頭 DAIJIROH MOROBOSHI
諸星大二郎

プロフィール
1949年生まれ。長野県出身。
COMなどを経て数々の雑誌にて短編、長編連載を掲載している。
妖怪からSFまであらゆる不思議な世界を構築する。圧倒的なリアリティを感じさせる才能は国宝級である。

 

 

レビュー

不安の立像
(短編集)集英社
不安の立像
「不安の立像」
日常に非日常的不安を違和感なく滑り込ませた魔術のような傑作。
いつもの風景として異界を描く発想が凄い。
そう、通勤電車から見える線路の脇だけでなく、いつもの風景、朝起きて見上げた天井、昼の人込み、夕闇の町、闇夜の帰り道、そして寝床に、「なにか」は潜んでいるのだ。
結局、そこから目を逸らすことで、主人公はこれまで通りの日常に帰還していく。
文字通り、そこに立っていたのは不安そのものだったのである。(雅)

 

 

夢見る機械
(短編集)集英社
夢見る機械
「地下鉄を降りて」
■普段の通路が、いつのまにかはてしなく続く階段に変わっていくような、めくるめく悪夢。
ありきたりな日常の通路が、非日常の異界となって主人公をからめとっていく描写は凄い。
迷子という状況が生みだす心理的圧迫の強さも、物語内時間軸を追って見事に表現できている。(そういえば諸星作品は普段の道を1歩脇に逸れたような物語りばかりだ)
大袈裟な状況下でなくとも、確実に不安(恐怖)は忍び寄ってくる。それは、あくまでほんの些細な隙間から忍び込んでくるのだ。
やはりこの人のこのような短編のうまさは特筆に値する。(雅)
 

海竜祭の夜
(全1巻)集英社
海竜祭の夜
■「妖怪ハンター」と呼ばれる稗田礼二郎主人公のシリーズ。それぞれが短編になっている。
誰もが小さい頃信じて怖がった近所の噂や伝説なんかが本当にあるという感じで話が進む。
昔話の現代版といってもいいのではないでしょうか。
これは実際にある資料などとうまくからめてやっているのかすらもわからないほど説得力があって読んでいてのめり込んでしまいました(クロブチ)
 

失楽園
(短編集)集英社
失楽園
「失楽園」

■これは未来の話だ。
荒廃と絶望だけが残った世界で人類はどうやって生きていくのかを描いた長編傑作。
この作品を読んで「幸福とはなにか」「どうして生きるのか」とかもうそういう難しい次元まで考えさせられてしまいました。結論はうまく言葉にできません。
知らないほうがいいのか、目的にむかって突き進むのが正しいのか、現状が幸せだと気付き維持していればそれでいいのか。
「幸せ」に関する世間の説教すべてがゆらぐほどメッセージを投げ付けられました。(クロブチ)

 

夢の木の下で
(全1巻)マガジンハウス
夢の木の下で
「遠い国から」(シリーズ)

■僕は恥ずかしながら雑誌にてこの「夢の木の下で」を読むまで全く諸星大二郎の存在をしりませんでした。
全くの覚悟も無く、期待もせずこの作品に出会った時のショックといったら、、、もう2、3日はボーっとしてしまった。
夢でみたような世界を完全に作り上げた作品。主人公が旅行者で読者と視点が重なるのでページをめくるのもドキドキ。
もう普段使っていない脳みそをフルで使わされてしまうほど想像力を刺激されます。これを読んだ後、眠って夢をみてしまうとそこから帰ってこれないのではないかと眠るのが恐くなりました。
とにかく必見の1册です。(クロブチ)

 

モドル
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