無い事を凄く恥ずかしがったり、変なプライドで物事から逃げたり、難しく考え過ぎてどうしてもできなかったりそんな事をストレートにかかずに気付かせるこの作品は傑作です。
特に思春期にある全ての心の悩みを解決させてくれると思います。
おもいっきり踏み切り板に全てを任せてみよう!(クロブチ)

「菜の花畑のこちら側」
■「菜の花」から連なる菜の花畑シリーズの一環。
ほのぼのという形容がこれほど似合う漫画もない。
まあちゃんの家に、寮から飛びだしてきた4人の女学生がやってきたことから始まる楽しい物語。
作品と登場人物を見守る作者の目がとにかく優しい。
この3部作の後描かれる「菜の花畑は満員御礼」(「菜の花畑のむこうとこちら」収録)は、樹村作品特有の重さと開放感を併せ持った名作。
この一種ファンタジーにも近い、理想郷のような空間の描写が鼻につかないところに、樹村みのりという人の力量を感じる。
素直で素朴で暖かいひととき。(雅)

 

 


(短編集)朝日ソノラマ
雨
「まもる君が死んだ」
■「まもる君が死んだ」というニュースをきっかけに、今迄目の前で進行していた事態から、ひたすら目を逸らし続けていた人々の心の動揺を、硬派なタッチで描く。
クライマックス、目を逸らしていたものに直面してしまう少女の心の流れを追うシーンは、圧巻としか言いようがない。
少女誌でこれだけの社会派作品を描ききったというのも凄いが、もっと凄いのは、おそらく子供達に説教臭くなく伝わるであろうところだ。
そして、時代ではなく、人間の内蔵に迫った結果、今なお全く色褪せない普遍性を獲得している。(雅)
 

星に住む人びと
(短編集)秋田書店
星に住む人びと
「早春」
■学校などクラスの友達というのは最初は席の近いから、そしてそのうちなんとなく同じタイプの人達のグループへと変わってゆく、、、
 でも他のグループの人の中に「あの人と仲良くなってみたい」という気持ちは誰もが抱いた事があるだろう。特に女の子の場合、他のグループの人達のうわさ話などが多いからなかなかそれはできる事はなかったりする。
 そんな気持ちを思い出される作品。実際僕もそういう事がよくある。大学に入って得に芸大だったりするので素直にその人の作品を誉めたり色々聞きたいと仲良くなりたいか思ってもなにか変なくだらない気持ちが邪魔をしてうまくいかなかったりするもだ。そういう事をあらためて考えさせられました。(クロブチ)

モドル
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